プレイヤーの深層心理から固有武器を生成ーー『Last Standard』開発者・中道慶謙に聞く、インディーゲームの未来

『Last Standard』中道慶謙インタビュー

ゲームの核となるアイデアを突き詰めること

ーー中道さん自身のキャリアを振り返ると、京都大学に入学、「人道法」の大会に向けて勉強しているときにゲームが簡単に作れるということを知り、そこから独学でゲーム制作をスタートしたということですね。そうして会社を立ち上げ、東京ゲームショウで話題になるまでの過程が、インディーゲームの可能性を体現しているように思います。

中道:そうかもしれません。アイデアさえあれば、誰でもゲームを作れるようになったのは本当に大きくて。逆に言うと、アイデアが同じレベルなら、大きいメーカーには勝てないんです。例えば、極論すればただの丸いオブジェクトが動いているだけでも面白いゲームは作れると思うのですが、そこにキャラクターや音楽など、質の高いあしらいが加わると、楽しさは明らかに増すじゃないですか。予算がどうしても限られるインディーゲームは、そういう部分では勝てない。学生さんがゲーム作るとき、最初から見た目の良さを求める、ということがよくあるのですが、それではダメなんです。ゲームの本当の面白さは最初のアイデア、核の部分にあるので、そこを突き詰めないと。

ーーなるほど。中道さんが出会ったUnityなど、個人でもある程度のゲームがデザインできるようになったからこそ、その“核”の部分さえあれば勝負ができるようにはなっていると。

中道:そうですね。例えば『スプラトゥーン』だって、キャラクター性がもっと薄くても、ゲームシステム自体が非常に面白い。逆に、このゲームシステムを真似して簡素なゲームを作っても、絶対に売れないということです。そこから面白い要素を抽出して新しいゲームを考えるにしても、自分だけの発想をスパイスとして入れなければいけないと思います。

ーー売れているゲームのシステムを真似したところで、これまでになかった楽しさとか、「自分はこういうゲームがやりたいんだ」という強いものがないと、結局埋もれてしまうわけですね。

中道:そこをクリアできるクリエイターが、どんどん表に出ていくと思います。仮に『スプラトゥーン』を主婦の方が閃いて、Unityを2〜3ヶ月勉強してーーもちろん、クオリティは現実にリリースされたタイトルに全く及ばないにしても、新しいゲームとしての面白さが出ていたら、きちんと広がっていくと思うんです。これまであったゲームシステムでも、オリジナリティやその人なりのスパイスが入っていれば爆発する可能性はある。SteamなどのDL販売プラットフォームが一般的になって、世間の人の目は肥えてきているので、むしろアイデアの部分をきちんと見てくれるようになってきていると思います。

ーーなるほど。最後に、「サイコダイブシステム」が確立されれば、いちゲームを超えた広がりが生まれそうですが、この先についてはどう考えていますか?

中道:例えばMMOなどに使えば、自分が意図的に作ったキャラクターではなく、否応なく自分自身が投影されたものがゲーム内に立ち現れるので、より愛着が出ると思います。もう一人の自分が生きる、ゲームの世界空間ができて、そのなかで別の生き方ができるようになると面白いですね。ゲーム内での自分が働いてリアルなお金を得て、現実世界ではまた別の人生を生きるーーそれが進んで、『マトリックス』のような世界が実現すると楽しいなと考えています。

(取材・文=編集部)

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