染谷将太、“歌麿”に通じる表現者の魂 初演出のオーディオドラマで得た役者としての新境地

染谷将太、“歌麿”に通じる表現者の魂

2025年は目まぐるしくも充実した1年に

――染谷さんの中で役者の自分と、今回のように作る側に回った自分は切り離されているものですか? それとも地続きにあるものですか?

染谷:そこは完全に切り離されてますね。 まったく違う職種に就いたような感覚です。例えば、シーンを撮り直すときも、自分が演じているとなんとなく「この辺から返したら、やりやすいだろうな」ということが分かるんですが、演出側に回ると途端に分からなくなって、「もうちょっと前からでいいですか?」ってキャストの皆さんに言われることが多くて。やっぱり全然感覚が違うんだなと思いましたね 

――逆に演出の経験が、役者業に与えた影響はありますか?

染谷:自分が役者さんにディレクションするときは、その方の性格や状況も含めて、一番的確な伝え方を模索するんです。その視点を持ったまま演出される側に立つと、今度は逆に監督の考えていることがよく分かって。「監督は今、こういう状況だから、こういう言い方をしたのかな」というふうに言葉だけじゃなく、監督の状況まで含めて受け止められるようになりました

――2025年は『べらぼう』で歌麿を演じながら、オーディオドラマを制作するという稀有な1年だったと思いますが、改めて振り返ってみていかがですか?

染谷:気づいたら、もう終わりだなって感じですね(笑)。2024年の年末から『べらぼう』に合流して歌麿を演じつつ、オーディオドラマの台本を書いて、収録の合間に打ち合わせをして。後半からは同時進行で、両作品の収録と制作を進めていきました。オーディオドラマを収録して、翌日『べらぼう』の収録をして、また翌日は編集室に入って……みたいな。NHKの職員のように編集室に入ってパソコンの前で作業して、そのまま『べらぼう』の支度に入ることもありましたね。途中からあまり記憶がないくらい目まぐるしかったですけど、おかげさまで充実した時間を過ごさせていただきました。

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――『べらぼう』の収録とオーディオドラマの制作を同時に進める中で、同じ表現者として歌麿に共鳴する部分はありましたか?

染谷:日常の中で見たもの、感じたことを絵に落とし込んでいく歌麿ですが、自分も仕事とプライベートの両方で経験したことが自然と表現にのっていくタイプなので、そのあたりは似ているところがあるのかなと思います。

――ご自身で一から作ったものが、もうすぐ皆さんに届くというのはどのような感覚ですか?

染谷:やっぱりドキドキしますよね。 多分、過去一エゴサすると思います(笑)。厳しい意見もお待ちしてます。いかようにでも聴ける作品にしたつもりなので、「こういう作品なのかな?」と自由に想像しながら聴いてほしいですし、逆に「よくわからなかった」という感想も全然ありだと思っていて。それも含めて作った部分もあるので、皆さんの感想がすごく楽しみです。 

――染谷さんが意図しているものとリスナーの解釈が違っても、それは構わないということでしょうか?

染谷:そうですね。全然違ってもいいと思っています。一応自分なりのテーマとメッセージはあるんですが、それを聴く人に押し付けたくなくて。今回はあえて明言せず、抽象的な表現や煙に巻くようなセリフで“モザイク”をかけています。そのモザイクの先には一体何があるんだろうという探究心に繋がってくれたら嬉しいですね。

■放送情報
特集オーディオドラマ『だまっていない』
NHKラジオ第1にて、12月29日(月)22:05~22:55放送
出演:渡辺大知、菊地凛子、川瀬陽太、津田健次郎
スペシャルサンクス:べらぼう演出・制作部の皆さん、鈴木奈穂子アナウンサー
作・演出:染谷将太
音楽:渡邊琢磨
制作統括:石村将太
技術:奥村玲子
音響効果:岸優美子
写真提供=NHK

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