『ばけばけ』“傳”堤真一の死が“トキ”髙石あかりの転換点に “喜劇”を貫く朝ドラの新機軸

『ばけばけ』“傳”堤真一の死が転換点に

 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』第3週を振り返ると、恐ろしくも、寂しくて切ない、それは怪談のようだった。銀二郎(寛一郎)からトキ(髙石あかり)、さらに傳(堤真一)へと語られた怪談「鳥取の布団」がまさにその悲しげな雰囲気を纏っている。

 第15話は傳がこの世を去り、トキが自身の出生の秘密を知る、序盤におけるターニングポイントと言える回だ。トキが雨清水家の子供であることは、三之丞(板垣李光人)がトキだけでなく、傳やタエ(北川景子)がいる工場で暴露してしまう。

 観ていてハッとするのは、トキが「おば様。お医者様は?」と傳の容態を心配することで、咄嗟に話を逸らすこと。当然、タエもトキが松野家に養女として引き渡した実の子であることを知られまいと、トキの話に乗る。そうすることで、三之丞の「手放した分いとおしくなるのなら、だったら私もよそで育ちたかったです」というセリフがより一層切なく響く。

 どう足掻いても無視できない局面まできたトキは、自身が雨清水家の子供ではないかと自然と気づいていたと明かす。傳はタエと目を合わせ、気力を振り絞り、「お前はわしとおタエの子ではない。松野司之介と松野フミの子じゃ。産まれたときから、そしてこれからも。ず〜っと」と告げる。それが傳にとって最期の言葉となった。トキは傳を実の父親であることを察した上で自ら看病していたことになるが、傳もまたトキの“おじ様”として最期まで居続けた。そのことが、傳が信念を貫き通すことであり、これからも松野家のトキであることに変わらないというメッセージになっている。

 人一倍の愛情を注いでくれたもう一人の父の死。大好きな怪談も受け入れられない、ぐちゃぐちゃの感情を「取り乱したい」と表現するトキ=脚本のふじきみつ彦が素晴らしい。夫婦水入らずの時間だけでなく、一人の時間すらも松野家の長屋にはない。遊郭の灯りがほんのり届く長屋の井戸端に立つトキは、「ふう〜」と顔を上げ、夜空に目を向け、誤魔化すように瞬きをする。そこに寄り添ってくれたのがサワ(円井わん)だった。髙石あかりがSNSで大好きなセリフに挙げている「上手に取り乱せちょるよ」からも感じられるように、『ばけばけ』は悲劇ではなく、喜劇を描いているということが、改めて朝ドラとしても斬新に感じられる。

 第4週から、舞台は東京へ。雨清水家のその後も気になるところではあるが、『あさイチ』の“朝ドラ受け”で博多華丸が触れていた通りに“国宝”こと吉沢亮がいよいよ登場。トキの後の夫であるレフカダ・ヘブン(トミー・バストウ)と松江の人々との架け橋となる英語教師・錦織友一を吉沢が演じる。

■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK

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