『サバ缶、宇宙へ行く』4期生たちの卒業と継承の物語 “瑠夏”伊東蒼の誰かを鼓舞する力

『サバ缶、宇宙へ行く』卒業と継承の物語

 瑠夏(伊東蒼)たち4期生が粘度という壁を乗り越えた先に待ち受けていたのは、保存検査のために少なくとも1年半を要するという時間の壁だった。そこから月日が流れ、なんとか瑠夏たちの在学中に保存検査が終わるとの知らせが。ところが保存検査と、その後の微生物検査を無事にクリアした“宇宙サバ缶”に対し、木島(神木隆之介)は官能検査で認証の見送りを決断する。それは2期生の宮井(早瀬憩)が言っていた「まずいものは食べたくない」、そして瑠夏自身が言っていた「味が落ちたものを宇宙へ飛ばしたくありません」という熱意を尊重しての判断に他ならない。

 6月8日に放送された『サバ缶、宇宙へ行く』(フジテレビ系)第9話では、自分たちの代で今度こそ宇宙にサバ缶を飛ばすのだと夢見ていた4期生たちの“卒業”と、次の代へバトンをつなぐ、継承の物語が描かれた。これまでのどの代も、当然のように卒業――すなわち、時間という壁に直面して夢を完遂できなかった悔しさが伴う瞬間――を迎えてきたわけだが、ドラマとしてはどれも流れるように描かれてきた印象だ。しかし今回の4期生の卒業に関しては、探究学習発表会という場を通して、ある種のクライマックスのような、いかにも“卒業”らしい一幕が展開することに。

 宇宙サバ缶を飛ばすことができなかった悔しさをはっきりと言葉にして後輩たちにぶつけながら、「あなたたちの手で鯖街道を宇宙までつないでください」と先輩たちから受け継いだ夢を次の代へと渡す瑠夏たち。よくよく考えてみれば、1期生から2期生、2期生から3期生、そして4期生へと、直接的なかたちで宇宙サバ缶のバトンがつなげられていったことは一度もなかった。しかし今回、瑠夏たちの想いが、瑠夏たちの言葉で次の代――藤倉(池端杏慈)たちに届けられる。やはり瑠夏は、朝野(北村匠海)のように誰かを鼓舞する力を持ち得る存在というわけだ。

 いずれにせよ今回のエピソードで際立っていたのは、“夢”という言葉がいちだんと強調されていた点である。そもそも大きな夢に向かっていく高校生たちを中心にしたドラマであるがゆえ、劇中には“夢”が当然のものとしてあり続けてきた。それでも今回、登場人物たちがあえて何度も言葉にすることで、よりその輪郭がはっきりと見える。ケガによって陸上競技への夢をあきらめるようにして海洋科学科へやってきた藤倉。「夢なんて簡単に裏切る」と言い放つ彼女に、かつての自分の姿を重ね、「夢は裏切らん」と言い切る菅原(出口夏希)。

 裏切らず、消えず、自分を変えてくれる“夢”の重みをここであらためて説くあたり、いよいよこのドラマも終盤に差し掛かっていることが予感できる。もしかすると、瑠夏の兄である寺尾(黒崎煌代)が第1話で何気なく呟いた「うちのサバ缶も宇宙へ飛ばせるんちゃう?」という言葉から始まり、12年かけて培われてきた試行錯誤と失敗と挫折と、わずかな希望を信じながら突き進んでいく、劇中の言葉を借りれば“執念”にも似た挑戦のドラマは、今回でひとつの終わりを迎えたといえるかもしれない。次なる5期生は、あと一歩のところまできた“夢”をしっかりとゴールまで送り届ける、アンカーとしての役割を担うのだろう。

■放送情報
『サバ缶、宇宙へ行く』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:北村匠海、出口夏希、黒崎煌代、八嶋智人、三宅弘城、村川絵梨、佐戸井けん太、熊切あさ美、吉本実由、ソニン、迫田孝也、鈴木浩介、荒川良々、神木隆之介、井上芳雄(語り)ほか
原案:『さばの缶づめ、宇宙へいく』(小坂康之、林公代/イースト・プレス)
脚本:徳永友一
音楽:眞鍋昭大
主題歌:Vaundy「イデアが溢れて眠れない」(SDR/Sony Music Entertainment)
演出:鈴木雅之、西岡和宏、髙橋洋人
プロデュース:石井浩二
プロデューサー:野田悠介、中沢晋
制作協力:オフィスクレッシェンド
制作著作:フジテレビジョン
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/sabauchu
公式X(旧Twitter):https://x.com/sabauchu_fujitv
公式Instagram:https://www.instagram.com/sabauchu_fujitv/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@sabauchu_fujitv

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「リキャップ」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる