『かぐや姫の物語』に込められた高畑勲の証言 “かぐや姫”はなぜ今なお語り継がれるのか?
そんな引き算の美学のような『かぐや姫の物語』から13年が経ち、2026年に送り出された山下監督の『超かぐや姫!』は、確かに「かぐや姫」の物語でありながら同時に親とのコミュニケーションに悩む女子高生の生き方や、バーチャル空間なりVTuberなりボーカロイドといったネット文化の最先端にも触れ、情報に溢れて喧噪に満ちた世界で生きていく楽しさと厳しさも描いてみせた作品だ。
都内の進学校に通う17才の女子高生、母親と仲たがいした酒寄彩葉が家からの援助を受けられないまま勉強とアルバイトに追われていたある日、光り輝く電柱を見つけてそこから出てきた赤ん坊を引き取る羽目になって部屋に連れ帰ると、またまく間に大きくなってしまった。まさしく『竹取物語』そのままのイントロダクション。ただし、かぐやは目立つのを嫌がるどころかバーチャル空間「ツクヨミ」でライバーとして活動を始めて、どんどんと人気者になっていく。
目指すのは「ツクヨミ」にトップライバーとして君臨する月見ヤチヨとのコラボレーション。その座を目指した他のライバーたちの戦いに彩葉も巻き込まれ、かぐやとともに繰り広げる「ツクヨミ」でのバトルはとにかくスピーディーで迫力たっぷりで、さすが数々のオープニングでスタイリッシュな映像を手がけてきた山下監督ならではと思わせる。なおかつそこに、「ツクヨミ」でライバーたちによって歌われる楽曲として著名なボカロPたちの作品を入れてきた。「ワールドイズマイン」のようにボカロ世代には感涙の楽曲も登場して、それらに浸った世代を引き付ける。
どうしてかぐや姫は月から地上に降りてきたのか。そしてどうして帰らなければならないのか。そうした問いには割とすっきりした答えは得られるが、その分月からのお迎えとの戦いはレジスタンスとなって壮絶なものとなる。加えて『かぐや姫の物語』のラストよりもさらに驚きの展開を持ってきて、大きな円環が繋がるような感慨をもたらしてくれる。この発見が、155分という長さを気にせず最後まで関心を引っ張り続ける。
余白を作って想像することを求める高畑監督の『かぐや姫の物語』のほうが、過去を描いていることもあって古びず、普遍的な感慨をいつの時代の人にももたらし続けてくるだろう。一方で山下監督の『超かぐや姫!』も、今だからこそ観ておくべき作品として強く心に刻み込まれ、そのまま自身の記憶となって残り続ける。その2本が同時に存在する今はだから、とてつもなく素晴らしい時代だということだ。
◼️放送情報
『かぐや姫の物語』
日本テレビ系にて、1月9日(金)21:00〜23:54放送
※放送枠60分拡大 ※ノーカット
声の出演:朝倉あき、高良健吾、地井武男、宮本信子、高畑淳子、田畑智子、立川志の輔
原案・脚本・監督:高畑勲
脚本:坂口理子
音楽:久石譲
©2013 Isao Takahata, Riko Sakaguchi/Studio Ghibli, NDHDMTK