『風、薫る』記念すべき第100話で結ばれた直美×小川 一方で戦争の足音が近づく展開へ
NHK連続テレビ小説『風、薫る』記念すべき第100話は、直美(上坂樹里)が小川(甲斐翔真)と結ばれ、看護婦養成所時代の同窓生や吉江(原田泰造)も駆けつける、結婚式に似たお披露目会が開かれる。その一方で、戦争の足音がすぐそこまで迫っていた。
第20週「家族のかたち」ではりん(見上愛)と島田(佐野晶哉)、直美と小川の恋模様が対照的に描かれている。不器用でじれったくも、その分ゆっくりと大切に紡がれているりんと島田の恋愛。対して、直美と小川は初々しくも真っ直ぐに思いを伝えている。
約束の土曜日。日が暮れかけた「田之上屋」で待つ直美のもとに、小川は松葉杖をつき現れた。営内作業中に骨折してしまったという。ここで直美が言った第一声は“遅い”ということではなく、小川の身体を気遣った言葉。看護婦としてはもちろんだが、小川を大事に思っている直美の心情が伝わってくる。そして、「胸が……喉がキュッてして」「だって好きなんです!」という純真な告白から、「ずっと一緒に……私と家族になってくれますか?」と思いを伝えた。
後のお披露目会で喜代(菊池亜希子)や忠蔵(若林時英)、吉江までもが揃って口にしているように、捻くれていて、素直に感謝も伝えられなかった“あの直美”が、これほどまでにピュアな愛の言葉を言うようになるとは誰が予想できただろうか。それはりんをはじめ、恩師のバーンズ(エマ・ハワード)、実の母・文(内田慈)、小川との出会いの中で、様々な感情を抱き、直美も少しずつ変わってきた。筆者が印象深いのは、直美が文への看護に思い悩む第17週「脈動」で、蒸麺包を口いっぱいに頬張る小川を見て、ただ一言「ありがとうございます」と告げるシーン。言葉はなくとも、一緒にいるだけで気持ちが明るく、楽になれる存在。直美にとってそれが小川なのだろう。
ただ、りんと直美で共通しているのは“怖い”という思い。島田が横沢(井上祐貴)へと主張した娘・環(英茉)を東京に残し、単身で新潟に行く怖さ。直美もまた一ノ瀬家というずっと欲しかった家族と離れることへの怖さから、小川への思いに素直になれずにいた。そこから一歩踏み出す勇気。道を外れても、正しいと、幸せだと思える――その相手が直美にとっての小川だった。吉江が直美に投げかけた「Is this your life?」は、第17回にて結婚に急ぐ直美に吉江が問うたセリフ。今度こそ、本当の幸せだと胸を張って言える。「Yes!」と返す直美の笑顔が眩しい。
瑞穂屋では、身体に無理がきかなくなってきた美津(水野美紀)が退職をすることになった。店の奥には勝海舟(片岡鶴太郎)の姿。「最近、どうも煙ったくてしかたねえやな」と嘆く勝に、卯三郎(坂東彌十郎)は「まだ生まれたてだったこの国に世界中から面白そうなものをあれやこれや引っ張ってきたんですけどねえ」と続けた。それが正しかったのか。「存外、荒れた道を作ってしまったのかもしれません」と卯三郎は自問自答した。瑞穂屋にこだまする振り子時計の音が、不穏な展開を予感させているが、『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 風、薫る Part2』(NHK出版)のインタビューで坂東彌十郎は、「日清戦争の勃発で近代戦争の時代に入り、社会を前に進めるためにやってきたことがよかったのかと自問する卯三郎も描かれます。その葛藤は現代にも通じることで、先駆者たちが最終的にぶつかるテーマなのかもしれません」と答えている。
第21週「定めと選択」の予告には、「広島の陸軍の病院に」という多江(生田絵梨花)のセリフや虎太郎(小林虎之介)の「志願」という言葉も確認できる。『風、薫る』も残り30話。ここからりんと直美は、新たな道を歩み出すことになりそうだ。
■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK