ライトゲーマーも多数参戦のバトロワゲーム『荒野行動』 大ヒットを記録した3つの要因を考察
『荒野行動』というスマートフォンゲームをご存じだろうか。最大100人まで同時に参加できるバトルロワイヤル形式のアクションゲームで、プレイヤーは広大なフィールドに降り立ち、最後の1人になるまで他のプレイヤーと戦う。簡単に例えるなら、世界的に大ヒットを記録している『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS(PUBG)』のスマホ版だが、これがコアゲーマーのみならず、ライトユーザー層も巻き込んだ人気作になっている。
※トップ画像:荒野行動公式ホームページスクリーンショット
『荒野行動』の提供元は、「NetEase Games」という中国の大手ゲーム企業だ。全世界でのサービス開始日となる2017年11月15日から5か月が経とうとしているが(2018年3月時点)、アプリストアではランキングトップ付近に君臨し続けており、いまだ多くのユーザーに遊ばれている。そして前述のように、ユーザーには、普段バトルロワイヤルゲームを遊ぶことがないようなライトな層も含まれている。ではなぜ、『荒野行動』がそれだけの広がりを持つ人気ゲームアプリとなったのか。本記事では同作がヒットした要因を3つに分けて、解説していく。
ゲーム市場におけるバトロワゲームの需要が高まっていた
昨今のゲーム市場におけるバトルロワイヤルゲームの需要は大きく拡大し続けている。2017年3月24日に早期アクセス版が配信開始されたPUBGを皮切りに、プレイヤーによるオブジェクト建築要素をミックスさせた『Fortnite』、プレイアブルキャラクターの性能が分かりやすく差別化された『Horizon Source』など、根幹は一緒だがアイディアが異なる作品が増えてきた。しかしこれらのバトロワゲームが遊べる主な環境はPCやCS機。特にPCで楽しむなら相応の動作環境が求められるため、どうしても「遊びたいのに遊べない」ユーザー層が出てくる。そんななか、スマートフォンアプリで登場した荒野行動は、バトロワゲームに憧れるユーザーたちの受け皿となった。
「100人の中から生き残る」というゲームのキモはほぼそのまま受け継ぎながら、操作性やUIはマイルドな作りになっており、加えて自分の好きなタイミングで手軽に遊べるアプリの特質も活かされている。結果として、普段は腰を据えてゲームを遊ばないような高校生や大学生をも巻き込み話題を呼んだ。実際にTwitterやLINEなどのSNSでは、「荒野行動女子」と呼ばれる一種のコミュニティが形成され、ユーザー間での積極的な交流が行われている。
動画映えするゲームシステム及びデザイン
次に挙げるヒットの要因は、「ゲームデザインやシステムが動画映えする」ことだ。これはバトロワゲーム全般に言えることだが、リアルタイムで繰り広げられる血の通ったユーザーVSユーザーの戦闘には、多様なランダム性が生じる。ゲーム開始直後にあっさり負けてしまう時もあれば、当事者も驚く劇的な展開で勝利することもある。圧倒的に不利な状況から、スナイパーライフルを駆使して一人ずつヒットマンの如く仕留める。一か八かで爆発物を投擲し、まとめて敵を粉砕するなんてことも可能だ。こうしたダイナミックなプレイは、操作難易度が抑えられた荒野行動では練習すれば多くのユーザーが体験できる。それは言わずもがな、ゲームプレイ動画において非常に映えるのだ。
大手動画サイトに投稿される「ゲーム実況動画」は、公式・非公式に関わらずゲーム内容やセールスポイントをユーザーに認識させる上で多大な影響力を持っている。『荒野行動』を全く知らなくても、ビジュアル面で訴えかけるプレイ動画を見れば「面白そう」「やってみようかな」という気になるのである。
運営陣によるユニークなプロモーション方式
『荒野行動』をヒット作にした要因には、SNSや動画サイトにおける公式運営陣による特徴的なプロモーション方式も含まれるだろう。ゲーム内容のアップデートやバグ修正といった情報を発信するだけなら、極論かもしれないが正確な情報に基づいた無機質なテキストでも事足りる。しかし同作の運営陣がユニークな点は、一般ユーザーの声を直接拾い上げてリアクションを取ることだ。ゲームに興じるユーザー同士が「これは面白い!」と思った投稿をシェアすることは珍しくないが、ゲームの運営側がそういった投稿を常時ピックアップし反応するのは珍しい。
また公式動画番組においても、「女子高生ミスコングランプリ」が開催されたり、元AKBメンバーが出演したり、極めつけは2月のバレンタインデー前に実装された、ゲーム内で恋人関係を築くことができる「恋人機能」や、梅田彩佳や宮澤佐江が生放送でゲームに参加した特別企画「荒野彼女」は、ユーザーに大きなインパクトを与えた。こうしたプロモーションによって、ライト層からの興味を惹きつけることに成功したと言えるだろう。