『ラムネモンキー』はなぜ“愛しい”のか 古沢良太の手腕が発揮された“歪”な物語の魅力

『ラムネモンキー』はなぜ“愛しい”のか

 どのエピソードも単純な美談化に背を向けている。正義は必ずしも正義でなく、体罰をその人らしさとして肯定したかと思えば、改心すら認めない。現実はそんなにシンプルではないのだ。正しさやゆるしが感動譚にならないことだってある。誰かの美談の傍らで絶望している人もいる。悔しさを悔しいまま抱えて手放せない人がいる。中二病を卒業できない人だって。そんな取り残され、うなだれて、でももがいている人たちの気持ちを「Everyday」が癒やしてくれる。

 古沢が手がけた『映画ドラえもん のび太と空の理想郷』(2023年)では理想郷が必ずしも理想郷ではないことを描きつつ、登場人物は皆、好感度の高い、感動譚にまとめていたが、『ドラえもん』と『ラムネモンキー』の古沢、比べてみると幅の広さを感じておもしろい。

 さて。真実なのか創作なのかという話になるたび、筆者が拠り所にしている作品がある。民俗学者の宮本常一の『土佐源氏』(『忘れられた日本人』より)。貧しい老人の人生の生々しい聞き書きはジャーナリズムの傑作とされたが、のちに語り手の経歴が実際と乖離していたことがわかる。しかも話の元ネタが存在していたことも判明する。いったいどういうことなのか。何が真実だったのか。老人、あるいは宮本の真実(いまでいうナラティブ)なのだという解釈もできる。事件性のあることの真偽には正確さが必要だが、罪のない人の心に余計な口をはさむのは野暮だということであろう。そんなことと似たような印象を『ラムネモンキー』の登場人物たちの記憶の改変に覚える。

 作り話であろうと、しかもそれがたわいないことであろうと、少し歪であろうと、いやむしろ、きれいにまとまったいい話よりも、少しはみ出して歪なほうが愛おしい。『ラムネモンキー』はとても愛おしい物語だ。「Everyday」の歌声とともに毎週抱きしめたくなる物語だ。

 演じている反町は熱血イケメンど真ん中、大森にはサブカルチャーの匂いがあり、津田は小柄なのに声に重みがあるギャップの魅力。三者三様の個性のバランスもいい。

『ラムネモンキー』の画像

ラムネモンキー

51歳になり人生に行き詰まりを感じる元映画研究部の凸凹3人組が37年ぶりに再会。故郷の人骨発見を機に、中学時代の憧れの顧問教師の謎の失踪事件を追い、再び走り出す。

■放送情報
『ラムネモンキー』
フジテレビ系にて、毎週水曜22:00~22:54放送
出演:反町隆史、大森南朋、津田健次郎、木竜麻生、福本莉子、濱尾ノリタカ、大角英夫、青木奏、内田煌音ほか
原作:古沢良太『ラムネモンキー1988』(note刊)
脚本:古沢良太
企画・プロデュース:成河広明
プロデューサー:栗原彩乃、古郡真也
演出:森脇智延
主題歌:Bialystocks『Everyday』
音楽:Bialystocks
制作協力:FILM
制作著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/ramunemonkey88/
公式X(旧Twitter)https://x.com/ramunemonkey88
公式Instagram:https://www.instagram.com/ramunemonkey88/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@ramunemonkey88

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