『映画ちいかわ』リピート鑑賞者のための小ネタ集 うさぎやモモンガの行動、愛知要素など

※本稿は『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』のネタバレを含みます。

 公開から約2カ月が経ったが、先週末の映画動員ランキングでも1位を獲得し、興行収入は146億円超えの メガヒットを記録している『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』。9月19日からは 入場者特典第5弾「ひみつ本」の配布も始まっており、すでに何度もリピート鑑賞した人もいれば、シルバーウィークを期にもう一度楽しもう と思っている人も多いのではないだろうか。

 そこで今回は二度目以降の観賞をもっと楽しむために、同作に隠された“小ネタ”の数々をまとめて紹介していく。作品の核となる部分にも言及しているため、ネタバレにはご容赦いただきたい。

 同作はイラストレーター・ナガノが手掛けるマンガ『ちいかわ』の「セイレーン編」を原作とした劇場アニメ。ちいかわたちが合宿気分でとある島にやってくるのだが、そこで巨大なセイレーンが島民たちを襲っているという話を聞かされた挙句、セイレーンの討伐計画に巻き込まれる……というストーリーとなっている。

 序盤では島民に手厚い歓迎を受け、バカンス気分を楽しむちいかわたちが描かれるのだが、実はこの時点で随所に不穏な要素が仕込まれている。

 たとえば島に上陸した直後、ちいかわ一行は島民たちの歌によって出迎えられる。曲調も歌詞も明るい歌にしか聞こえないが、「たこやき」「すきやき」「ケバブ」「てりてりソースの焼きそば」といった歌詞の頭文字だけを取り出すと「たすけて」というメッセージが浮かび上がるのだった。

 また、ちいかわたちは島に着いた日の夜、偶然見つけた洞窟の奥に入っていく。そこで小舟を漕ぐ際、ちいかわが「オーエスッ! オーエスッ!」という掛け声を発するのだが、連続して発された声は「SOS」と言っているように聞こえてくる。

 さらに伏線的な描写として、船酔いしたちいかわが頭に葉っぱの付いた島民2人に助けてもらうところも見逃せない。このときハチワレはちいかわの気分をさっぱりさせるために、「炭酸とかありませんか」と声をかけるのだが、島民2人は少し不思議な反応を示す。

 その理由は、最後まで本編を観れば明らかだろう。というのもこの2人はセイレーンを激怒させた事件の当事者であり、「単三電池」が事件のキーワードとなっている。つまり2人はハチワレがたまたま発した「炭酸」という言葉を、「単三電池」のことと勘違いしたということだ。その心境は想像するしかないが、「ちいかわのことを自分たちと同じ存在だと思った」という可能性もあるだろう。

 ちいかわとハチワレ以外のキャラクターに関しても、小ネタは色々と挙げられる。島に到着した夜、みんなが御馳走で盛り上がるなか、モモンガは1人砂浜の方までやってきて夢中で屋台の食べ物を頬張る。そこで夜空に流れ星が輝くのだが、モモンガは一切気づかずに、食べ物の生地にチーズが入っていることに反応するのだった。

 ここだけを切り取るとよく意味が分からないシーンだが、おそらくはモモンガと深い関わりのあるでかつよのエピソードとの対比と解釈できる。

 でかつよは元々ちいかわたちと同じ姿をしていたが、モモンガと身体が入れ替わってしまったと見なされているキャラクター。元の身体に戻ることを強く望んでおり、過去の回では涙を流すでかつよが流れ星を見上げ、無言で何かを願った後、「叶うかな…」と呟くところが描かれていた。

 当然でかつよは流れ星に対して、「元の身体に戻りたい」という願いを向けたはず。それに対して、モモンガはかわいい身体を手に入れたことで、すでに願いが叶っているため、流れ星を見ても何も反応しない……という対比になっているのではないだろうか。

 「セイレーン編」の物語自体とはあまり関係がないものの、最近の『ちいかわ』本編ではあらためてモモンガの存在に焦点が当たっているため、ある意味“タイムリー”な描写と言えるかもしれない。

 また劇場版では原作と比べて、うさぎに関する描写が盛られているのだが、そのことによってファンのあいだでは、とある考察が盛り上がっている。それは「人魚事件の真相を知っていたのはちいかわだけではなく、うさぎも犯人に気付いていたのではないか」という説だ。

 セイレーンの襲撃を退けた後、ちいかわたちは島民と一緒になってキャンプファイヤーを行う。そこでちいかわは事件の犯人に近づき、真相を問いただすかどうか逡巡するも、何も言わずに帰ることを決断する。その直後、うさぎがちいかわの頭を撫でることから、「実はすべてを察していた」と推測できる……というわけだ。

 さらにここから「うさぎはどのタイミングで犯人に気付いたのか」をめぐって、さまざまな考察が飛び交っている。気になる人は二度目以降の観賞の際に、うさぎの挙動を注意深く観察してみてはいかがだろうか。

 そのほか「セイレーン編」自体の小ネタとして、“愛知県”との不思議な関わりについて言及しておきたい。同エピソードは人魚の肉を食べた者は不老不死になるという「八百比丘尼伝説」が設定の元ネタになっているのだが、愛知県春日井市には八百比丘尼の生誕地とされる寺院がある。

 また、作中には唐突に「しるこサンド」が登場する場面があるが、このお菓子を製造・販売しているのは愛知県小牧市に本社がある松永製菓株式会社だ。さらにセイレーンは攫ってきた島民を「味噌漬け」にして食べようとするが、これも愛知の食文化を彷彿とさせるところがある。リピート鑑賞の際には、そのほかの“愛知ネタ”を探してみるのもいいかもしれない。

 このように『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』には、色々な小ネタが隠されている。ストーリー的にも深みがある上、考察要素もあるため、何度鑑賞しても楽しめるはずだ。ちなみに同作の公式サイトでは、声優陣や原作者・ナガノのインタビューが公開されているので、そちらも合わせて読んでみてほしい。

■公開情報
『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』
全国公開中
キャスト:青木遥(ちいかわ)、田中誠人(ハチワレ)、小澤亜李(うさぎ)、井口裕香(モモンガ)、内田雄馬(ラッコ)、淺井孝行(くりまんじゅう)、島袋美由利(シーサー)、春海百乃(古本屋)、最上嗣生(島二郎)、鈴木みのり(セイレーン)
原作・脚本:ナガノ
監督:及川啓
キャラクターデザイン:辻智子
コンセプトアート:橋本真樹
プロップデザイン:高妻匠
色彩設計:長井彩香
美術監督:眞﨑萌
CG監督:中野祥典
撮影監督:岡﨑正春
編集:高橋歩
音響監督:土屋雅紀 
音響効果:倉橋裕宗(オトナリウム)
音楽:トクマルシューゴ/上水樽力
アニメーションプロデューサー:溝口侃
アニメーション制作:サイピク
製作:川上洋一、古澤佳寛
エグゼグティブプロデューサー:松崎容子
プロデュース:今福太郎
プロデューサー:小峯雅隆、障子直登
宣伝プロデューサー:林原祥一、斎藤愛子、狩野裕明
製作幹事:QTORY inc.
配給:東宝
©ナガノ / 2026「映画ちいかわ」製作委員会
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