『GOD OF WAR』“全編ワンカット”の狂気 その恐るべきチャレンジに迫る

 そして最後になったが、どうしても書いておきたいことがある。私は会社員として働いているせいか、どうしてもゲームや映画を見ていると、その仕事の現場に思いを馳せてしまう。最近の映画で言えば、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(18年)だ。「これ俳優たちのスケジュールどうやって調整したんだ?」「これだけの特殊効果系の会社の管理をどうやったんだ?」と驚きつつ、「担当部門は死んでるんじゃないか?」と心配になる。本作も同様だ。基本的にスタッフ全員が大丈夫なのかと不安になるが、とりわけデバッグ(ゲームを実際にプレイして、バグがないか調べる作業)の担当者たちが心配だ。本作は全編ワンカットが全ての面において重要な部分である。「オープニングからエンディングまで、何をやっても本当にワンカットに見えるか?」という部分を重点的にチェックしたはずだ。それには全編を何度も何度もプレイする必要がある。しかも考えるだけでゾッとするような膨大なチェック箇所があったに違いない。デバッグは機械的に出来る部分もあるだろうが、人力でやるしかない場面は多い。担当者の負担はとても大きかったことだろう。しかし彼らはやり遂げた。恐らく狂った量のエナジー・ドリンクを飲みながら、本作がコンセプト通りに遊べる「ゲーム」だと確かめたのだ。

 本作は恐るべきチャレンジをしているゲームだ。私の言葉がカリフォルニアのサンタモニカ・スタジオに届くかはさておき、それでも書いておきたい。前代未聞のゲームを作り上げたチームに、そして常識破りのゲームを「ゲームである」と確かめたデバッグ担当者たちに、最大級の賛辞を贈る。

■加藤よしき
ライター。1986年生まれ。暴力的な映画が主な守備範囲です。
『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』に記事を数本書いています。

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