“爆発エンタメ”がスクリーンを席巻 『爆弾』『チェンソーマン レゼ篇』はなぜ刺さる?

その一方で劇場版『チェンソーマン レゼ篇』は、まったくベクトルの異なる爆発エンタメだ。というのも同作は『爆弾』とは対照的に、ド派手な爆発に伴う快感をとことん突き詰めている。

大まかなストーリーとしては、公安対魔特異4課のデビルハンターとして働くデンジが謎の少女・レゼと出会い、切ない恋模様を繰り広げるという内容。その一方で物語の後半は、自由自在に爆発を操る能力をもった“ボム”こと「爆弾の悪魔」とのバトルが大きな見せ場となっている。
足の裏を爆発させて空を舞ったかと思えば、身体を爆発させた反動で強力なパンチやキックを放ってみせるなど、その戦いは爆発シーンのオンパレード。しかも戦闘描写がきわめてイマジネーション豊かで、指パッチンで飛ばした火花から大爆発を巻き起こしたり、上空から爆弾をまき散らして眼下を爆撃したり、大量のミサイルで色とりどりの爆発を巻き起こしたりと、ありとあらゆる爆破シーンが描かれていく。

疾走感のあるカメラワークも含めて、爆発に伴う快楽を五感で堪能させてくれるのが同作の魅力。いずれも実写では再現不可能な場面ばかりなので、アニメならではの表現の極致と言ってもいいだろう。
こうした表現を成立させるために、アニメーション制作を担当したMAPPAが圧倒的な作画リソースを注ぎ込んでいたことにも言及しておきたい。劇場アニメでもそうそう見られない作画レベルの高さで、同時期公開の『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』と比べても遜色ないほどだ。

また同作はIMAXなどのラージフォーマット上映に加えて、座席の振動などで没入体験を演出するMX4D・4DXでの上映も実施されているが、そうした体験重視の鑑賞スタイルとこの上なく相性がいい作品だった。実際に映画館でその迫力を何度も味わいたいというリピーターが続出したからこそ、規格外の興行収入につながったのではないだろうか。
あらためてまとめると、『爆弾』がリアルな爆破描写によって観客にスリルを与える一方、劇場版『チェンソーマン レゼ篇』は快感に振り切った爆破描写を売りにしている印象だ。とはいえどちらの作品も、映画館で観ることに特別な意味を見出せるという点は共通している。
なお、2024年には監督・塚原あゆ子、脚本・野木亜紀子のタッグによる映画『ラストマイル』が公開されてヒットを記録したが、こちらも爆発描写が印象的な作品。巨大物流倉庫から送り出された荷物によって、日本中で恐怖の連続爆破事件が起きるという筋書きで、爆弾というモチーフを通じてスクリーン越しに観客の感情を揺さぶってくる作りとなっていた。
このように爆発エンタメが映画界で年々存在感を増しているという事実は、体験を重視した映画が世間で求められていることを示唆しているのかもしれない。『爆弾』と劇場版『チェンソーマン レゼ篇』はまだ上映中なので、ぜひ映画館ならではの体験を堪能してほしい。
参照
※ https://www.youtube.com/watch?v=IgQS5v4P_xw
■公開情報
劇場版『チェンソーマン レゼ篇』
全国公開中
キャスト:戸谷菊之介(デンジ)、井澤詩織(ポチタ)、楠木ともり(マキマ)、坂田将吾(早川アキ)、ファイルーズあい(パワー)、高橋花林(東山コベニ)、花江夏樹(ビーム)、内田夕夜(暴力の魔人)、内田真礼(天使の悪魔)、高橋英則(副隊長)、赤羽根健治(野茂)、乃村健次(謎の男)、喜多村英梨(台風の悪魔)、上田麗奈(レゼ)
原作:藤本タツキ『チェンソーマン』(集英社『少年ジャンプ+』連載)
監督:𠮷原達矢
脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン:杉山和隆
副監督:中園真登
サブキャラクターデザイン:山﨑爽太/駿
メインアニメーター:庄一
アクションディレクター:重次創太
悪魔デザイン:松浦力/押山清高
衣装デザイン:山本彩
美術監督:竹田悠介
色彩設計:中野尚美
カラースクリプト:りく
3DCG ディレクター:渡辺大貴、玉井真広
撮影監督:伊藤哲平
編集:吉武将人
音楽:牛尾憲輔
配給:東宝
制作:MAPPA
主題歌:米津玄師「IRIS OUT」(Sony Music Labels Inc.)
エンディングテーマ:米津玄師、宇多田ヒカル「JANE DOE」(Sony Music Labels Inc.)
©2025 MAPPA/チェンソーマンプロジェクト ©藤本タツキ/集英社
公式サイト:https://chainsawman.dog/
公式X(旧Twitter):@CHAINSAWMAN_PR





















