三宅裕司×ビビる大木が挑む、ボウリング業界を題材にした東京喜劇 2人の譲れない笑いとは

5月31日より始まる新橋演舞場シリーズ第12弾東京喜劇「熱海五郎一座」は一座旗揚げ22年目、新橋演舞場では12回目という長い歴史あるシリーズだ。座長の三宅裕司は今回、ビビる大木を「助っ人」として白羽の矢を立てた。埼玉県出身の大木の参加で東京の喜劇にどんな「新しい風」が吹くか。今回のテーマ「ボウリング業界の光と影」の全容にも迫る!?(木俣冬)
「突然のオファーに“ビビる”大木」を見出しにしたかった?

――まず、三宅さんが今回、ビビる大木さんを助っ人に呼んだ理由を教えてください。
三宅裕司(以下、三宅):一座の旗揚げ22年目、新橋演舞場では12回目とこれだけ同じメンバーで長くやっていると、それぞれの持ちネタみたいなものが決まってくるわけです。例えば、落語家の春風亭昇太があえていつも落語を知らないキャラを演じるとか。そういう設定にすると面白いじゃないですか。リーダー(渡辺正行)のお決まりのギャグもだんだん行き詰まってきて(笑)。そろそろ違うことをしようよと。そのためにキャラクター的にほかの誰とも被らない新しい風が欲しいと思っていたところ、東MAX(東貴博)から「出てみたいと言っている人がいますよ」と聞いたことがあって。それがビビる大木くんでした。ここまで長く続けたことによる固いチームワークは壊したくないので、人間的にいやな人じゃない人であることも重要で、その点でもピッタリだったんです。
ビビる大木(以下、大木):そこまで考えていただいていたとは嬉しい限りです。「熱海五郎一座」はこれまで何公演か拝見して、そのとき東さんに「こういう一座に参加していることはとってもいいですね」「お前、興味あるの? 本当に?」「もちろんありますよ」というような会話を交わしたことがあるんです。僕は生まれが埼玉なので、当然、関西よりも東京の笑いを見て刺激を受けてきました。そして、軽演劇というジャンルにはじめて触れたのは、まさに「熱海五郎一座」で。東京にはこんなにおしゃれな笑いがあるんだなぁ、と憧れたものです。でも、観に行くだけの人間だと思っていたのが、今回、まさかこうしてお声を掛けていただいて本当に光栄です。
三宅:(激しく恐縮する大木を見ながら)もうひとつ最大の理由がありました。おそらく、彼の参加がいろいろな記事になるとき、「突然のオファーに“ビビる”大木」という見出しになるなあと思って。
大木:そんなことまで想定して(笑)。
三宅:この対談の記事の見出しはぜひこれでいってほしい。
――大木さんは「新しい風」として責任重大かと思いますが、特別に準備していることはありますか。
大木:それはもちろん。これまでの公演を観れば、しなきゃいけないことがたくさんあるとわかります。でも、東さんに確認したら「準備は何もないよ」「どういうことですか」「そんな必要ない」と。そんな必要ないってはっきりした言い方はしていないですけれど。いやでも、3時間近くある公演で、長いセリフもあるし。僕はセリフを覚えるのに時間がかかるので、「ちょっとドキドキしています」と言ったら「大丈夫、大丈夫、みんな覚えてないから」って。20数年やってきた皆さんだけあって、万が一覚えていなかったとしても、ちゃんと面白い方向に切り替えられるんでしょうね。そんな実力派の皆さんのなかでどういうふうに臨んだらいいか……。(三宅に)どうしたらいいんですかね?
三宅:特別なことは何もない。台本に書かれたセリフを覚えて言えばいいわけだからね。
大木:それだけでいいんですか。東さんからも「変に緊張しすぎないほうがいいよ」と言われましたけれど。これほど錚々たる面々ですから、楽しみな半面、どうしたって緊張しますよ。(ゲスト出演の)野呂佳代さんも緊張すると言っていました。
三宅:稽古2日目ぐらいにはもうその緊張はなくなっていますから、大丈夫です。
大木:ほんとですか。皆さん、初日から台本を手にしていないくらい覚えているんですか?
三宅:そんなわけないでしょう。全員揃うのは2回か3回くらいよ。みんなそれぞれ仕事があるから。
大木:すげー、それであのクオリティの高さなんですか。

――稽古で全員が揃わない日数が少ないのは歌舞伎の世界みたいですね。
三宅:歌舞伎の人は昔からある本をやることが多くて新作は少ないですからね。うちは新作で稽古2日。
大木:やっぱすごいですよ!
――稽古でだいたいベースを作って、本番で変わっていくものなのでしょうか?
三宅:いえ、本番で変わることはないです。稽古場で揺るぎない面白いものを作りますから。作家が優秀なんですよ。本番でやってみて、ちょっと違うかなというところだけ直しますが、あとはだいたい本の通りにやればウケるようにできています。
大木:僕が以前観に行ったとき、アドリブなのか、台本通りなのか、どっちかわからないという箇所が何カ所もあって、これも東さんに聞いたんですよ。「どっちなんですか」って。そしたら「あれもちゃんと台本だよ」「おー」って。やっぱりそれが先輩方のすごいところですよ。もしかしたらアドリブなのかなって観客が騙されちゃうくらい、常に新鮮に演じていますよね。
三宅:昇太なんて、セリフを噛む練習をしていましたからね。舞台でセリフを噛むのはもってのほかにもかかわらずあえて噛む練習をしているんです。
大木:プロだなぁ(笑)。
本番でのアドリブはなし、計算し尽くされた笑いの土台

――今回は『仁義なきストライク』ということで、テーマは「ボウリング業界の光と闇」だそうですが、構想を教えてください。
三宅:これまでやっていないことは何かと作家と考えていたら、作家から「ボウリングはどうですか?」と言われて。ボウリングは舞台上で非常にやりにくそうでしょう。そういう困難にあえてチャレンジして、面白い喜劇が作れたらいいなと思って。ボウリング業界の実情を調べたうえで、女性プロボウラーを中心に、スポンサーの企業や裏社会などが絡んですったもんだがあって、でも最後はぐっとくるような感動的な話ができたらいいなと考えています。
大木:僕はなんの役なんでしょうか?
三宅:まだ台本をもらってないしわかってないよね。古いボウリング場が舞台で、僕はボウリング場の支配人で、そこに常連客の役で昇太がいて、小倉(久寛)がいて、そこの土地をなんとか売買しようとする不動産業者がリーダーです。大木くんの役は不動産会社の社長です。
大木:社長ですか、僕は(絶句。着てきた衣裳を見ながら)あやしい社長ですね(笑)。緊張が高まりますよね、だんだん役が固まってくると。
三宅:相手役はリーダーになる可能性あるよね。
大木:主に絡むのがリーダー。そうですか。もうしょうがないです。って言い方はおかしいですけどね。
三宅:(おかしそうに笑う)。
大木:リーダーはみんなから愛されるキャラですから楽しくやります(笑)。
三宅:リーダーには許されても、それを真似してやると許されない人はたくさんいますからね。
大木:そこがリーダーのすごいところです。

――三宅さんと大木さんの絡みはありそうですか?
三宅:それはあるでしょうね。社長とその不動産会社社員がこの土地を買いに来るわけですからね。
大木:三宅さんと芝居ができる日が来るとは本当に夢のようです。
三宅:多分、リーダーがダメな社員で、ボウリング場のオーナーに突っ込まれたとき、代わりに社長が出てくるけれど、もっとダメな社長だったというパターンでしょうね。
大木:ははは(笑)。
――プレスリリースに「まさに全員ピン芸人」と書いてあったのですが。
三宅:いわゆるピン芸人じゃない人もいるのに、「全員ピン芸人」とはこれいかに。チラシを見てもらえばわかります(全員、ボウリングのピンになっていた)。ボウリングのピン芸人なんです。




















