『ラブ≠コメディ』はただの“王道アイドル映画”ではない! 仕事に悩む人へ贈る一作に

『ラブ≠コメディ』は王道ラブコメではない

 自分の「見せ方」に囚われがちな神崎に対し、南風はスタッフ全員の名前を覚え、彼が断った番宣もひたむきに引き受けていく。その真摯な姿勢に触れるうちに、神崎の心には少しずつ変化が芽生え始める。中島は、南風に心を開いていく過程を、ふと大きく見開く潤んだ瞳や、はっとした表情の揺らぎで丁寧に体現していた。南風を演じる長濱ねるもまた、神崎とのやり取りを重ねる中で、ゆっくりと心を寄せていく様子を自然体で表現している。二人の感情が少しずつ重なり合っていく過程が繊細に描かれていたからこそ、気づけばスクリーンの前で、彼らの恋と仕事のゆくえをそっと応援している自分がいた。

 『ラブ≠コメディ』は、ラブコメを期待して観ると、いい意味で裏切られる。恋愛要素以上に、仕事に向き合う人間の葛藤と成熟が丁寧にすくい上げられているため、いわば「一粒で二度おいしい」深みのある作品に仕上がっていると感じた。

 ネタバレを避けるため詳細は控えるが、終盤のあるシーンで、神崎を含めた「現場の裏方たちの声」が物語を大きく動かしていく。そこで見せる神崎の訴えかけるような眼差しには、憂いと優しさが同居していた。共演者を思う気持ち、作品を良くしたいという熱意、そしてスタッフの奮闘をひとつ残らず大切にしたいという願い。そのすべてが、中島健人が本来持つ誠実さや、ファンとスタッフを何より大切にしてきたこれまでの歩みと完璧にシンクロしていく。

 仕事のやりがいとは、案外「自分だけの視点」では見えてこない。周囲とのコミュニケーションの中で、初めて自分が多くの手に支えられていること、そして自分にその役割が巡ってきた意味に気づかされる。

 作中、神崎が何か大きな賞を獲るわけでも、一夜にして大成功を収めるわけでもない。しかし、人との出会いによって心のフェーズが変わり、その瞳は柔らかく、生き生きとしたものへと変貌を遂げていく。ラストにかけて、まるで水を得た魚のように表情を輝かせていく彼を見て、改めて中島健人という役者の凄みを感じずにはいられなかった。

 仕事への向き合い方、心の持ち方ひとつで、世界の景色はガラリと変わる。今のキャリアにどこか満たされないものを感じている人、あるいは岐路に立って足を止めている人にこそ、本作をぜひ観てほしい。エンドロールを迎える頃には、きっと自分の足元をもう一度愛おしく見つめ直し、「明日もまた、私の仕事を頑張ろう」と思えるはずだから。

■公開情報
『ラブ≠コメディ』
全国公開中
出演:中島健人、長濱ねる、板谷由夏、塩野瑛久、本多力、前野朋哉、今野浩喜、野村麻純、宮崎吐夢、磯山さやか、岩井拳士朗、信川清順、今野大輝(B&ZAI)、菊田竜大(ハナコ)、三石琴乃、光石研、財前直見
監督:紙谷楓
脚本:大北はるか
主題歌:中島健人「Fiction Love」(Sony Music Labels Inc.)
制作プロダクション:共同テレビ
製作:ストームレーベルズ
配給:ストームレーベルズ、ライブ・ビューイング・ジャパン
©Storm Labels Inc. All Rights Reserved.
公式サイト:https://movie.storm-labels.co.jp/lovenotcomedy/
公式X(旧Twitter):https://x.com/lovenotcomedy
公式Instagram:https://www.instagram.com/lovenotcomedy/

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