『死亡遊戯で飯を食う。』はなぜ考察がはかどる? 美術と記号で“読ませる”アニメ表現

舞台が廃ビルに移った第2話では、参加者に割り当てられた動物シールが考察の的となった。ペンギン、ネズミ、フクロウ、オオカミ、ウマ。これらはキャラの識別記号として機能しつつ、神話や文化に根ざした象徴性も背負えるモチーフであり、各キャラクターの本質を“そう読ませる”仕掛けとして働いているように見える。

面白いのは、これらの動物シールに混じって「幽霊」が存在することだ。1つだけ異質であるため幽鬼とも結び付けたくなるが、筆者としてはむしろ「既に死亡したプレイヤー」を示す符号として読むほうが筋が通ると考えている。幽鬼はウマと対応している可能性が高いからだ。
ペンギンは智恵に対応すると考えられる。彼女は特筆すべき特技を持たないが、要領の良さでゲームを乗り越えてきたキャラクターだ。ペンギンは極地の過酷な環境を集団で生き抜く動物であり、身を寄せ合って厳寒に耐える姿はよく知られているのではないか。

一方で、「ファーストペンギン」という言葉には、天敵がいるかもしれない海に最初に飛び込む勇敢な一羽を指すと同時に、群れが先へ進むための“一羽”が必要になる、という残酷な含意もある。まだ幽霊シールの者以外に脱落者が出ていない今、智恵がその“一羽”に当たるのかはまだわからない。だが、特別な武器がなくとも生存してきた彼女の処世術が、ペンギンに重ねられているのかもしれない。
ネズミは毛糸に対応すると読める。体格の小柄さもあるだろうが、干支の由来として知られる物語では、神様のもとへ向かう競争で牛の背中にこっそり乗り、ゴール直前で飛び降りて一番乗りを果たしたのがネズミだった。この狡猾さ、勝者を見極めて便乗する抜け目なさは、デスゲーム歴6回で「勝つ人間をいち早く見極める」洞察に長けた彼女の立ち回りと重なる。他人を出し抜いてでも生き残るネズミのシールは、彼女の食えない性格を象徴しているようだ。
フクロウは言葉に対応すると考えられる。ギリシャ神話では知恵の女神アテナの聖鳥とされ、大きな瞳で闇を見通すことから洞察力の象徴とされてきた。日本でも「不苦労」の語呂合わせで縁起物として親しまれる一方、不吉さと結び付けられる伝承もある。第2話では地雷によって足を失う展開が描かれたが、その冷静な知性と、死の前触れを体現した存在としての両方を踏まえ、フクロウなのだろう。
オオカミは御城だ。狼はローマ建国の双子を育てた雌狼のように「群れを率いる保護者」である一方、北欧神話の巨狼フェンリルは神々を滅ぼす「破壊者」として描かれることもある。こうした二面性は自ら「私がリーダーをやる」と宣言して仕切ろうとする彼女の気質を表すと同時に、第2話でも垣間見えた独善的な性格が仇となり追い詰められていく展開をも匂わせているように思える。

そして主人公・幽鬼に与えられたのがウマだろう。馬は神話や宗教的イメージの中で、生と死の境界を運ぶ存在として語られてきた。日本でも「絵馬」に表れるように、此岸と彼岸を繋ぐ媒介としての意味を背負う。いわば、デスゲームという地獄から日常へ帰還し続ける幽鬼にふさわしいシンボルだ。さらに「ダークホース」という言葉が示すように、彼女は他のプレイヤー(や観客)にとって予測不能な大穴でもある。
そしてこの「意味を持たされた記号」は、画面内に配置された小道具や演出にとどまらず、作品全体の構造そのものにも及んでいる。その最たる例が、各話サブタイトルに見られる伏せ字表現だ。少なくとも第3話は「In the Name of ----」と示されており、この意匠がシリーズ全体に通底している可能性は高い。
第1話のタイトルは桜坂洋の小説『All You Need Is Kill』やビートルズの名曲を連想させ、「Kill」と補えば命懸けのゲームと直結し、「Love」と補えば、この世界における愛の不在や空虚さと皮肉に響き合う。同様に第3話の「In the Name of ----」も、ウンベルト・エーコの『薔薇の名前』や、宗教的成句「In the Name of God」を想起させながら、そこに何を当てはめるかを観る側に委ねている。伏せ字タイトルもまた、制作者から視聴者への挑戦状なのである。

今後、物語や演出の面で考察の余地がさらに広がっていくのは間違いないが、それと同じくらい注目したいのが、声優陣の演技がこの世界に与える重みである。たとえば第1話では、画面越しにも痛みが生々しく伝播した青井役・本村玲奈の演技に注目が集まったが、台本には「※」記号を用いた叫びの指示が多く書き込まれていた(※2)。叫びはセリフ以上に、その人物の輪郭や限界を露わにする瞬間だ。同じ死の状況に置かれていても、恐怖に抗うのか、諦めに沈むのか、その差異にこそキャラクターの「生」が立ち上がる。毎話入れ替わるキャストが描き出す多様な“絶望”の質感は、本作の残酷さを支えると同時に、観る側の感情を否応なく巻き込んでいく。
希望や突破口が示されるたびに、本作はその意味づけや価値判断を、観る側へと差し戻してくる。本作を流行のデスゲーム作品の1つとして捉えるのか、労働や消費社会を映し出すメタファーとして読むのか、あるいは実験的な絵作りによって新しい視聴体験を提示する映像作品と位置づけるのか。そのいずれもが成立し得る一方で、どれか1つに回収されることはない。タイトルに残された空白と同様に、このアニメが「何であるのか」を定義する作業そのものが、画面の外にいる私たちに委ねられているのだ。
参照
※1. https://webnewtype.com/report/staff/entry-37002.html
※2. https://x.com/shibouyugi_/status/2011385992197050771?s=20
■放送情報
『死亡遊戯で飯を食う。』
TOKYO MX、BS日テレ、ABC テレビ、WOWOWほかにて、毎週水曜23:30〜放送
Netflixほか各配信サイトにて、地上波同時配信
キャスト:三浦千幸(幽鬼役)、丸岡和佳奈(毛糸役)、若山詩音(言葉役)、田辺留依(智恵役)、土屋李央(御城役)
原作:鵜飼有志(MF文庫J『死亡遊戯で飯を食う。』KADOKAWA刊)
キャラクター原案:ねこめたる
監督:上野壮大
シリーズ構成:池田臨太郎
コンセプトアート:hewa
キャラクターデザイン:長田絵里
サブキャラクターデザイン:大塚渓花、小松聡太
プロップデザイン:黒岩園加
色彩設計:桂木今里
美術監督:中村嘉博
撮影監督:近藤慎与
編集:菊池晴子、小野寺桂子
音響監督:小沼則義
音響効果:山田香織
音響制作:ビットグルーヴプロモーション
音楽:松本淳一
音楽制作:日本コロムビア
アニメーション制作:スタジオディーン
OPテーマ:「not Ersterbend」作曲・編曲:LIN(MADKID)
EDテーマ:「祈り」歌:藤川千愛
©鵜飼有志・ねこめたる/KADOKAWA/「死亡遊戯で飯を食う。」製作委員会
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