北村有起哉が“憎めない父親像”を体現 『小さい頃は、神様がいて』“岡田惠和らしい”幕開けに

小さい頃は、神様がいると信じていた。けれど、大人になった今でも、まだ信じているだろうか?
フジテレビ木曜劇場『小さい頃は、神様がいて』が幕を開けた。脚本を手がけるのは、『最後から二番目の恋』(フジテレビ系)、『姉ちゃんの恋人』(カンテレ・フジテレビ系)など、人生の可笑しさを愛おしむ筆致で知られる岡田惠和。『最後から二番目の恋』を思わせるような温度の中に、少しだけ“現代の不器用さ”を混ぜた、まさに岡田作品らしい初回となった。主演の北村有起哉と仲間由紀恵が演じるのは、どこにでもいる夫婦。けれど、その日常の奥に、忘れられない約束が眠っている。

舞台は東京郊外の3階建てマンション「たそがれステイツ」。1階には慎一(草刈正雄)とさとこ(阿川佐和子)の熟年夫婦が住む。家事も地域活動も完璧な慎一と、そんな夫に冷めた目を向けるさとこ。暮らしのペースが噛み合わない2人の距離感が、妙にリアルだ。2階に住むのは、奈央(小野花梨)と内気な志保(石井杏奈)のカップル。家具のない部屋にテントを張り、寄り添う姿はささやかだけど確かな幸福のかたち。そして3階には、食品会社に勤める渉(北村有起哉)、主婦でありながらパートを続ける妻・あん(仲間由紀恵)、映画監督を志す大学生の娘・ゆず(近藤華)が暮らす。息子の順(小瀧望)は独立し、消防士として働いている。どこにでもあるような家族のかたちに見えるが、そのバランスはすでに少し傾いている。

19年前、まだ若かった渉とあんは何気なくこう約束した。“子どもが20歳になったら離婚しよう”。渉はその言葉をすっかり忘れて、相変わらずマイペースに生きている。一方、あんはその約束を“唯一の支え”にしてきた。2人の間に流れる静かな温度差は、言葉よりも生活の端々で見えてくる。食後のコーヒーを丁寧に淹れるあんの手元。リビングのテーブルを片付けもせずに出勤する渉。何も起きていないのに、もう何かが終わりかけている。

台風が迫る夜、渉は住人たちを小倉家に避難させることを思いつく。慎一夫妻、奈央と志保が集まり、テーブルの上には志保の手づくりナチョス。笑いながら自己紹介を交わす時間は、まるで即席のホームパーティー。肩書きも立場も違う人たちが“誰かの家”に集まる、その奇跡のような偶然がこの作品のやさしさを象徴している。夜が明け、慎一とさとこが小倉家の2人を羨ましそうに見ていると、渉は「昔、子どもが20歳になったら離婚するって言ってたんですよ」と軽口のように言う。だが、この一言が物語を大きく揺るがすことになるのだ。

その夜、あんはついに切り出す。「生きてるんだけど、あの約束」。スマホには“離婚まで54日”のカウントダウン。これが、2人の物語の始まりだ。第1話に派手な展開はない。けれど、会話の一つひとつが生活の匂いを帯びていて、どこか懐かしい。北村有起哉の芝居は、どこか抜けているが憎めない父親像を軽やかに体現し、仲間由紀恵は抑えたトーンの中に確かな決意をにじませる。2人の表情のコントラストこそ、本作の温度そのものだ。岡田惠和の脚本が描く“人の間”の呼吸が、ここにも確かに生きている。

“離婚まで54日”という期限は、終わりのようでいて、たぶん始まりでもある。神様がいるかどうかなんて、誰にもわからない。けれど、誰かと生きるということは、きっとそれに少し似ている。
■放送情報
『小さい頃は、神様がいて』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:北村有起哉、小野花梨、石井杏奈、小瀧望、近藤華、阿川佐和子、草刈正雄、仲間由紀恵
脚本:岡田惠和
主題歌:松任谷由実「天までとどけ」(ユニバーサル ミュージック)
音楽:フジモトヨシタカ
演出:酒井麻衣
プロデュース:田淵麻子
制作プロデュース:熊谷理恵、渡邉美咲
制作協力:大映テレビ
制作著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
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