『トイ・ストーリー5』は大人にも子どもにも響く ピクサーだからこそ描けた“踏み出す勇気”

『トイ・ストーリー5』は大人も子どもも必見

「自己受容」と「踏み出す勇気」という変わらないメッセージ

『トイ・ストーリー5』©2026 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

 深くて切ない、時には観ていて泣きそうになるテーマを扱いながらも、本作が決して湿っぽすぎるトーンに陥らないのは、随所で差し込まれるコメディの存在もあるが、それ以上にキャラクターたちの感情の機微と自己決定を通して、「踏み出す勇気」というポジティブなメッセージを描くからだ。

 中でも心を掴むのは、ジェシーの物語。彼女はずっと、かつての持ち主・エミリーに捨てられたという過去のトラウマを心の奥底に抱えていた。しかし本作を通して、ジェシーはそのトラウマと正面から向き合い、ついに克服する。「誰かに選ばれるから価値があるのではなく、私には私自身の価値がある」と自己を肯定できるようになる彼女の姿は、なんとも美しい。

 そして特筆すべきは、そうして自らの価値を見出した上で、ジェシーやバズが導き出した答えが「それでもおもちゃは子どもを幸せにするためにいる」という信念であったこと。ただ所有される存在として依存するのではなく、自らの意志で「子どものそばにいること」を選び取るのだ。

『トイ・ストーリー5』©2026 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

 これは前作『トイ・ストーリー4』でウッディが見出した「子供の部屋の外で生きる」という自己受容や自由意志の形とは異なる。しかし、ウッディのような道を選ぶおもちゃがいてもいいし、バズやジェシーたちのように子どものそばを選ぶおもちゃがいてもいいのだ。それぞれが違っていてよく、その存在を互いに肯定し合っている。

 こうした「他者との違いを否定せず、受け入れた上で、自分は何を求めるのか」というアイデンティティ獲得の物語は、現実世界におけるボニーの歩みによっても見事になぞられている。ボニーは、タブレットばかりで遊ぶ子どもたちと無理に友達になりたいわけではないという自分の本心に気づく。そして、自分と同じような遊び方をするブレイズに出会うことで、自分自身の居場所と自己を確立していくのだ。傷ついていたボニーが、おもちゃたちの見えないサポートを通して、現実世界で「本当の友達を作るために一歩を踏み出す勇気」を取り戻していく。画面の中ではなく、目の前にいる人に手を伸ばすことの尊さを、彼女の成長を通して描くところに感動するのだ。

『トイ・ストーリー5』©2026 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

 劇中、幾度となくこみ上げるものがあり、実際に涙をこぼしてしまう場面もあったが、決してしんみりしすぎることなく、随所に笑わせてくれる場面がちりばめられているバランス感覚は、さすがの一言に尽きる。

 テクノロジーが加速度的に進化するこの時代に、本作を観た子どもたちは何を思うのか。そして、デジタル社会に生きる大人たちは何を思うのか。『トイ・ストーリー5』は、そんな今とこれからについて、ピクサーだからこそ提示できた物語だと感じる。

■公開情報
『トイ・ストーリー5』
全国公開中
監督:アンドリュー・スタントン
共同監督:ケナ・ハリス
製作:リンジー・コリンズ
声の出演:唐沢寿明(ウッディ役)、所ジョージ(バズ役)、日下由美(ジェシー役)、広瀬アリス(リリーパッド役)、佐野勇斗(スマーティー・パンツ役)、井上和/乃木坂46(スナッピー役)、松井ケムリ/令和ロマン(アトラス役)、竜星涼(フォーキー役)ほか
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
全米公開日:2026年6月19日/原題:Toy Story 5
©2026 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる