2025.12.12 08:00

『汚れた血』などレオス・カラックス初期作が4Kレストア版に　2026年1月より順次公開へ

文＝リアルサウンド映画部

　レオス・カラックス監督の『汚れた血』が2026年1月10日から、『ボーイ・ミーツ・ガール』が1月31日から、『ポーラ X』が2月21日から、それぞれ4Kレストア版としてユーロスペースほか全国で劇場公開されることが決定。あわせて3作品のポスタービジュアルとシーン写真が公開された。

　カラックス監督の長編第2作目となる『汚れた血』は、1986年度ルイ・デリュック賞をはじめ、第37回ベルリン国際映画祭のアルフレッド・バウアー賞（主に若手監督に与えられる銀熊賞、初回受賞作）、セザール賞3部門ノミネート（主演女優賞、新人女優賞、撮影賞）と高く評価された。愛のないセックスで感染する病気が蔓延する近未来のパリ。父の不可解な死の後、アレックス（ドニ・ラヴァン）は父の友人マルク（シェル・ピコリ）から犯罪に誘われ、マルクの愛人アンナ（ジュリエット・ビノシュ）に魅かれてゆく.…..。

　ドニ・ラヴァンが主人公アレックスを演じ、フィルムノワールの設定と結ばれない男女の三角関係を描いた。マルクの情婦でアレックスの憧れの女となる美しいヒロイン・アンナにはジュリエット・ビノシュ。本作の演技でシュザンヌ・ビアンケッティ賞を受賞した。

　公開された『汚れた血』のポスタービジュアルは、鈍色の雲で覆われた空の下、アンナが飛行機のように手を広げ疾走する名シーン。ポスターには“血”の赤が印象的にあしらわれ、一途なアレックスを想いながら重力に逆らい滑走路を飛び立とうと走るアンナの姿が写し出されている。

　あわせて公開された場面写真では、ビノシュが疾走するカットをはじめ、アンナとアレックスの2ショットや、歳の離れたマルクを愛し自分には振り向いてくれないアンナを見つめるアレックスの姿が切り取られている。

　カラックス監督の初長編作となる『ボーイ・ミーツ・ガール』は、彼が22歳のときに監督したもの。カンヌ映画祭ではヤング大賞を受賞し、1985年度シネデクヴェルト（映画発見）賞も受賞した。河岸のトマとアレックスへと、別れる者たちの連鎖で物語が進む。ラヴァンとカラックスの出会いから生まれたアレックスは形を変えながら『ポンヌフの恋人』まで3作の主人公となる。また、本作でカラックスとの仕事で名を知られることになる撮影のジャン=イヴ・エスコフィエと出会った。

　公開された『ボーイ・ミーツ・ガール』のポスタービジュアルは、アレックスとミレーユがパーティーで出会い、互いの恋について語らうシーンから切り取られている。アレックスが恋に落ちたミレーユとの出会いを封じ込めたビジュアルとなっている。

　あわせて公開された場面写真では、アレックスとミレーユが言葉を交わした初めての出会い、電話ボックスでミレーユに電話をかけるアレックスの姿が穴の空いたガラス窓から伺える不可思議なカットなどが描かれている。

　『ポーラ X』は『ポンヌフの恋人』から8年後に、カラックスが監督した作品。19世紀半ばのアメリカ小説、ハーマン・メルヴィルの『ピエール』の映画化で、タイトルは小説の仏題「Pierre ou les ambiguité（ピエール、あるいは曖昧なるもの）」の頭文字Polaに謎のXをつけた暗号だった。カラックスは全作品の脚本を書いてきたが、小説の映画化は本作が初。原作『ピエール』は『白鯨』の翌年にメルヴィルが熱狂のうちに書き上げた長編で、発表当時あまりに背徳的で虚無的な内容のため「メルヴィル発狂す」と報じた新聞まであった。語り手メルヴィルとピエールが一体化していくような特異な怪物的作品で、カラックスは18歳の頃に読み「自分のために書かれたかのような奇妙な感覚」を抱いたという。

　ストーリーや役名、金髪ルーシー（本作ではフランス読みのリュシー）と黒髪イザベルの対比も原作通りだが、現代のパリに設定を変え、二人の絶望の深み、そしてその果てにあるあらゆる愛憎あらゆるしがらみからの超越を、壮絶なロマンティシズムの物語として描いた。主演のギヨーム・ドパルデューと、カラックスのパートナーでもあったカテリーナ・ゴルベワが困難な役柄を演じ、ピエールが姉と呼ぶ母をカトリーヌ・ドヌーヴが演じる。

　公開されたポスタービジュアルは、闇を纏い憂いを湛えたイザベルと、黄金色の田園地で彷徨うピエール、異なる世界にいたふたりを象徴的に捉えたもの。「破滅に至る愛」という、運命に翻弄され、絶望へと吸い込まれていくふたりを予見する言葉が添えられたビジュアルとなっている。

　あわせて公開された場面写真は、イザベルがピエールの頭を膝に抱き抱え、奈落に落ちていくふたりが互いを癒すように体温を求め合うカット、街へ来たイザベルとピエールが群衆のなかで肩を並べて歩くシーン、そして、着飾り正装したパーティー会場によれたシャツで怒りの表情を湛え乗り込むピエールの姿が切り取られている。