「レスポンスに勝るユーザー体験はない」AbemaTV開発本部長・長瀬慶重インタビュー

AbemaTV開発局長・長瀬慶重インタビュー

"普通に使われる”サービスになるために

――中長期的な技術的な目標についても、あらためて聞かせてください。

長瀬:今年度の最初に、開発チームで2020年までのロードマップを擦りあわせました。先ほど申し上げたテレビデバイスへの対応もそのひとつですが、やはり大きいのは「5G」の導入です。通信が5Gになると、インフラや通信環境に、桁違いの大きな変化が生まれます。AbemaTVにとっては、外出先で快適に楽しんでいただく、ということがとても大きなテーマで、「大きな画面でも安定して対応できる映像」と相反する話かもしれませんが、一方で「多くの人が朝の電車などで、モバイルでAbemaTVを楽しんでいる」という状況を実現するのも非常に重要なんです。

 例えば現在においても、地震が起きたり、緊急性の高いニュースがあったりすると、こちらが通知をしなくても、自然とAbemaTVを開いてくれるユーザーが増えています。一度触れていただければ、このように生活に浸透していく。そして、『72時間ホンネテレビ』のようなコンテンツで、特に40~50代の方にもご覧いただけるようになり、ユーザーの裾野が大きく広がっている。それ以上に、これからテレビ局さんもどんどんネットにコンテンツを出していくと思いますし、高齢者の方々も、スマートフォンやパソコンで動画を見る、という時代になっていくでしょう。そういう世の中になったときに、いつも普通に使われているサービスのひとつとしてAbemaTVがあるようにしなければいけない。その意味でも、外出先で視聴することへの障害になることは、今のうちからすべて潰していきたいと考えています。

――コンテンツについて言えば、大画面で楽しむものと、モバイル環境で楽しむものの両方に注力していくことになりそうでしょうか。

長瀬:そうですね。そういう意味で言うと、藤田はAbemaTVの総合プロデューサーとして、番組の“画作り”にものすごくこだわるんです。例えば、ひな壇に10人のタレントさんがいるようなバラエティ番組をスマートフォンでやると、一人一人がすごく小さくなってしまう。また、テロップやワイプもテレビのような感覚で置くと、画面がごちゃごちゃとしてしまいます。藤田はその点で、生放送中に表示する「LIVE」という文字の色や点滅の加減にまで細かくこだわるほど、視聴環境への配慮を徹底しています。

ーー確かに、画面の作り方も含めて、アプリでの視聴が非常に快適になっています。

長瀬:そこは他のサービスと比較しても、自信を持っている部分です。番組のザッピングもなめらかで、次の番組に切り替わるとき、最初に10秒前の画像を写しておいて、そこで動画を読み込んでシームレスにつなげる、というギミックがあったり、手触りには非常にこだわっていて。映像以外の情報は明度を落としたり、必要なものと邪魔になるものを峻別して、常に最適なUIになるよう調整をしています。縦画面、横画面のスムーズな移行も、みなさん驚かれますね。

 ネットの世界で10年ちょっと、当社もさまざまなサービスを作っていますが、どれだけ優れたUIやデザインであっても、レスポンスが遅いとすべて台なしになってしまいます。レスポンスに勝るユーザー体験はない。ですから、やはり映像が途切れないとか、ストレスを感じない、待たされない、ということに注力していて、AbemaTVの放送は、うちがこれまで培ってきた技術の集大成のような気がします。2020年、それ以降に向けて、さらにその部分を深めていきたいですね。

(取材・文=編集部)

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