『風、薫る』はなぜ恋愛ドラマの王道を突き進む? りんと直美が選んだそれぞれの“幸せ”

 NHK連続テレビ小説『風、薫る』は日本ではじめてトレインドナースとなったふたりの物語。主に看護とは何かを問う物語という触れ込みだが、それと同時に、主人公のりん(見上愛)と直美(上坂樹里)のプライベートの幸福も追求されている。

 第20週「家族のかたち」(演出:松本仁志、平竣輔)は仕事に邁進してきたふたりが、さんざん迷ったすえ、パートナーを選択する。りんは作家志望のシマケン(佐野晶哉)が大成するのを「待ちます」と宣言し、直美は軍人の小川(甲斐翔真)と結婚した。

 主人公がふたりなので、バランスをとるためなのか、同じ時期に恋が成就するような構成には若干、慌ただしさや、投げっぱなしなところがあるような印象も受ける。だがハッピーな展開なのでここは野暮は言うまい。

 さんざん迷ったすえ、と書いたのは、りんと直美の前にこれまで様々な男性が現れているからだ。ただ、決して恋多きというふうには描かれてはいない。誰と結ばれるのだろう? とほのかに気になるように描かれてきた。この件については後述する。まずは、りんと直美が誰を選んだか振り返ろう。

 りんはシングルマザーだ。一度、結婚に失敗している。それもあって長らく恋は棚上げしていた。シマケンとは気が合うもののあくまで友情にとどめていた。それが新潟で積極的に求婚してくる新聞記者・横沢(井上祐貴)が現れて、にわかに状況が変わってくる。作劇的にいえば、横沢は当て馬的な役割だ。彼が頑張れば頑張るほど、りんとシマケンはお互いの気持ちを実感していく。

 横沢の強引なアプローチにシマケンが奮起して、りんもシマケンへの思いを確信した第99回。視聴者は一斉に大祝福かと思いきや、SNSでは「幼馴染の虎太郎(小林虎之介)はどうした?」という声が出ていた。

 栃木で共に育ったりんと虎太郎は互いにほのかな初恋のような感情をもっていた。だがりんは家のために結婚し、そして東京へ。その都度彼女を助けてきた虎太郎は、諦めきれず東京に出てくる。製薬会社の社員となり、ここでもりんの役に立つ。にもかかわらず、虎太郎の気持ちは報われないし、出番も少ない。シマケンとの恋の対決はあとから出てきた横沢の役割になるのだ。虎太郎の使い方があまりうまくいってない気がしないではない。

 ついでにいえば、ドラマにおける「たまり場」になっている甘味処(蒸麺包屋?)を経営するチュウ(若林時英)も最初はりんが好きだったが、早々に振られている。主人公が複数の男性に支えられながら、自分の道を邁進していく。これはドラマの黄金パターンのひとつだ。代表的なものに人気漫画を原作にしたドラマ『花より男子』(TBS系)がある。ヒロイン:牧野つくし(井上真央)が、本命・道明寺司(松本潤)、当て馬:花沢類(小栗旬)の間で揺れながら、劇場版で最高の幸せ(結婚)にたどり着く。

 朝ドラにもこのパターンはある。『あさが来た』だ。ヒロイン:あさ(波瑠)が、本命(夫):新次郎(玉木宏)、当て馬(仕事のパートナー):五代友厚(ディーン・フジオカ)に支えられ、女性実業家として奮闘した。私生活において夫は最高にすてきな人物で、ビジネスにおいては五代が最高に尊敬できる相手であるという、これ以上の理想はない夢物語に仕立て上げられ、人気を博した成功例となっている。

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