ダ・ヴィンチ・恐山も唸る『ミステリー・アリーナ』の魔力 「今の邦画にこれがなかった」

「『面白』に寄せすぎているところに私は興奮してしまう」

――映画オリジナルの要素といえば、芦田愛菜さん演じる一子と三浦透子さん演じるサンゴもそうですね。
恐山:芦田さんが演じるキャラクターは、「原作にあったっけ?」と思ってしまうほど原作の世界観に自然にマッチしていましたね。無茶苦茶やっているようで、実は細かいところですごく巧みなんです。荒唐無稽な設定なのに嘘はついていない。ミステリーにおけるフェアネスを大事にしていて、どんなバカバカしいことでも矛盾だけはしない。ちゃんと理詰めで考え抜かれているんです。そのマインドには、すごく敬意を持ちました。

――恐山さんはそういう作品に惹かれるんですね。
恐山:かなり惹かれますね。そういう目の前のお客さんを楽しませることしか考えていないようなエンタメ精神にすごく惹かれてしまうので。でも、邦画でこういう方向性の作品はあまり目にしない気がします。トリックを重視したミステリーの映画化も少ない中で、ついに実写化されたのが『ミステリー・アリーナ』だったわけです。たぶん、この映画って、シネフィル的な人の受けはすごく悪いと思います(笑)。でも、私はそういう作品が大好きなんですよね。
――『ミステリー・アリーナ』は、どんな作品がお好きな人に向いていると思いますか?
恐山:もちろんミステリー小説が好きな人に向いていると思います。最近、Huluで映像化された綾辻行人さんの『時計館の殺人』(講談社文庫)も同じ「館ものミステリー」ですし、米澤穂信さんの『インシテミル』(文春文庫)も方向性は近い部分はあると思います。コロコロと真相が変わっていく面白さがありますし、最後でドン! とひっくり返されて真相が空中に浮いてしまうという面白さもあります。「壁本」という「読み終わった後に壁に投げつけたくなる本」という蔑称というかジャンルというか……があるのですが(笑)。清涼院流水さんなどの作品が出てきたときの「ミステリーの定石を無視してナメてるのか?」という雰囲気の先に、この『ミステリー・アリーナ』もあると思います。最近の小説では、青崎優吾さんの『地雷グリコ』(角川文庫)もゲーム的な側面は似ていると思います。直木賞の候補にもなりましたが、「面白」に寄せすぎているところに私は興奮してしまうんです。『ミステリー・アリーナ』は極端にもその路線ですね。
『トリック』に通じる堤幸彦流の悪ふざけ

――『ミステリー・アリーナ』はクイズ番組の形式が採られていますが、今はクイズや謎解きも流行っていますよね。
恐山:今はクイズがブームですし、私も好きです。体験型の謎解きゲームも多くの人が親しんでいて、ミステリーに関するリテラシーがかなり上がっていると思います。でも、『ミステリー・アリーナ』の場合は、謎解きの部分に注目するだけではなく、「この発想は面白いんだよ」と多くの人に知ってほしいですね。
――ミステリー初心者の方にはいかがですか?
恐山:この作品は「劇物」かもしれません(笑)。でも、すごくハマる可能性もあります。「とにかく体験してください」という感じですね。

――『ミステリー・アリーナ』の堤幸彦監督は、『トリック』(テレビ朝日系)というミステリードラマで一世を風靡しました。その後もたくさんの話題作、ヒット作を撮っています。
恐山:私は子どもの頃からずっと『トリック』を観て育ってきたので、『ミステリー・アリーナ』にも通じるマインドがあって懐かしさを感じていました。トリックや本筋が台無しになるんではないかと思うような演出を平気で挟んできたりする(笑)。それでもミステリーと両立している不思議なバランス感覚がありますよね。あの辺の感覚は一朝一夕では誰も真似できないと思います。もっと手堅いミステリー原作もあったと思うんです。でも、この原作を選んだというところに、作り手の挑戦心というか、挑発的な樺山の笑顔のようなものを感じるんです。堤監督の『トリック』であったり、『ケイゾク』(TBS系)であったり、『SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜』(TBS系)であったりという作品の流れの先に、『ミステリー・アリーナ』は意外にハマるんです。奇跡的な原作を見つけたな、という感じがします。
――その一方で、新本格ミステリー作品の流れの先に『ミステリー・アリーナ』はあります。その2つの流れが合流したんですね。
恐山:ついに出会った! という感じがします。奇想を第一にしたミステリー路線が、邦画で萌芽しましたね。すみません、このダジャレはわざとじゃないです。
■公開情報
『ミステリー・アリーナ』
5月22日(金)全国公開
出演:唐沢寿明、芦田愛菜、三浦透子、鈴木伸之、トリンドル玲奈、奥野壮、宇野祥平、野間口徹、玉山鉄二、浅野ゆう子
原作:深水黎一郎『ミステリー・アリーナ』(講談社文庫刊)
監督:堤幸彦
脚本:大浦光太、髙徳宥介
主題歌:YELLOW MAGIC ORCHESTRA 「BEHIND THE MASK」©1979 by ALFA MUSIC, INC. Licensed by ALFA MUSIC,INC. / Sony Music Labels Inc.
製作:Amazon MGMスタジオ
制作プロダクション:オフィスクレッシェンド
配給:松竹
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