『パリに咲くエトワール』は今を生きるすべての人へ 分断の世界に響く“平和への祈り”

華やかなパリの日常と、立ちはだかる“夢と現実のせめぎ合い”

 一方で、夢を叶えるのは一筋縄ではいかないこともしっかりと描かれる。バレエの天賦の才に恵まれ、着実に結果を出していく千鶴と、生活に追われ絵を描くことすらままならなくなるフジコの対比。2人を取り巻く、女性であること・東洋人であることに対する差別や偏見の目。そして、日本に早く戻ってこいと願う親の心配と、迫りくる戦争の気配が常に、遠くない未来の、夢の終わりを予感させる。そんな、夢と不穏な現実の怒涛のせめぎ合いがアクション映画さながらに押し寄せる迫力の展開の中で、それでも夢を諦めないフジコと千鶴に圧倒される。

 そして何より、排外主義が声高に叫ばれ、世界のあちこちで戦争が起きる今、本作の登場人物たちが拍子抜けするほど簡単に「国や民族のしばりを越えていく」姿に驚かされる。

 興味深いのは、本作のアクションシーンの要とも言えるなぎなたを通して、国籍や性別、年齢関係のない交流が生まれていくことだ。その奇妙な友情の輪は、収入を得るためにフジコと千鶴が野外で始めた小さななぎなた教室の仲間たちはもちろん、なぎなたの達人である千鶴にちょっかいをかけてきたパリの街の“ならず者”たちにまで繋がっていく。

 それはきっと、平和への祈りだ。「こうやって、世界が少しずつ広がっていくといいな」と終盤、フジコの知人でリヨンの帝国領事館で働く矢島(津田健次郎)が言う。彼女たちの夢がこの先も、閉ざされることなく続きますように。それを願うことは、今を生きる若者たちの未来に繋がっているに違いない。

■公開情報
『パリに咲くエトワール』
3月13日(金)全国公開
出演:當真あみ、嵐莉菜、早乙女太一、門脇麦、尾上松也、角田晃広、津田健次郎、榊原良子、大塚明夫、甲斐田裕子、藤真秀、興津和幸、小野賢章、名塚佳織、唐沢潤、村瀬歩、内山夕実、岩崎ひろし、永瀬アンナ
原作:谷口悟朗、BNF、ARVO
監督:谷口悟朗
脚本:吉田玲子
キャラクター原案:近藤勝也
キャラクターデザイン・総作画監督:山下祐
音楽:服部隆之
主題歌:「風に乗る」緑黄色社会(ソニー・ミュージックレーベルズ)
アニメーション制作:アルボアニメーション
製作:「パリに咲くエトワール」製作委員会
配給:松竹
©「パリに咲くエトワール」製作委員会
公式サイト:https://sh-anime.shochiku.co.jp/parieto-movie/
公式X(旧Twitter):@parieto_movie
公式Instagram:@parieto_movie

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