『今日から“ニンゲン”に転身しました』キム・ヘユンが圧巻の演技 “九尾狐もの”に新たな風

キム・ヘユン、“九尾狐もの”で圧巻の演技

 本作は、九尾狐ドラマの定番である「人間になりたい」というテーマを反転させ、「人間になりたくない」狐を主人公に、韓国のMZ世代的感性を描く。“映え”を意識したスイーツが登場するなど、その世界観はまるでInstagramの画面のように軽やかだ。

 一方で、ウンホの目を通して人間社会の「負」の側面も描き出す。警察署内の大勢の犯罪者や、ホテルでの豪華なビュッフェと対比し、裏方で働く末端の従業員の姿を生々しく映し出す。ウンホは、亡くなった姉のような九尾狐を思い出し、よく似た顔のクムホに、人間になってほしくなかったのだ。しかし、クムホは、「これまで幸せだとも不幸だとも感じなかった。短くても強烈な瞬間に振り回されてみたい」と告げる。

 キム・ヘユンがウンホとして、心の奥底で強烈に抱えてきた「孤独」と「恐怖」を演じるその芝居は圧巻だ。キム・ヘユンは、今にも零れてしまいそうな、表面張力いっぱいに張り詰めた水がせり上がるような芝居を見せる。

 『SKYキャッスル~上流階級の妻たち~』のイェソ役では、上流家庭に生まれながら、エリートとして負けられない競争を強いられ、受験戦争から零れ落ちる恐怖を体現していたキム・ヘユン。『偶然見つけたハル』では、消えそうな架空の世界に慄き、『ソンジェ背負って走れ』では、推しの命の灯が消えてしまうのではないかと恐れる。キム・ヘユンは、その恐怖と慄きをたたえた眼差しの奥に、精いっぱいの強がりと、希望に向かって走ろうとする強い意志を秘めているのだ。

 最後に、キム・ヘユンとロモンの胸キュン場面にも触れておきたい。韓ドララブコメの定石である相手役のシャワーシーンや、ヒロインがつまずいて抱きとめられる瞬間のときめき、さらには突然差し込まれるサスペンスなど、観る者を安堵させたり戸惑わせたりする“韓ドラあるある”が、本作にも随所にちりばめられている。自信過剰なキャラクターとして登場したシヨルも、物語が進むにつれて変化を見せ、ウンホへの配慮が次第に恋へと転化していく様子も描かれていく。現代版にアップデートされた九尾狐のウンホは、シヨルへの恋心を抱き、「人間になりたい」と思えるようになるのだろうか。

参考
※ https://www.netflix.com/tudum/top10/tv-non-english

■配信情報
『今日から“ニンゲン”に転身しました』
Netflixにて配信中
出演:キム・ヘユン、パク・ソロモン(ロモン)
脚本:パク・チャンヨン、チョ・アヨン
演出:キム・ジョングォン

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる