なぜ大食い番組は求められる? 『元祖!大食い王決定戦』などに至る食事の楽しさを紐解く

 なぜわれわれは、大食いする姿を見たくなってしまうのか。

 現在もなお高い人気が続く大食い番組、そしてその需要はYouTubeなどにも拡大、大食いYouTuberの配信は高い再生数を誇るものも数多い。地上波でも各局で放送され、CSのホームドラマチャンネルでも毎週月曜日に『元祖!大食い王決定戦』や『デカ盛りハンター』が放送されている。

『元祖!大食い王決定戦~怪物ルーキー出現!最強王座強奪戦』©テレビ東京

 本稿では、なぜ大食い番組が求められ続けるのか、過去を振り返りながら紐解いてみたい。

 赤坂尊子。現代まで続く大食いのエンタメ化において、“女王・赤坂”とも呼ばれた彼女の圧倒的な強さとキャラクター性がひとつのエポックであったことは間違いない。

 1990年代前半よりテレビ東京系で放送された、さまざまなジャンルのてっぺんを決める競技型バラエティ『TVチャンピオン』の顔ともいえる人気企画「大食い選手権」、その第4回で初優勝を飾った赤坂は、男性を超える見事な食べっぷりや、口いっぱいに食べ物を詰め込み汗をかきながら爆食する姿はどこかコミカルな雰囲気も漂い、愛されキャラとして、さらには赤坂をはじめ、岸義行、伊藤織恵、新井和響ら、のちに“第一世代”と呼ばれる面々は、中村ゆうじの軽妙なレポートと相まって番組とともに一躍お茶の間の人気者となった。

 赤坂らの活躍の後に「大食い選手権」に登場し、第一世代を超える食べっぷりで大活躍したのが小林尊、白田信幸(ジャイアント白田)、射手矢侑大らの“第2世代”だ。小林や白田が「大食い」、そして「早食い」する姿はもはやアスリートのようで、いつしか彼らは“フードファイター”とも呼ばれ、大食い大会は“フードファイト”、“フードバトル”とも称されるようになった。小林らが掲げていたのは、フードファイターの地位の向上だったことも興味深い。

 そう、“第一世代”のころの大食いは、どこか「ビックリ人間」的な見られ方もともなう部分があり、常軌を逸した食べっぷりをある種「異常」なものとして笑いにするような視点もあったことは否めない気がする。

 そんななか2001年に放送が開始されたTBS系の『フードバトルクラブ』は、同局の人気番組『ガチンコ!』内の人気企画「ガチンコファイトクラブ!」の名称に合わせたようでもあり、大食いの“ファイター”、“バトル”要素をより特化させ、実況・解説もスポーツや格闘技番組風の雰囲気が導入されるなどし、セットも総合格闘技や同局の『SASUKE』を思わせるような豪華なセットが組まれるようにもなった。『TVチャンピオン』とは違う方向での競技エンタメ化をはかった『フードバトルクラブ』での小林や白田の活躍により、2000年代前半には、大食い選手たちのアスリート化もともなって、大食いは単なる人気特番から、ひとつのジャンルへと進化していった。

 しかし、この大食いのお茶の間エンタメ化によって、子どもたちも大食い・早食いを真似するようになり、2002年には『フードバトルクラブ』を真似た児童の死亡事故が発生するなど負の影響も招く事態となり、各局は大食い番組を自粛・休止する方針となり、大食いは一時表舞台から姿を消すこととなった。

 しかし、人がありえない量の料理を綺麗にたいらげていく姿は、それを観るだけである種のカタルシスが得られ、本能を刺激するものなのだろう。まして「食」という誰もが惹かれ、そして一般人が想像つきやすいボリュームや味といった親しみやすさも、その「すごさ」がシンプルに伝わるものだろう。

 一時の休止期間を経たあとで、『TVチャンピオン』の「大食い選手権」は、2005年に独立した特番『元祖!大食い王決定戦』へとリニューアルして復活をとげた。復活にあたっては、事故を教訓とし、事故防止のため早食いを禁じるなどルールの徹底、事前の健康診断など安全対策を徹底、さらに番組内での一般の人は真似しないようにというアナウンスなどを導入し、誰もが安心して楽しめるコンテンツであることを強く意識した。

『元祖!大食い王決定戦~炎の番外編!!』©テレビ東京

 復活後にはギャル曽根やキング山本(山本卓弥)、魔女菅原(菅原初代・故人)、ロシアン佐藤、アンジェラ佐藤、三宅智子ら、一部は2026年現在も大食い番組や大食い企画で活躍する新たな大食いスターが続々誕生した。

 いっぽうで、赤坂や白田といった第1・第2世代は、大会などには参加しないものの、レジェンド的なポジションでバラエティなどにも呼ばれるようになり、かつての人気キャラぶりを再認識する機会も見られるようになった。こうして番組休止時期に少しずつ広がりを見せていたYouTubeでの大食いと合わせ、現在に続く不動のジャンルの地位を確固たるものとした。

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