仲野太賀×池松壮亮の“笑顔”が視聴者を見方に 『豊臣兄弟!』が見つめる戦国時代の残酷さ

一方で、本作が強調して描いていたのは、そんな彼らが無自覚に目の当たりにする世界の過酷さだ。足軽出身、いわば「普通の人」が目の当たりにする武士の世界の残酷さである。例えば、第1回終盤で兄・藤吉郎が躊躇なく人を斬るのを目の当たりにした小一郎の姿。あるいは、第2回における、野盗の襲来により、穏やかに暮らしていた村人たちの日常が理不尽に奪われていく様子(この場合は武士かそうでないかは関係なく、乱世ゆえの過酷さだった)。さらには、藤吉郎と小一郎が初めて戦に参加し、怯え慄きながら、「首」を奪い合う殺し合いの世界を目の当たりにする姿。

何より興味深かったのは、第4回の桶狭間の戦いにおいて誰もが「今川を倒す」ために戦っている中で、藤吉郎と小一郎は「親の敵」城戸小左衛門(加治将樹)しか見ていないことだ。それを観ていて、2025年10月期放送の野木亜紀子脚本のドラマ『ちょっとだけエスパー』(テレビ朝日系)を思い出した。すべてを失い、社会との繋がりを失ってしまった主人公・文太(大泉洋)たちが集められ「世界を救う」という目標を掲げた会社でよく分からないまま働かされているという構造は、終盤彼らが意志を持って動くようになるまで、終始不気味さを伴っていた。
野木亜紀子の異色作となった『ちょっとだけエスパー』 生きることは世界を愛すること
野木亜紀子脚本『ちょっとだけエスパー』(テレビ朝日系)が12月16日に最終話を迎えた。大泉洋演じる“ちょっとだけエスパー”になっ…そして、「世界を救う」という大きすぎる目標がピンと来ない登場人物たちは「目の前の四季ちゃんを救うってことなら分かる」とヒロイン・四季(宮﨑あおい)を救おうとしていた。それと、戦という不慣れでよく分からない現場において、とりあえず目の前の、実感として認識できる敵だけを見つめるしかない現状の藤吉郎・小一郎兄弟が重なった。
同じことは第5回においても言える。藤吉郎・小一郎は、信長に言われるまま鵜沼城主・大沢次郎左衛門(松尾諭)の調略を試みた。藤吉郎が、元康のアドバイス通り、熱意を持って全力でぶつかってみたところ、次郎左衛門は、藤吉郎にかつての自分を、そして会ったことのない信長をかつての斎藤道三(麿赤兒)に重ね、信長に会いに行くことに決めた。そこまでは爽やかで感動的な兄弟の成功譚だ。でも、「信じて」と言った先の道は盤石ではないのである。なぜなら彼らの上司・信長は、彼らに見せている顔だけがすべてではないからだ。そして、「後の戦国の三英傑」となる藤吉郎はまだ、愉快だけど非力で、目の前の目標しか見えていない「サル」でしかない。だからハラハラさせられる。

第6回の副題は、「兄弟の絆」。藤吉郎と小一郎のみならず、信長と市(宮﨑あおい)兄妹の関係を、極めて対等な「お互いのことを分かりたくなくても分かってしまうことがある不思議な関係」として描いているのも本作の際立った特色の1つだろう。また、第4回で藤吉郎と小一郎の楽しそうなやりとりを見つめる信長の回想として登場した、信長の弟・織田信勝(中沢元紀)と信長の兄弟の物語が、本作における織田信長の心の内を紐解く鍵になっているに違いない。兄弟/兄妹を軸に描かれる戦国絵巻は、この先何を見せてくれるのだろうか。
■放送情報
大河ドラマ『豊臣兄弟!』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送
出演:仲野太賀、池松壮亮、吉岡里帆、浜辺美波、白石聖、坂井真紀、宮澤エマ、倉沢杏菜、大東駿介、松下洸平、中島歩、要潤、山口馬木也、宮崎あおい、小栗旬、池田鉄洋 ほか
作:八津弘幸
音楽:木村秀彬
語り:安藤サクラ
制作統括:松川博敬、堀内裕介
プロデューサー:高橋優香子、舟橋哲男、吉岡和彦(展開・プロモーション)、国友茜(広報)
演出:渡邊良雄、渡辺哲也、田中正
写真提供=NHK






















