千鳥 大悟を主演に抜擢した是枝裕和監督の眼差し 『箱の中の羊』で期待される“クセの強さ”

千鳥 大悟を抜擢した是枝裕和監督の眼差し

 日本の映画界に、いや、世界の映画シーンに、思いがけぬニュースが舞い込んだ。大人気お笑いコンビ・千鳥の大悟が、映画初主演を務めることが発表されたのだ。しかもなんと、あの是枝裕和監督の最新作で、タイトルは『箱の中の羊』。SFテイストのヒューマンドラマであり、綾瀬はるかとのダブル主演なのだという。これはビッグニュース。お茶の間で幅広い世代から愛される大悟は、作品の看板を背負う者としてどのような表情を見せてくれるのだろうか。

是枝裕和監督の新作映画『箱の中の羊』2026年公開決定 主演は綾瀬はるか&千鳥 大悟

是枝裕和が原案・監督・脚本・編集を務めるオリジナル映画 『箱の中の羊』が、2026年にギャガ配給、東宝配給協力で全国公開されるこ…

 是枝監督による『箱の中の羊』の舞台は、そう遠くない未来。ある夫婦がヒューマノイドを息子として自宅に迎え入れるところから物語がはじまる。

是枝裕和

 本作の企画の出発点は、最新のテクノロジーで“死者を蘇らせる”という発想かららしい。AIが凄まじいスピード感で進化し続ける昨今、中国で“死者の蘇り”のビジネスが人気だということに是枝監督は着目し、「日本でも起きる可能性がある」と考えて動き出したのだという。「テクノロジーの進化と人間の内面的なものが衝突することに対する賛否についても題材として興味を持ちました」と語っている。

 そんな“家族の物語”で主演を務める大悟が演じるのは、工務店の二代目社長・甲本健介。ヒューマノイドを息子として迎え入れることになった建築士の甲本音々(綾瀬はるか)の夫である。

 大悟といえば、数々のバラエティ番組でMCを務めてきた存在だ。番組内で披露する少し破天荒なキャラクターとチャーミングな笑顔は、彼のパブリックイメージとして広く浸透しているだろう。これまでに『漫才ギャング』(2011年)や『Zアイランド』(2015年)、『OUT』(2023年)といった品川ヒロシ監督の映画に出演しているが、いずれもジャンル性の強い作品だ。大悟のように非常に際立った個性の持ち主だからこそ、作品の世界観にハマることができた側面は大きいと思う。白石和彌監督が手がけた『ひとよ』(2019年)はとある家族に焦点を当てたヒューマンドラマだったが、大悟が演じていたのは現実世界ではなかなかお目にかかることのできないタイプのチンピラだった。大悟本人の持つ“クセの強さ=個性”がバツグンにハマっていたものである。

破天荒キャラの先にある、大悟の“俳優”としての姿

 SF要素があるとはいえ、『箱の中の羊』はヒューマンドラマだ。しかも極めてシリアスなテーマを扱った作品になるのは間違いない。ドラマ作品とトーク番組を織り交ぜた『トークサバイバー!〜トークが面白いと生き残れるドラマ〜』(Netflix)でも“主演”を務めている大悟だが、背負うものがまるで違う。私たちが目にしたことのない、想像を遥かに超えた大悟の表情が見られるのではないだろうか。

 是枝監督は俳優・大悟について、「存在感があり、歩き方が独特で、人間味があってすごくいい顔をされています。70年代の日本映画界にいた俳優さんのような顔だなと」と語っている。1970年代といえば、『仁義なき戦い』シリーズや『トラック野郎』シリーズが生まれた時代。たしかに、あの頃の映画の中に大悟がいたとしても、不思議ではない気がする。いまの時代にはちょっと珍しいタイプのタレントだ。

 さらに是枝監督は「芸人さんやミュージシャンには勘が良く、間合いの取り方がうまく、掛け合いのお芝居が上手な方が時々いらっしゃいますが、大悟さんはまさにそうでした。勘が当たりました」と、大悟と組んだことで得た手応えについても語っている。(※)是枝監督は主演の柳楽優弥にカンヌ国際映画祭の最優秀主演男優賞をもたらした『誰も知らない』(2004年)など、子役の演出に定評のある映画作家。大悟は現場にて、子役への演出法が自分に使われたことを明かしている。思えば私たちの知る大悟とは、まるで子どものような存在ではないだろうか。自身の置かれたシチュエーションを心から楽しんでいるのが、いつも画面をとおして伝わってくる。彼の持つあの一面こそが、是枝作品にハマりそうだ。世界の映画シーンに、千鳥の大悟が躍り出る。

参照
https://realsound.jp/movie/2025/09/post-2170959.html

■公開情報
『箱の中の羊』
2026年全国ロードショー
出演:綾瀬はるか、大悟(千鳥)
原案・監督・脚本・編集:是枝裕和 
配給:ギャガ
配給協力:東宝
製作:フジテレビジョン、ギャガ、東宝、AOI Pro.  
©2026「箱の中の羊」製作委員会
公式サイト:gaga.ne.jp/hakononakanohitsuji
公式X(旧Twitter):@Hakohitsujifilm

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