『豊臣兄弟!』乃木坂46 井上和はなぜ“茶々”に選ばれたのか 大きな瞳に宿る強さと危うさ
乃木坂46の井上和が、NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』で茶々役を演じる。第29回の放送後に流れた第30回「清須会議」の予告では、成長した茶々としてすでに姿を見せ、「お前は母上を何だと思っておるのだ!」と鋭い口調で言い放った。登場はわずか数秒だったが、相手をまっすぐに見据える大きな瞳と、怒りの中にも気品を失わない佇まいに心を掴まれたのは筆者だけではないだろう。
井上は、乃木坂46の5期生として2022年に加入。「おひとりさま天国」「チートデイ」などでセンターを務め、現在はグループの中心メンバーとして活躍している。その一方で、近年は役者としても目覚ましい躍進を続けてきた。2024年には乃木坂46“5期生”版 ミュージカル『美少女戦士セーラームーン』2024でセーラームーン/月野うさぎ役を担当。2025年には『スプリング!』(テレビ朝日系)で地上波ドラマ初出演にして初主演を果たし、2026年には映画『トイ・ストーリー5』で新キャラクター・スナッピーの日本版声優に抜擢された。
『スプリング!』で演じた逢坂碧は、成績優秀でありながら志望大学の前期試験に落ち、周囲に対して素直になれない高校生。井上は、相手の言葉にすぐ反応するのではなく、一度自分の中に落とし込んでから返すような間を作り、碧の不器用さを表現していた。『スプリング!』で感じたのが、井上の大きな瞳が、役者としても大きな武器になっているということだ。感情を強く表へ出さなくても、視線がわずかに動くだけで、人物の心が揺れたことを感じさせることができる。『豊臣兄弟!』の予告でも、声を荒らげながら姿勢は崩さず、顔を大きく動かすこともない。感情に任せて怒鳴るのではなく、母・市を守ろうとする思いと、浅井家の長女としての誇りを、まっすぐな眼差しに込めていた。
一方、『美少女戦士セーラームーン』では、月野うさぎの明るさやお茶目さを、弾むような声や大きな身ぶりで表現した。普段の落ち着いた印象とは異なり、泣いたり笑ったりしながら舞台を駆け回る姿からは、役に合わせて自分の見え方を変えられる柔軟さが伝わってきた。映像では小さな表情の変化を生かし、舞台では全身を使って感情を届ける。経験はまだ多くないものの、作品ごとに求められる表現を吸収している。
乃木坂46 井上和、『トイ・ストーリー5』で好演! アニメ愛が結実したスナッピー役
『トイ・ストーリー5』でスナッピーを演じた井上和。“受け”の芝居やアニメへの憧れ、俳優・声優として積み重ねた経験が結実した魅力を…その幅をさらに広げたのが、『トイ・ストーリー5』のスナッピー役だ。スナッピーは、興奮すると早口になるほど明るく、好奇心にあふれたキャラクター。井上は普段の本人とは異なる高いテンションのスイッチを入れ、言葉を勢いよく重ねながら、その純粋さとコミカルな魅力を声だけで表現した。
アフレコを振り返ったインタビューでは、「声というひとつの武器を最大限に研ぎ澄まさないと感情が伝わらない」と、声だけで芝居をする難しさを語っている(※1)。オリジナル版の声やキャラクター性を大切にしながら、日本語吹替版ならではの表現を探り、自分なりのスナッピーを作り上げていった。