『豊臣兄弟!』吉岡秀隆が生み出した新たな“千利休像” 柔和な笑顔が醸し出す不思議な魅力

NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』で茶人・千利休(宗易)を演じている吉岡秀隆。利休が初めて登場したのは第33回「北庄城の別れ」で、天下の茶人である利休が「わし、好きやないねん……茶」と、驚きの発言をする場面がある。真面目な秀長(仲野太賀)が大徳寺にこもり、自分には天下一統を目論む兄・秀吉(池松壮亮)を支える覚悟があるのか、真剣に自問自答しているときのこと。秀長は利休とぶつかってしまい、高価な茶器を壊してしまった。利休は秀長を責めるどころか、にこやかに金継ぎをして「前よりずっとええわぁ」と茶器を穏やかな表情で眺めていた。

秀長が茶席を共にすると、利休は苦いから、茶は好きではないと言い出し、お菓子をおいしそうに口に放り込みつつ「この甘い味を引き立たせるために、苦いお茶を飲んでいる。この先も『こんなええもんが待っている』と思えば、割れた茶碗を直すのも、苦い茶をすするのも、楽しいやないか」と秀長に優しく語りかけた。
第41回「家康の野望」でも、利休は秀長と秀吉のために点てたお茶を飲んで思い切り顔をしかめて「……ちと濃くしすぎたなぁ」と呟く。その姿が本当に苦そうで、せっかく飲むならそんな濃くしなくても……と、思わず忠告したくなる場面だった。
このときの秀長と秀吉は家康を上洛させて臣従させるために、母親のなか(坂井真紀)まで人質に差し出すという選択をしたところだった。そんな秀長と秀吉の迷いを吹き飛ばすような苦いお茶の味には、利休の心遣いというスパイスもたっぷり含まれていたのかもしれない。

この先、秀長、秀吉と政治的にも深く繋がり、豊臣兄弟に大きな影響を与えることになる利休。吉岡秀隆演じる茶人の柔らかな表情、軽やかな話し方に思わず秀長は心を掴まれたわけだが、彼が秀吉とはどのように関係を築いていくのかも気になるところではある。
吉岡秀隆といえば、11月3日に公開される『ゴジラ-1.0』の続編、『ゴジラ-0.0』に野田健治役で出演している。仲間からは学者と呼ばれていて、温厚だが冷静に物事を判断するタイプの元技術士官という役どころ。科学の知識を活かしてゴジラの脅威に立ち向かっていく。
ちなみに初代『ゴジラ』は1954年(昭和29年)11月3日に公開された。公開から72年が経っていて半世紀以上の歴史を持つゴジラシリーズは、その時代によって設定や世界観を変えながらも、この新作へと引き継がれている。初代『ゴジラ』は太平洋戦争が終わってから数年後、ビキニ環礁の水爆実験によって目覚めたゴジラが復興し始めた東京を襲うというものだった。
最新作の『ゴジラ-0.0』は「無(ゼロ)」から「負(マイナス)」の状態に叩き落とされた戦後の日本が、復興のさなかに再び絶望的な脅威に直面する姿が描かれる。吉岡秀隆演じる野田健治は初代の天才科学者が苦悩したように、戦争によって兵器開発に関わった過去を背負いながらも希望を捨てず「科学の力でどうゴジラに立ち向かうか」という葛藤を抱える。

『北の国から』シリーズの黒板純役で人気を博し、同時期に『男はつらいよ』シリーズで寅さんの甥・諏訪満男も長く演じてきた吉岡秀隆。その満男のおじいちゃんを演じていたのが名優・志村喬だ。志村喬は、初代『ゴジラ』ではゴジラの生態を調査する古生物学者、山根恭平博士を演じている。吉岡秀隆が演じる野田健治は博士ではないが、仲間たちからは「学者」と呼ばれている。『男はつらいよ』シリーズも『ゴジラ』シリーズも昭和という時代を代表する国民的な映画である。クリエイティブな才能が結集し、特別な力のある作品が世に出るときには不思議な縁や絆のようなものを感じさせるものなのだろうか。
昭和を描く国民的な作品といえば、吉岡は『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズの茶川竜之介役にもまたハマっていた。インテリジェンスを感じさせるが、物腰柔らかで、どこか独特のおかしみも漂う。これは『豊臣兄弟!』で演じている利休が与える印象にも共通して言えること。

利休はこれから天下人として怪物? モンスター? のようになっていく秀吉とどのように対峙するのか、これまで冷静に状況を見極めてきた利休に待ち受けていたものは何だったのか……。吉岡は本作で、大河ドラマ初出演というのが意外なほどに、新しい利休のイメージを作り上げ、豊臣兄弟とも息の合った演技を見せてくれている。この先、利休に訪れる変化を見逃さないよう、しっかりチェックしていくしかない。
■放送情報
大河ドラマ『豊臣兄弟!』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/毎週土曜13:05〜再放送
NHK BSにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送/毎週日曜18:00〜再放送
出演:仲野太賀、池松壮亮、吉岡里帆、浜辺美波、白石聖、坂井真紀、宮澤エマ、倉沢杏菜
大東駿介、松下洸平、中島歩、要潤、山口馬木也、宮﨑あおい、小栗旬ほか
語り:安藤サクラ
脚本:八津弘幸
制作統括:松川博敬、堀内裕介
演出:渡邊良雄、渡辺哲也、田中正
音楽:木村秀彬
時代考証:黒田基樹、柴裕之
プロデューサー:高橋優香子、舟橋哲男、吉岡和彦(展開・プロモーション)、国友茜(広報)
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.web.nhk/tv/pl/series-tep-P52L88MYXY
公式X(旧Twitter):@nhk_toyotomi
公式Instagram:@nhk_toyotomi





















