2026年冬アニメとは何だったのか? 原作もの×ラブコメ×異世界まで20代オタクが超激論

『死亡遊戯で飯を食う。』『違国日記』 音響の遠近感

『死亡遊戯で飯を食う。』©鵜飼有志・ねこめたる/KADOKAWA/「死亡遊戯で飯を食う。」製作委員会

ホワイト:私、もともと『死亡遊戯で飯を食う。』(以下、『死亡遊戯』)も転生ものに連なる『ソードアート・オンライン』的な没入系の話だと思っていたんですよ。舞台や衣装がずっとファンタジックなビジュアルで進むし、あっさり人が死んでいくし。だけどいざ観ていくと舞台裏の存在も映されて、100%現実の出来事だと強調される。前衛的なビジュアルも含めて、最後まで「変」なアニメを作るぞ、という姿勢が一貫していて個人的にはかなり好みでした。

徳田:それは僕も思いました。「死亡遊戯で飯を食う。」ってタイトルも何かの比喩なのかなと思ったら文字通りの意味で、最終話ではタイトル回収まであった(笑)。でも、今期でいちばん好きな作品だったかもしれないです。

クコ:原作は読んでいたんですが、いったいどういうアニメになるんだろうとは思っていて。原作ではけっこうテンポが早くて、サクサク人が死んだりする話ではあったので、11話で2巻分の話しか進まないという間を持った構成にしていたのは意外でした。原作に新しい解釈を加えてくれるアニメ化だったのは嬉しいなと捉えています。

舞風:原作と構成をかなり変えているんですよね。それによって時系列が少し分かりづらくなっている節はあったと思うんですが、全編シネスコで通したり、大胆に画面の上下をぶった斬ったりしていたのは面白かったです。特に引きのショットで輪郭線を描かないという手法は斬新でした。

徳田:EDの藤川千愛さんの「祈り」がまた良くて、30分間の壮大なMVとして観ると毎週ずっと楽しめるんですよ。クコさんも紹介していた、被写体距離に応じた4種類くらいの極端な描き分け、ボーカルや幽鬼のウィスパーボイスによる「近さ」の表現、“視聴者=バトルロワイヤルの観客”とみなす露悪設定による「遠さ」の表現、これらが重なって距離感が常に撹乱させられるんですね。あの“いかれた世界”に自分が没入しているのか、遠くから眺めさせられているのか、よくわからなくなる謎の身体感覚が唯一無二だったので再生している間ずっと面白かった。

『死亡遊戯で飯を食う。』独自の演出“オッドモノローグ”を紐解く ラノベ原作の特異点

『死亡遊戯』第1話は、作画の情報量制御と“オッドモノローグ”で幽鬼の二重性と人間性を描く意欲作。

ホワイト:『違国日記』槙生役の沢城みゆきさんもかなり息の多い声を当てていますよね。あの演技がすごく好きで、人間ドラマとして視聴者が槙生・朝の二人と同位の、ものすごく親密な距離感、立ち位置にいるという感情的な没入感を与えてくれていたのが良かったです。

舞風:牛尾憲輔による劇伴が話題になりがちですが、個人的には音楽でない部分の音響が面白かったなというふうに思います。環境音と台詞しかないシーンでも、例えば壁を隔てているときの遠くくぐもった音から一気に近くて大きい音に切り替わったり、掃除機の音が消えて急に槙生の声がはっきりと聞こえるようになったりといった演出で大胆に遠近感を演出しているなというところに注目して観ていました。

アニメ『違国日記』は朝&槙生の成長にどう向き合ったのか 喜安浩平が明かす脚色術

アニメ『違国日記』構成・脚本の喜安浩平は、原作の魅力を活かすため安易な解決や起伏を避け、全話を通じ朝と槙生が互いに影響し成長する…

ラブコメが豊富だったシーズン

徳田:『真夜中ハートチューン』(以下、『マヨチュー』)や『正反対な君と僕』、『幼馴染とはラブコメにならない』(以下、『幼ラブ』)など、ラブコメも多いシーズンだった気がします。

『正反対な君と僕』『マヨチュー』『エリスの聖杯』など 鈴代紗弓が2026年冬アニメを席巻

2026年冬アニメで鈴代紗弓が、『正反対な君と僕』『エリスの聖杯』『マヨチュー』『きにして』などで幅広く好演。圧倒的な演技力と演…

舞風:『幼ラブ』は先ほどの異世界ものと同じくストレスなく観られたのが良かったです。夏祭りのシーンですごく関係が進展しそうな雰囲気が出ていましたが、どうせまだこんなところでは付き合わないから大丈夫、と安心感があって(笑)。OPを含めてどうしてこういう色使いや演出になるんだろう、というのは少し気になりましたが。

徳田:『幼ラブ』みたいな作品こそ絵コンテ集を見てみたい。『「幼ラブ」演出ノート』ですよ。監督の桑原智さんは『五等分の花嫁』第1期や『女神のカフェテラス』も手掛けているので、これらと比較したりもっと昔の経歴を知っているといろいろな意味で面白いです。あと『マヨチュー』は“ハイスピード『五等分の花嫁』”あるいは“伊藤美来の異世界転生”なので、ハーレムものは時にテンプレ展開が揶揄されますが、複数作品をユニバースとしてみることで無限に楽しめます。

舞風:『マヨチュー』は声に注目してアニメーションを作るのは面白いなと思って観ていたんですが、登場人物が全員歌手やVTuberだったりするあたりに方向性のぶれがあったり、VTuberのシーンがアニメーションの場合とトラッキングの場合があったりと、ちょっとちぐはぐなところはあった気がします。僕は『綺麗にしてもらえますか?』(以下、『きにして』)を今期いちばん楽しんでいたかもしれないです。

徳田:これこそ世界に誇るジャパニーズアニメですよ。

『綺麗にしてもらえますか。』©はっとりみつる/SQUARE ENIX・「綺麗にしてもらえますか。」製作委員会

舞風:最初はのどかな日常系だと思っていたんですが、観てみたら第1話にして突然風呂シーンがドカンと入っていて、そういうアニメじゃないんだ、という(笑)。でも、そういう振り切ったところが一周回って味になっているなと。

ホワイト:聖地の熱海の温泉かどこかが『きにして』を宣伝に活用していたのが面白かったですね。あの作風でも意外と受容されるんだ、って。

徳田:フェティッシュに真面目に向き合うなら、二の腕の質感はマジで良かった。あの年代の女性が日常的にちょっと重いものを持っている程度の筋肉量とか、触ったときにちょっと冷んやりしてるんだろうなと想像できる、二の腕作画としては史上最高でした。

舞風:あの服で袖をまくる必要ぜったいないですからね(笑)。リソースを管理しながらどうフェティッシュな画面を構成するかという良くも悪くも伝統的な側面に関してはいちばん頑張っているなと思います。逆に真っ向から純粋なラブコメをしている作品としては『正反対な君と僕』がありました。EDの映像が好きで毎週楽しみにしていました。ちょっと『CITY』のEDっぽいですよね。

クコ:毎週夕方に1話観るのにちょうど良いですよね。ちょっとほっこり良い話をして、『違国日記』ほど踏み込まずにゆっくりトラウマを乗り越えるくらいのペースでやってくれているのが良い。少女漫画風ではあるけど、そんなにベタベタせず男性でも楽しみやすい女性視点のラブコメって意外と少ないな、と思って重宝しています。

最後にひとこと

クコ:今期は『勇者刑』や『Fake』など2025年の秋に放送予定だったものが延期したこともあって、ハイエンド系の面白い作品が集中していたなという印象でした。

ホワイト:今期は『死亡遊戯』に『違国日記』『Fake』など間の取り方が上手い作品が多く、ヒューマンドラマ的なところを楽しめるシーズンでした。そうした人間関係やコミュニケーションがテーマになっている作品として、春にはソワネ制作の『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』も公開されるので期待大です。地元の大分県宇佐市が舞台の『こめかみっ!ガールズ』も楽しみです。

舞風:ハイクオリティなアニメが多い一方、日本のTVアニメの醍醐味である「限られたリソースの管理」が飛び抜けて上手い、といった作品が比較的少なかったように感じられたのが少し寂しいです。『メダリスト』については徹底的にスケートリンクに見所を集約して、それ以外のシーンは比較的省エネで済ませる、というメリハリが独特でしたが。あと、今後の作品としては5月に公開予定の『ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ Bloom Garden Party』が楽しみですね。

徳田:僕は『BanG Dream! Ave Mujica』がない冬アニメをどう乗り越えるかが個人的課題でしたが、劇場版もTVアニメの新シリーズも決まったようなので、向こう1年はこちらに備えようと思います。

参照
※1. https://x.com/yama_ic/status/2013990446813577289?s=20
※2. https://new-new.jp/school/school-643/
※3. https://premium.kai-you.net/series/jujutsukaisen

関連記事