『ばけばけ』“トキ”髙石あかりが2つの家庭の大黒柱に “自分を捨てた”覚悟が胸を打つ

『ばけばけ』トキの“自分を捨てた”覚悟

 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』第35話では、トキ(髙石あかり)が松野家、雨清水家の両家族を養っていくこととなる。どちらが“生み”とか“育て”などは関係なく、トキにとっては両家ともに大切な家族で、自分が守らなければいけない。その使命感からの強い覚悟が伝わる回だ。

 ヘブン(トミー・バストウ)がトキをラシャメンとしてではなく、ただの女中として雇っていたことが分かった前回。その帰り道に、司之介(岡部たかし)、フミ(池脇千鶴)、勘右衛門(小日向文世)は物乞いとなったタエ(北川景子)を見てしまう。

 手元に残った九円を返しに松野家を訪ねてくる三之丞(板垣李光人)を交え、トキが家族に隠していた秘密がすべて明るみになっていく。最初にきっかけとなるのは、トキの「あの仕事を引き受けたのもうちの借金のためではなく、おば様のあのお姿を見てしまったからです」という三之丞への言葉。それを聞いてフミは「そげかね」と落胆しながら、井戸端へと出ていく。

 ここでトキが弁明するのは、生みとか育てなどではなく、全ては家族のため。誰が物乞いになっていてもトキは同じことをする覚悟だった。女中の話を断りながらも、結局は引き受ける道にあったとトキは必死に訴える。しかし、それでも三之丞は「おトキの家族から外してほしい」と、自分の力で母を救いたいと告げる。

 意地を張る三之丞にトキは現実を突きつける。冬が到来すれば待っているのは死。格がどうこう言っている場合ではない。観ていて胸にくるのはトキの「自分を捨てたの」というセリフだ。トキは自分を捨て、家族のためにラシャメンになろうと決意した。その瞬間は、タエが物乞いとして頭を下げるのを見たとき。タエが自分を捨てた瞬間だった。そうまでしてでも目の前にあるチャンスを捕まなければいけなかった。三之丞もタエやトキと同じようにして、自分を捨てて、九円を掴みとる。

 フミが三之丞を叱りつける光景も、心に残った。傳(堤真一)とタエからほとんど何も教わらずに育ってきた三之丞は、近しい家族から叱られたのはこれが初めてなのではないかと思う。相手にされもしなかった三之丞が叱られることで、それは厳しくも自分を思ってくれていると感じる場面でもある。視聴者から多くのヘイトを集めていた世間知らずの三之丞が少しづつ改心していく姿が想像できた。

 どさくさに紛れて牛乳配達の仕事を辞めようと思っていた雰囲気満載の司之介に笑わせられながら、翌朝トキは勘右衛門から授かった木刀を帯に差し、ヘブンの元へと出勤していく。それは武士の娘として、トキがヘブンに寄り添おうとしている表れ。恐怖を感じ強張った表情のトキはもういない。

髙石あかり、『ばけばけ』トキは自分自身? 「なんで私の思っていることを言うんだろう」

2025年度後期(大阪制作)NHK連続テレビ小説『ばけばけ』に出演している髙石あかりのインタビューコメントが公開された。  朝…

 第8週「クビノ、カワ、イチマイ。」からは、トキの女中としての仕事が本格的にスタート。髙石あかりがコメントしている「ビア(ビール)」や「スキップ」のエピソードを読むに、さらに笑える物語が展開されていく予感がする。

■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK

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