宇野維正の映画興行分析

『TOKYOタクシー』好発進! 東宝作品以外がトップに立つのは約半年ぶり

 11月第4週の動員ランキングは、山田洋次監督、倍賞千恵子&木村拓哉出演の『TOKYOタクシー』が初登場1位。オープニング3日間の動員は21万4000人、興収は2億9300万円。祝日を含む4日間の動員は29万7400人、興収は4億300万円。東宝配給(共同配給含む)以外の作品が週末動員ランキングのトップに立つのは6月第3週の『リロ&ステッチ』以来だから、実に約半年(23週)ぶりのこと。

 『TOKYOタクシー』は、2022年のフランス映画『パリタクシー』を原作としているが、共同脚本も手がけている山田洋次の作品としか言いようがない、これまで同監督の作品に親しんできた観客にとって味わい深い仕上がりとなっている。主演は、山田洋次の代表作『男はつらいよ』シリーズで寅次郎の妹さくらを50年間にわたって演じてきた倍賞千恵子。共演した木村拓哉は、2006年の『武士の一分』以来、約20年ぶりとなる山田洋次作品への出演。木村拓哉といえば、映画俳優というよりテレビドラマ俳優というイメージが強い人も多いかもしれないが、その『武士の一分』以来、日本映画でメインロールの一端を担った作品はすべて週末動員ランキングで1位を記録していて、今作でもその記録が途絶えなかったことになる。

 2位の『爆弾』は公開4週目にして前週よりワンランクアップ。週末3日間の成績は動員15万5000人、興収2億3100万円。作品の口コミも効いているのか興収も前週から横ばいで、公開から25日間の累計動員は135万7600人、累計興収は19億2100万円となっている。

 また、前週9位の『国宝』も7位にランクアップ。公開から172日間の累計動員は1231万1600人、累計興収は173億7700万円。既に各メディアで報じられているように、22年前の『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』の興収173.5億円という記録を破って、実写日本映画の歴代ナンバーワンの座についた。

 『TOKYOタクシー』の初登場1位をアシストしたのは、細田守監督の新作『果てしなきスカーレット』の不発だ。初登場3位というランキング、オープニング3日間の興収2億1000万円という数字だけ見れば凡庸な数字に見えるかもしれないが、細田守の過去作の成績、今作の上映スクリーン数や上映回数、地上波での過去作放送なども含めた宣伝の量などをふまえれば、これは歴史的な興行的失敗と言っていいだろう。その結果は、現在の国内オリジナルアニメーション作品が置かれている状況を象徴する出来事でもあるので、次週じっくりと分析する予定だ。

■公開情報
『TOKYOタクシー』
全国公開中
出演:倍賞千恵子、木村拓哉、蒼井優、迫田孝也、優香、中島瑠菜、神野三鈴、イ・ジュニョン、マキタスポーツ、北山雅康、木村優来、小林稔侍、笹野高史
監督:山田洋次
脚本:山田洋次、朝原雄三
原作:映画『パリタクシー』(監督:クリスチャン・カリオン)
配給:松竹
©2025映画「TOKYOタクシー」製作委員会

『今週の映画ランキング』(興行通信社):https://www.kogyotsushin.com/archives/weekend/

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