1998年釜山が舞台の『告白ヒストリー』は奥行きある一作に 青春恋愛映画の魅力をより深化

青春恋愛映画を深化させた『告白ヒストリー』

 韓国映画の一側面として、日本でも人気のある恋愛ジャンル。2025年も、『あの夏、僕たちが好きだったソナへ』(8月公開)、アニメーション作品『The Summer/あの夏』(8月公開)、『君の声を聴かせて』(9月公開)など、日本での公開が続いている。そのなかで『告白ヒストリー』は、Netflix配信作品としてリリースされた一作だ。

 とはいえ、学園を舞台にした青春恋愛映画といえば、台湾のイメージの方が強いかもしない。実際、『あの夏、僕たちが好きだったソナへ』は、台湾映画のリメイクだ。『告白ヒストリー』は、そんな台湾作品テイストに加え、ポップな日本の少女マンガ原作映画をも思わせるバランスが特徴的。そして、韓国第2の都市・釜山(プサン)の1998年を主な舞台としたノスタルジックな内容となっている。

 ここでは、本作『告白ヒストリー』の内容を追っていきながら、素直でまっすぐな印象の奥に存在するものを掘り出していきたい。

 韓国の有名女子ゴルファーと同姓同名、水泳が得意で元気な高校生、パク・セリが、本作の主人公だ。ある日、釜山の海岸の秘密の場所で、彼女がプライベートな泳ぎを楽しんでいると、同年代の男子が溺れているところに出くわす。セリが助け出した彼の名は、ハン・ユンソク。偶然にも、同じクラスの転校生だった。

 まるで運命の出会いだが、セリが思いを寄せているのは、違うクラスのキム・ヒョン。学校で最も女子から人気のある男子だ。しかし、セリはヒョンに自信を持って接することができない。彼女には“くせっ毛”という、学生ならではのコンプレックスがあったからだ。受験という、人生の大きな岐路に立つ時期、セリはユンソクや親友たちの協力のもと、憧れの“ストレートヘア”を手に入れ、「告白大作戦」を計画していく。

 「告白」といえば、少女マンガの定番のシチュエーションである。しかし最近、日本や韓国でデジタルネイティブとして育ってきた学生たちは、“LINEで告白”など、直接顔を合わせずに携帯アプリを介してアプローチする例が増えているようだ。たしかに、直接呼び出して、いきなり思いを伝えるのはリスクが高く、撃沈したときのショックも大きい。

 だが、本作の時代設定は1998年。携帯電話が爆発的に普及する直前であり、高校生は当然それを所持していない。だからこそ、この“儀式的”ともいえる「告白」が、選択肢として大きなものだったといえる。失敗しても成功しても、それがドラマチックな展開を生むからこそ、少女マンガなどでは、このイベントの価値がその後も残り続けたといえる。

 1990年代や、それ以前を生きてきた観客からすれば、本作における「告白大作戦」は、自分たちの世代の物語として素直に受け取れるだろうし、それ以降の世代からすれば、ロマンティックな純愛ストーリーとして、新鮮さをおぼえるのではないか。

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