『風、薫る』“直美”上坂樹里ד吾郎”甲斐翔真のこれまでの歩み 幸せな家庭に差す戦争の影

『風、薫る』直美×吾郎のこれまでの歩み

 NHK連続テレビ小説『風、薫る』第22週「明るい未来」では、家族のカタチを変えたりん(見上愛)と直美(上坂樹里)に戦争の足音が近づいていた。

 多江(生田絵梨花)は広島の陸軍病院へと赴き、虎太郎(小林虎之介)は志願して朝鮮の戦地へと向かう。軍人である小川(甲斐翔真)も妊娠した直美を残して、出征することが決まった。

 第20週「家族のカタチ」で晴れて夫婦となった直美と小川。2人が同じ家で生活する様子は和やかで、料理が得意な小川と作るのが苦手な直美が台所で言葉を交わすシーンはほっこりする。だからこそ、幸せな日常に差し込んだ小川の出征には、一抹の不安が残る。

 直美の恋愛模様に関しては、鹿鳴館で給仕として働いていたときに身分を偽っていた寛太(藤原季節)に騙されて以降、あまり描かれることはなかった。医師の藤田(坂口涼太郎)は直美に好意を寄せていたものの、恋仲に発展する気配は皆無。ただ、そんな直美が徐々に心を開いていく様子がていねいに描かれていた相手が小川だった。

 帝都医大病院に友人を訪ねてやってきた小川は、牡丹餅をお見舞いの品として持参していた。しかし、直美は看護婦取締として、入院患者の食事制限を行う義務がある。良かれと思って持ってきた品を隠された小川は直美に食い下がるものの、彼女もその言葉で引くような性格ではない。意見をぶつけ合わせると、小川は「がっぱ偉そうな尼さんばい」と友人にこぼし、直美も「何なのあの芋男は」と呟く。

 ただ、もともと小川は素直な性格なのか、再び病院へとお見舞いにやってきた際には、直美に先日の無礼を詫びる。さらに、きびきびと身分を名乗ったかと思えば、「新兵だった頃に毎日、上官から厳しく叱られて、あなたのように恐ろしい上官で。それはすべて兵の命を考えてのこと。ですから、優しい上官だと思い込むようにしたんです。つまり看護婦さんも優しい方だと」と付け加える。あまりの正直さに思わず吹き出してしまう直美。寛太との一件があり、軍人に対してあまりいい印象がなかった直美だが、小川の素直な一面は新鮮に映ったのかもしれない。

 2人で団子を食べているとき、自然な流れで直美が孤児であることを明かしたのは、小川なら偏見を持つことなく耳を傾けてくれると思ったのではないか。小川も「なら、なおさらすごい。孤児で看護婦でピリッとさせて。只者じゃない」と応える。相手の性別や境遇にかかわらず、対等に尊敬を言葉にして伝える小川のような軍人は珍しい。

 その後も2人は会うたびに距離を縮めていたが、直美が環(英茉)の2人目のお母さんとして一ノ瀬家を支えている話を聞いて、小川自身も思うところがあったようだ。物心ついたときから天涯孤独に生きてきた直美にとって、結婚も家族も縁のない話。それでも、思い悩んでいると目の前に現れて、いつもと変わらない自然体で接してくれる小川の存在は、直美にとって日に日に大きくなっていく。

 直美の「小川さんと話していると、なんだか肩の力が抜けます」という言葉こそ、2人の居心地のいい関係性を表している。常に凛とした表情で、人に頼らず自分の力で生きてきた。未知なる看護婦という仕事に就き、常に前へ前へと歩いてきた直美にとって、肩の力がふっと抜ける場所は今まであまりなかったように思う。小川の前で見せる柔和な表情は、一ノ瀬家の人々以外には見せることのなかったありのままの姿だった。

 直美がマッチに関する会話の流れで「小川さんは好きなもの見つけるのが上手ですね」と声をかけると、小川は「はい。好きです。直美さんのことが好きです」と即答する。そのまま結婚を申し込む小川の真剣な表情を見て、直美も心が揺れていたのが伝わってきた。嫌な思い出があるマッチでさえも、不意に笑みが溢れる記憶へと塗り替えてしまう。小川が発する言葉のひとつひとつから伝わってくる温もりに、直美は惹かれたのかもしれない。

 一ノ瀬家での満たされた生活を思い、結婚に対して一歩を踏み出せなかった直美だったが、りんの後押しもあって小川の求婚を受け入れる。晴れて家族となった2人の夫婦生活は平和そのものだ。

 しかし、否が応でも戦争の足音は近づいてくる。出征することになった小川と、子どもを出産した直美。果たして2人にはどんな運命が待ち受けているのだろうか。

■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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