『ハイウェイの堕天使』は紛れもない“横浜映画” “コナンの世界”が現実世界を超えるとき

 今回の『コナン』に限らず、あらゆる映画やドラマのロケーションに横浜が選ばれる理由を挙げていけば枚挙にいとまがないだろう。東京からの程よい距離感、埋立地や水辺に集中した繁華街と、地形的な起伏の激しい居住エリアの混在。近代から現代まであらゆる歴史を網羅した建造物の数々に、洗練された空気と雑然とした空気の共存。そして異国情緒。しかしながら本作においては、全編を通してそうした“横浜らしさ”は思いのほか薄い。みなとみらい周辺や元町、コンテナが並ぶ埠頭など象徴的なスポットはいくつか見受けられるが、横浜のシンボリックな風景に固執することなく、あくまでも“そこを起点とした物語”に重きを置いている印象だ。

4.10公開 映画『万博追跡 2Kレストア版』当時の大阪万博を写した本編映像 解禁!

 ちょうど同じタイミングで封切られているから引き合いに出すが、舞台となる街・空間の捉えかたは1970年に製作された台湾映画『万博追跡』とよく似ている。同作では1970年の大阪万博にやってきたジュディ・オング演じる主人公が、そこで恩人探しに奔走するのだが(その点も世良真純がバイクショー会場で人探ししているのと通じる)、肝心の万博会場のシーンはなかなか淡白に扱われていた。“そこへ行く”ことが物語の導入として機能し、その場所の生の空気感を捉えることに力が注がれ、登場人物たちはあちこち行ったり来たり。『ハイウェイの堕天使』においても、横浜で始まり、その地の利に甘えることなく登場人物を軸にしたストーリーを展開させ、ところどころで丹沢湖や芦ノ湖など県西部へと広げていく。だがまぎれもなく“横浜の映画”でありつづける。

 高速道路が“入口”になったのであれば、“出口”ももちろん高速道路である。横浜にはもうひとつ、首都高の湾岸線=ベイブリッジという極めてシンボリックな高速道路が存在している。パブリックイメージの“横浜らしさ”を徹底的に抑制しながら横浜の街を描きつづけ、最後の最後でそのフラストレーションを爆発させるようにして、“横浜らしさ”の最たる場所で“コナンの世界”を放出する。それはまるで、横浜への置き土産とでもいわんばかりに。コナンたちはあの橋を渡ることで元の自分たちの世界へと回帰していったのである。

■公開情報
『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』
全国公開中
キャスト:高山みなみ(江戸川コナン役)、山崎和佳奈(毛利蘭役)、小山力也(毛利小五郎役)、沢城みゆき(萩原千速役)、三木眞一郎(萩原研二役)、神奈延年(松田陣平役)
スペシャルゲスト:横浜流星、畑芽育
原作:青山剛昌
監督:蓮井隆弘
脚本:大倉崇裕
音楽:菅野祐悟
主題歌:MISIA「ラストダンスあなたと」(Sony Music Labels Inc.)
アニメーション制作:トムス・エンタテインメント
製作:小学館/読売テレビ/日本テレビ/ShoPro/東宝/トムス・エンタテインメント
配給:東宝
©2026 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

関連記事