『放送局占拠』“武蔵”櫻井翔ד大和”菊池風磨の因縁は終わらない 続編を示唆するラストに

“傀儡子”の正体を明らかにするため、奄美(戸次重幸)のデスクを探った武蔵(櫻井翔)は、そこでなにかを発見。ところがその矢先、手を組んでいたはずの大和(菊池風磨)からカッターナイフを突きつけられてしまう。一方、“般若”こと伊吹(加藤清史郎)たち“妖”のいるスタジオで、人質のひとりである沖野(片岡礼子)は屋代(高橋克典)が傀儡子だと証言する。しかし同じ頃、“がしゃどくろ”こと安室流華(瞳水ひまり)に撃たれた屋代は、裕子(比嘉愛未)の処置もむなしく命を落とすのだ。
『放送局占拠』(日本テレビ系)は9月20日の放送で最終話を迎えた。占拠犯たちの素顔と占拠の目的がひと通り明らかにされた後、さらに大きな計画が見え、黒幕――今回でいえば“傀儡子”だ――の正体へとたどり着く。そしてもちろん、最終的には主人公である武蔵、すなわち警察側が勝利を収め、占拠犯たちはいとも容易く制圧される。これまでの『大病院占拠』(日本テレビ系)と『新空港占拠』(日本テレビ系)と同じ、『占拠』シリーズのお家芸ともいえる展開のわかりやすさは、終幕のたたみかけるような伏線回収と相まって程よいスピード感と緊張感を発生させる。

そういった意味で『占拠』シリーズの強みは、最終話に“きちんと見どころが集約されている”ことだといってもいいだろう。特に今回目を見張るものがあったのは、傀儡子の正体(あえてここでは伏せておくが)と、その人物が暗躍してきた内容が明らかになった後の展開。妖の本当の狙いが「指先ひとつで人が死ぬ重みを理解していない」視聴者であるとわかり、傀儡子の処遇をテレビの機能を使った“視聴者投票”に委ねる一連である。

現実世界においても顕著になっている処罰感情の高まりと、私刑を肯定する風潮。またそれらに付随するようにして流布されるあらゆる虚偽の情報に真実が呑まれてしまうことへの警鐘。これらが今作のテーマというわけだ。テレビが“オールドメディア”と揶揄され信頼されなくなっているなかで、テレビ=真実だと一元的に見せず、傀儡子によってテレビで流れる情報が操作されていること、またテレビから流される“嘘の情報”で翻弄される視聴者を描いた点は非常に興味深い。

また、視聴者投票の締め切りが近付くなかで、なんとしても“妖による処刑”が“法による処罰”を上回ることを阻止するため、自らカメラの前に立ち「もう一度だけ考えてほしい」と呼びかける武蔵。この言葉で“法による処罰”の票がぐんと伸びるのではなく、一度“妖による処刑”に票を投じた者たちがあっさりと手のひらを返して投票を取り消すという行動に、その“指先”がいかに無責任なものであるかがあらわれている。

さて、このシリーズといえばやはり武蔵と大和の関係性である。今回、武蔵が局内に潜入したこと、大和が生きていたことで妖たちを驚かせ、さらに大和が武蔵を“裏切ったふり”することで、武蔵のミッションであった局のセキュリティを奪うという役回りを大和が担う。さらに大和は伊吹のいるスタジオへの道案内をし、武蔵が目先の凶悪犯(=伊吹)を捕まえることに夢中になっている隙にすんなりと逃亡に成功。大和にその目的があったにしても、よくよく考えてみれば両者の共闘関係は最後まで崩れなかったわけだ。

ラストシーンで大和は、『新空港占拠』の時と同様、ビルの屋上にたどり着く。するとそこに裕子によく似た人物が立っているのである。さすがにここまできて裕子が大和の味方になっているというのも考えづらく、かつ前髪も微妙に異なる。そういえば、第1話で大和が伊吹に渡した調査資料、また第6話で指揮本部に表示された伊吹のプロフィールには、裕子と伊吹の姉弟の間にもうひとり、“林田裕奈”という人物がいることが確認できている。この人物が裕子にしても裕奈にしても、もうこれは第4弾をやる気満々ではないか。武蔵と大和の因縁の関係は、まだまだ続いていくのだろう。
『占拠』シリーズ第3作目。『大病院占拠』では鬼、『新空港占拠』では干支をモチーフにしたお面が印象的だった武装集団だったが、『放送局占拠』では、妖怪のお面をかぶった妖が500名の人質をとり、放送局を占拠する。
■配信情報
『放送局占拠』
Hulu、TVerにて配信中
出演:櫻井翔、比嘉愛未、ソニン、瀧内公美、ぐんぴぃ、高橋克典、加藤清史郎、曽田陵介、吉田芽吹、戸次重幸、福澤朗、片岡礼子、齊藤なぎさ、山口大地、真山章志、亀田佳明、北代高士、宮部のぞみ、菊池風磨
チーフプロデューサー:道坂忠久
プロデューサー:尾上貴洋
演出:大谷太郎、茂山佳則、西村了
脚本:福田哲平
音楽:ゲイリー芦屋
制作協力:AX-ON
©日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/dbs3/
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