長澤まさみが語る俳優としての美学 「自分に対してすごく期待している自分がいる」

長澤まさみが語る俳優としての美学

 興行収入17億円を突破した主演映画『ドールハウス』での好演も記憶に新しい長澤まさみが、『MOTHER マザー』以来のタッグとなる大森立嗣監督と次なる挑戦に挑んだ。時代劇映画初主演となる『おーい、応為』で演じたのは、日本を代表する浮世絵師・葛飾北斎の娘で、師弟関係でもあった葛飾応為。その役作りの背景から、長澤まさみという俳優の“核”に迫った。

「自分に対してすごく期待している自分がいる」

ーー『おーい、応為』は意外にも長澤さんにとって初の時代劇映画主演作となります。

長澤まさみ(以下、長澤):そうですね。台本をいただいて、応為という人物に対してすごく興味を持ったんです。応為と彼女の父親である北斎との関係性、2人の親子の物語というところに心惹かれました。

ーー長澤さんは応為について、「知れば知るほど味わい深い人物」と評されていましたね。

長澤:応為が描かれたドラマを過去に観たことがあって、「こんなにおもしろい人がいたんだ」と思っていたんですよね。実際に応為がどんな人物だったのかを調べていく過程で、彼女のいろいろな面を知ることができました。応為は絵を描くのが上手なことで有名ですが、私も絵を鑑賞するのが好きなので、とても楽しそうな役だなと思いながら取り組みました。

ーー出演を決めた背景として、大森監督とタッグを組んだ前作「『MOTHER マザー』での反省点をこの役に注ぎ込みたかった」と語っていたそうですが、『MOTHER マザー』での反省点というのは具体的にどういうものだったのでしょうか?

長澤:これは私自身の性格的な問題だと思うのですが、『MOTHER マザー』に限らず、どの作品でどういう役を演じても、あとで振り返ると「もう少しできたかも」と必ず思ってしまうんですよね。自分に対してすごく期待している自分がいるというか……。それは自分の“気づき”だったり“やる気”にも繋がっていくので、毎回反省を活かしながら常に成長することができればいいなと思っています。

ーー今回の『おーい、応為』でも反省点はあった?

長澤:ありますね(笑)。ただ、すごくいい物語で、永瀬(正敏)さんと私が本当に親子のように見えたので、心がほっこりしました。自分でも「いいな、この親子」と思えましたし。

ーー北斎役の永瀬さんとの“親子”のやりとりはずっと観ていたいほどでした。永瀬さんとは意外にも初共演になるんですよね。

長澤:川村元気監督の『百花』という同じ作品には出ているのですが、共演シーンがなかったので、一緒にお芝居をするのは今回が初めてでした。今回は永瀬さんが作ってくれた現場の空気感が大きくて。永瀬さんと一緒に演じることができたからこそ、今回の応為が生まれたような気がしていて、永瀬さんにはものすごく感謝しています。

ーー大森監督の現場は撮影がかなりスピーディーだとよく聞きます。

長澤:早いですし、あまりテイクも重ねないので、やっている身としてはすごく怖くて(笑)。最初は頑張って喰らいついていかなきゃという思いがあったんですけど、いざ撮影が始まってしまうと、頭で考えることをやめたほうがいいなと思って、自分から手放した感覚がありました。そのおかげでだんだんいい方向に向かっていけた気がして、結果的にとてもいい状態が作れたと思っています。

ーー今から200年前を生きた応為ですが、“カッコいい女性”として描かれていたのが印象的でした。

長澤:着物の着こなしだったり、髪型だったり……当時としてはああいう女性が珍しかった反面、「江戸は粋だったら許される」という文化もあったと思うんです。閉鎖的に見えて、実は自由なところもあったんじゃないかなって。それは現代の女性にも通じるところがあると思いますし、自分で生き方を選ぶからこそカッコいいんだと思います。

ーー長澤さんにもカッコいいイメージがあるので、そういう意味でも応為とリンクする部分を感じました。

長澤:応為のような“潔さ”はあるかもしれませんが、私ってカッコいいのかな……(笑)。現場ではテキパキしていますが、本当の性格はすごく子どもっぽくて、“無邪気”だとよく言われるんです。

ーーそうなんですね。“役のイメージ”もあるかもしれません。

長澤:それはあると思います。“役を演じる”と言っても、自分の中にある多面的な部分の一部が、必ずどこかに注がれていると思うので。

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