岸井ゆきの、『お別れホスピタル』で得た“演技”への原点回帰 “生と死”を見つめた先に

 沖田×華の人気コミックを原作に、現代医療のセーフティーネットである療養病棟を舞台にしたドラマ『お別れホスピタル』。その続編となる『お別れホスピタル2』が、4月4日、4月11日の2週にわたって放送されている。死の一番そばにある病棟で、患者やその家族と共に“その人らしく最後まで生き切る”ための日々を描く本作。主人公の看護師・辺見歩を演じるのは、前作に引き続き岸井ゆきの。再び辺見を演じる中で感じた「生と死」に対するまなざしの変化や、過酷なテーマを扱いながらも穏やかな現場の空気感、そして本作が彼女自身のフィルモグラフィーにおいてどのような位置づけになったのか、たっぷりと語ってもらった。

「生きていた」ことが描かれているのが『お別れホスピタル』

ーー続編の制作が発表された際のコメントを見て、岸井さんにとっても特別な作品なのかなと感じたのですが、決まったときの気持ちから聞かせていただけますか?

岸井ゆきの(以下、岸井):嬉しかったです。「また本当にできるんだ」と。「やりたいね」と言っても、本当に実現することはなかなか少ないので。でも、シーズン1を終えたときも、「これはきっとできるな」という、ちょっとした自信のようなものはありました。それに、まだ伝えきれていない感覚もありましたし、辺見として生きる時間がもう少し欲しかったので、本当に嬉しい出来事でした。

ーー前作から今回の撮影までの間、岸井さんもさまざまな作品に出演されてきました。他の現場を経てまた戻ってきて、前作のときとは違う感覚などはありましたか?

岸井:はい。前作では、自分が辺見の仕事を考えたとき、「療養病棟に来る人にとって、最後の新しい出会いが自分であり、出会った看護師や先生である。だから、その最後の出会いがいいものであるように」ということを道標にして演じていたんです。ですが今回、患者さんたちの表現と向き合う中で、「そうやっていい意味を付けようとしているのは、生きている、健康な私の考えなんだな」と思う瞬間がありました。自分が誰かの人生に関わっているということを、少し過信していたというか。もちろん、目の前で起きたことに対してケアをするのは辺見の仕事なんですが、患者さんが振り返る人生の中に、きっと彼女はいないんですよね。今回は辺見の仕事として、そのことを少し考えました。だからこそサポートをするのだという気持ちにはなったのですが、少し寂しさを覚えた瞬間でもありました。患者さんと過去の痛みを共有して、目を見て話しているのに、なぜか後ろ姿を見ているような感覚がすごく強くて。そのときにすごく切なくなりました。それは前作では感じたことのない感覚だったので、そこが一番の違いですね。

ーー死を目前にした患者さんたちと向き合う中で、具体的にどのような場面でそれを感じたのでしょうか?

岸井:死のうとしているときに、前を向いている、あるいは未来を見据えている人間はいるのか、ということです。安斎さん(伊東四朗)のように部分的な認知症がある患者さんも、昔の自分が県議だったときの演説をしたりして、やはりみんな過去の話をするんです。そう思ったときに、「今まで生きてきた中で、私がバイタルや血圧を測るという日常的な作業を見つめている人はいましたか? 今生きていることを感じていた人はいましたか?」と思ったんです。逆に、YOUさんが演じている末期がんの桜田さんのように、「あー、私、目が覚めて絶望する。まだ生きてる」と言うのも、見方を変えれば、今を強烈に感じているってことなんですよね。その後ろ姿を見つめながら、いろんなことを考えました。

ーー過酷な療養病棟が舞台であり、岸井さんは物語の真ん中でいろんな患者さんを受け止めなくてはいけない立場です。役者としてもかなりしんどい、大きい役柄だと思いますが、その点はいかがですか?

岸井:今回は特に順撮りではなく、スタジオでの撮影とロケ撮影が分かれていたので、2日に1度は誰かが亡くなっていくシーンの撮影がありました。各々に物語があって亡くなっていくので、やはりしんどさはありました。でも、少し希望があるというか……この言い方は語弊があるかもしれませんが、ちゃんと「生きていた」ということが描かれているのが、この作品のいいところだと思うんです。亡くなっていく命、消えてしまう命というよりも、それぞれが生きた証を描いていることが本作の強さだと思います。誰もが生きたいように生きられるわけではないですし、だからこそ死にたいように死ねるわけでもない。だけど、ちゃんとそこには人生がある。作品を通して、それを知ることができたのはとてもよかったと感じています。

関連記事