『ワン・バトル・アフター・アナザー』と『エディントンへようこそ』の共通点とは?

舞台は2020年、ニューメキシコ州の小さな町エディントン。全世界がコロナ禍という未曽有の事態に直面し、この風通しだけは抜群によさそうな田舎町でもロックダウンが実施されるなか、ホアキン演じる保安官ジョーは苛立ちを募らせていた。IT企業の誘致で町の繁栄を図る市長テッド(ペドロ・パスカル)と対立を深めていたジョーは、ある日いきなり次期市長に立候補。両者の諍いはやがて町全体を巻き込んだ誹謗中傷合戦と陰謀論バトルへと発展していく……といったストーリー展開は、なんとなく三船敏郎のいない『用心棒』(1961年)のような構図を思わせる。覇権をめぐって二分した小さな町でのいがみ合いは、間をとりもつ(または互いにけしかける)ヒーローがいれば愉快な騙し合い・バカし合いを交えた活劇としても描けるだろう。だが、アリ・アスターはひたすら滑稽で笑えない風刺劇として、米国社会の「どちらもろくでもない対立構造」を映し出す。その語り口は『ワン・バトル・アフター・アナザー』よりも辛辣で、身もふたもない。

正直これだけだとなかなかツライ作品になっていたかもしれないが、本作は途中から血なまぐさいバイオレンス活劇へと急激に舵を切る。次から次へと積みあがる死体の山、ひたすら悪い方向に転んでいく展開は、確かに『ヘレディタリー/継承』(2018年)『ミッドサマー』(2019年)の監督の仕業だ。この陰惨かつスリリングな後半以降の展開は、『セブン』(1995年)『オクジャ/Okja』(2017年)の撮影監督ダリウス・コンジの本領発揮でもある。
クライマックス、ホアキンが闇夜に包まれた町の真ん中でマシンガンを乱射しまくり、ジョン・カーペンターの『要塞警察』(1976年)よろしく音もなく忍び寄る刺客たちと血みどろの死闘を繰り広げる夜間撮影の見事さは、ぜひとも劇場で堪能してほしい。ケータイ内蔵カメラの使い方もクール。エピローグの皮肉っぷりも、後味の悪さも紛うかたなきアリ・アスター印なのだが、アクション映画としての意外なクオリティの高さは『ワン・バトル・アフター・アナザー』に匹敵するものがある(瞬間沸騰レベルでは、もしかしたら上かもしれない)。

現代アメリカの様相を作家性満点のアクション活劇としてまとめ上げた、同時代に記憶されるべき作品を、両方イキのいいうちに見届けられる機会なんてめったにない。心と懐にゆとりのあるお正月のご予定にぜひどうぞ。
■公開情報
『エディントンへようこそ』
全国公開中
出演:ホアキン・フェニックス、ペドロ・パスカル、エマ・ストーン、オースティン・バトラー、ルーク・グライムス、ディードル・オコンネル、マイケル・ウォード
監督・脚本:アリ・アスター
配給:ハピネットファントム・スタジオ
原題:Eddington/2025年/アメリカ
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公式サイト:https://a24jp.com/films/eddington/
公式X(旧Twitter):https://x.com/A24HPS























