齊藤京子の“言葉のリアリティ”はあまりに美しかった 『恋愛裁判』が描いた普遍的な恋の形

『恋愛裁判』が描いた普遍的な恋の形

 本作の主人公・山岡真衣の物語の興味深いところは、恋愛かアイドルかの二者択一を迫られた時、そのどちらかを選ぶ話として描かれないことだ。例えば同じアイドルグループの仲間であり、恋人の存在が発覚した菜々香(仲村悠菜)は、事務所の社長・吉田(津田健次郎)にアイドルでい続けることと恋人と別れることを天秤にかけられ、「アイドルをやめたくない」ために恋人との別れを決意する。

 一方、真衣は、恋愛感情を優先したことを咎められ、所属事務所から訴えられることで、すべてを捨てて「恋愛」を選んだように見えるが、その後も配信を通してのファンとの交流の場面や、かつての自分のような、彼女に憧れる少女たちのレッスンを見守る場面を通して「アイドル」としての本質を見せ続ける。そしてそれは、同じ部屋にいても、配信を通してファンと交流する真衣と、自分との間に見えない壁があることを、パントマイムを通して示したり、少女たちと彼女の幸せそうな空間を扉の外側から見つめたりする恋人・敬を通して実感させられるものでもある。

 つまり本作は、彼女のアイドルとしてのファンへの愛と、アイドルとしての夢と、彼女の恋を完全に並列するものとして描くことで、ありのままの彼女を提示する。その一貫性と普遍性は、ただ1人の人間としての彼女の姿を映し出すのである。そして問うのだ。恋のみが「過失」とされてしまう彼女の置かれている世界のおかしさを。戦ったその先で、彼女が口にする、なんとも実感の伴うしみじみとした言葉のリアリティこそが、この世界の本当の美しさだと思った。

■公開情報
『恋愛裁判』
全国公開中
出演:齊藤京子、倉悠貴、仲村悠菜、小川未祐、今村美月、桜ひなの、唐田えりか、津田健次郎
企画・脚本・監督:深田晃司
共同脚本:三谷伸太朗
音楽:agehasprings
主題歌:「Dawn」yama (Sony Music Labels Inc.)
制作プロダクション:ノックオンウッド、TOHOスタジオ
配給:東宝
製作:「恋愛裁判」製作委員会
©2025「恋愛裁判」製作委員会
公式サイト:https://renai-saiban.toho.co.jp/
公式X(旧Twitter):@ren_ai_sai_ban
公式Instagram:@happy_fanfare
公式TikTok:@ren_ai_sai_ban

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