『最後列からの声』チェ・ヒョヌクの才能に惚れ込む チェ・ミンシクと渡り合う実力
チェ・ヒョヌクといえば、知名度を一気に押し上げた『二十五、二十一』をはじめ、『あいつは黒炎竜』といったラブコメディへの出演でも知られている一方、腕っ節が強くカラッとした性格の不良スホを演じた『弱いヒーロー Class 1』、外部から隔絶された前線部隊で起きた事件のキーマンに扮した『D.P. -脱走兵追跡官-』シーズン2など、物語の核となるキャラクターを担う俳優としても評価されている。チェ・ヒョヌクの眼には、はっきりと“予兆”が見え隠れしている。つまり何かを企んでいることは分かるのだが、その動機がつかめない。イ・ガンは首が前のめりに出たいわゆる“スマホ首”で、よく爪を噛み、時折貧乏揺すりをする。これらはすべて演技だったそうだ。チェ・ヒョヌクはイ・ガンを「どれほど頭脳の回転が速くてもいずれにせよ20代の大学生であり、人間であれば緊張感と震えがあるだろうと考えた」(※2)と解釈し演じたそうだが、こうして賢さと未熟さの間を往来することで、虚構を事実だと思わせて真実を撹乱させ、ドラマの出来映えに大きく貢献したのだ。
たしかに『最後列からの声』のストーリーにおける評価として、「序盤で先が見えてしまった」という声もSNSでは少なくなく、どんでん返しや展開の予測不可能さを期待するとやや物足りなさがあることも否めない。ただ、全6話というコンパクトなシリーズ設計と、視聴者の関心を徐々に引き出していくスタイルとは異なる一挙配信であったことを考慮すると、サスペンスというジャンルの強度はさほど狙いではないようにも思う。むしろ「ガンの物語の真偽」という結末よりも「ガンはなぜ小説を書いているのか?」というプロセスの動機があきらかになり、最も描写を割いたムノの陰湿な情熱がイ・ガンの姿に重なる瞬間にこそ、この物語の醍醐味がある。
SNSで虚実皮膜が入り乱れる現代社会を例に取るまでもなく、文学者や小説家に限らずとも、人々は常に物語を求めていて、物を語ることに欲望をおぼえる。三大欲求が人間以外にも当てはまるものだとすれば、おそらくこの欲望こそが人間を人間たらしめる業なのではないだろうか。
参照
※1. https://m.entertain.naver.com/home/article/109/0005564385
※2. https://m.entertain.naver.com/home/article/112/0003800289
■配信情報
Netflix『最後列からの声』
Netflixにて独占配信中
制作: キム・ギュテ、チャン・ミョンウ
出演: チェ・ミンシク、チェ・ヒョンウク、ホ・ジュノ、キム・ユンジン、チン・ギョン、チョ・ハンチョル、ペク・ジュヒ、ハン・ジウン、チョン・イソ、イム・ジェヒョク、イ・ジヌ