『ばけばけ』ヘブンや錦織が慕われる理由 『あんぱん』『なつぞら』にも登場の名物教師たち

『ばけばけ』『あんぱん』登場の名物教師たち

朝ドラにおける教師像

 では、朝ドラではどうだろうか。近年、特に対照的な教師像として印象に残っているのが、NHK連続テレビ小説『あんぱん』(2025年度前期)に登場した黒井雪子(瀧内公美)と座間晴斗(山寺宏一)。ヒロイン・のぶ(今田美桜)と幼なじみの嵩(北村匠海)は、それぞれ進学先の学校で出会った2人の教師たちの生き方や考え方に大きな影響を受けることになる。

 本作では、主人公であるのぶ自身も教師となるが、そのために通った高智女子師範学校で彼女に厳しく指導したのが黒井先生だった。初登場時から厳格な面持ちでのぶたちを出迎えた黒井は、女学生たちに「愛国の鑑たれ」と言い放つ。厳格な授業に戸惑うのぶやうさ子(志田彩良)にも「弱い」と一喝するなど、愛国精神を養うための教育方針には妥協を許さなかった。最後までのぶの前で毅然とした表情で接する瀧内公美の姿は、その後、念願叶って教師となったのぶが「愛国の鑑」と呼ばれるようになり、教壇に立って子どもたちに教える姿にも重なっていく。

 一方、次第に軍国主義に傾倒していくのぶに対して、嵩は東京高等芸術学校に合格し、新しい世界が広がる銀座の街を謳歌する。彼の自由で好奇心旺盛な行動の裏には、凝り固まった価値観を柔軟に解きほぐしてくれた座間先生の教えがあった。入学早々、彼は「デザインの学校に入ったからって、デザイナーになる必要なんてない」と説き、嵩たちを面食らわせると、個性的な歌詞が特徴的な「図案科の歌」をお店で歌い出す。風通しのいい環境を生み出す山寺宏一の大らかな空気感が、生徒たちにも伝播していくのが伝わってくるシーンだ。何かと陽気な性格の持ち主である座間先生だが、戦争に行くことになった嵩を慮る場面では、彼の根底に流れる優しさと平和を願う気持ちが顔を出す。嵩にとっては、まさに恩師とも言える存在だった。

 ほかにも、NHK連続テレビ小説『なつぞら』(2019年度前期)に登場した倉田隆一(柄本佑)も個性的な教師のひとり。ヒロイン・なつ(広瀬すず)が通う農業高校の教師で、演劇部の顧問を担当している倉田は、彼女に向かって「お前演劇やれ」と突然、言い放つ。さらに、白熱した演劇の稽古中は、迷いを持って演技するなつの心の内を見透かして、魂の見えない芝居を叱責しながらも、真剣で愛のある言葉を送る。あくまで真面目な表情でなつを説得するコミカルな姿も、演劇に対する並々ならぬ情熱を語る姿も、独特の存在感を示す柄本佑の芝居が輝く。倉田に誘われた演劇部での公演は、のちにアニメーションの世界へと足を踏み込むなつにとって、人の気持ちに寄り添う物語を表現する喜びを知ったきっかけでもあった。

 朝ドラにおいて「教師」という存在は、主人公の価値観に変化を促す重要なポジション。まだ何者でもない彼らを導いていく存在であることから、尖った個性を持つキャラクターとして描かれることも多く、演じる俳優陣の力量が試される役柄といえるだろう。

 『ばけばけ』では前述の2人のほかにも、東京で帝大受験を志していた庄田(濱正悟)が校長になった錦織に代わって、松江中学の教壇に立つことになった。また、熊本編では、ヘブンと同じ英語教師のロバートや、熊本第五高等中学校で同僚となる教師・作山(橋本淳)が登場する。新たな土地へとやってきたヘブンとともに、彼らがどのように生徒たちと接するのか、演じる役者陣の芝居も含めて楽しみにしたいところだ。

■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK

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