『閃光のハサウェイ キルケーの魔女』と『逆襲のシャア』の関係 より高まる主人公の解像度

『閃光のハサウェイ』第3章で何が描かれるのか

 だからこそ、再びギギとの関係が近づいたところから始まることになる第3作で、ハサウェイが何をしでかすのかに興味が向かう。ギギは、第1作の終盤でハサウェイが組織に戻った後に身を寄せた地球連邦軍のケネス・スレッグ大佐に、予言めいたことを言って「マフティー」に打撃を与えている。彼女なりの本能にも似た身の処し方だったとはいえ、気分次第ではまた敵に回りかねないギギに翻弄されてしまうのか、それとも身を委ねてもいい相手と思ってもらえるのか。その行方によっては、小説版から過去だけでなく未来まで変わったものになってしまうことも起こるかもしれない。

 知られているとおり、小説版『閃光のハサウェイ』の結末はハサウェイにとってとてつもなく苦い。ケネスやギギにとってもハッピーエンドとは言い難い。それをひっくり返すような展開があるなら観てみたい。今この現実世界でも濃さを増す閉塞感を突破する道筋を示すものになるはずだから。

 『閃光のハサウェイ』のシリーズは、そう期待させるくらいに現実のリアルさを持った作品でもある。『ガンダム』のシリーズである以上、時代は未来でモビルスーツのような架空の兵器が運用されていて、現実には起こりえない巨大なロボット同士の空中や地上での格闘戦が登場する。もっとも、そうした部分を、第1作では実写のように緻密に描かれた市街地で、モビルスーツが戦闘を繰り広げれば一帯にどのような被害が発生し、そこにいる人たちがどれだけの恐怖を覚えるのかをリアリティたっぷりに描いてみせた。

 第2作でも、そうしたモビルスーツ戦のリアルさは健在だが、より目を見張らされるのは、日常の描写や舞台となる場所の緻密さだ。「マフティー」に合流したハサウェイが乗り込んだ支援船の様子など、あれだけの機材や人員が揃っているならモビルスーツも運用できるし、組織を運営できると納得させられる。ギギが滞在していた海辺のコテージから見える海と島々と空の様子も、ギギが移ったセレブたちが暮らすニューホンコンの住居と街並みも、4K映像かとすら思えるくらいに精緻だ。

 社会情勢もとことんリアル。地球連邦の支配者層と金持ちくらいしか暮らすことを許されていない地球には、宇宙からさまざまな理由を抱えて逃れてきた不法滞在者たちが大勢いる。それを地球連邦政府は、マン・ハンターと呼ばれる組織を使って摘発している。拉致も辞さず暴力も振るうマン・ハンターの所業は、第1作が公開された2021年ですらうっすらと現実の動きを感じさせていた。5年経った今、現実を大いに先取りしていたことが分かった。まさに予言的作品。それをいうなら、1989年の刊行時に不法滞在者狩りを生業とするマン・ハンターを登場させた富野監督の先見性が凄すぎるのだが。

 そこは、『機動戦士ガンダム』で舞台となる社会や政治にリアリティを持たせ、その上で繰り広げられるロボットバトルにも現実味を持たせた富野監督だけのことはある。こうした施策が「リアルロボット」という言葉を生み出し、子供向けと思われていたロボットアニメを大人が観て大いに刺激を得られるものにしていった。『閃光のハサウェイ』は現時点におけるそうした路線の究極といえる。

 なおかつ、描写の緻密さも含めてリアリティたっぷりに描かれている映画が何か指し示すとしたら、フィクションでありながらも現実を映しその矛盾を撃つようなものになるはずだ。公開のときも内容もまるで見えないが、今は期待して待つしかない。

■公開情報
『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』
全国公開中
キャスト:小野賢章(ハサウェイ・ノア役)、上田麗奈(ギギ・アンダルシア役)、諏訪部順一(ケネス・スレッグ役)、斉藤壮馬(レーン・エイム役)
原作:富野由悠季、矢立肇
監督:村瀬修功
脚本:むとうやすゆき
キャラクターデザイン:pablo uchida、恩田尚之、工原しげき
キャラクターデザイン原案:美樹本晴彦
メカニカルデザイン:カトキハジメ、山根公利、中谷誠一、玄馬宣彦
メカニカルデザイン原案:森木靖泰、藤田一己
美術設定:岡田有章
美術監督:大久保錦一
色彩設計:すずきたかこ、久保木裕一
ディスプレイデザイン:佐山善則
CGディレクター:増尾隆幸
撮影監督:大山佳久
特技監督:上遠野学
編集:今井大介
音響演出:笠松広司
録音演出:木村絵理子
音楽:澤野弘之
企画・制作:サンライズ
製作:バンダイナムコフィルムワークス
配給:バンダイナムコフィルムワークス/松竹
©創通・サンライズ
公式サイト:https://gundam-official.com/
公式X(旧Twitter):https://x.com/gundam_hathaway

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