『あんぱん』大森元貴再登場で物語は最終幕へ “アンパンマン”を信じる仲間の強力な後押し

NHK連続テレビ小説『あんぱん』第121話は、「九州コットンセンター」、改め「キューリオ」の社長となった八木(妻夫木聡)の経営者としての手腕が光る回だった。
ようやく世に出た絵本『あんぱんまん』。しかし、お腹を空かせた人に自分の顔を食べさせるという設定が忌避感を抱かせるのか、売れ行きは思わしくなく、嵩(北村匠海)は担当の編集者から「二度とああいうものは描かないでください」と言われてしまう。

かたや、嵩が編集長を務める『詩とメルヘン』は創刊から1年が経ち、多くの読者に愛される雑誌に成長していた。その雑誌で、アンパンマンの連載を始めてみてはどうかと提案するのが八木だ。今や子供に大人気のアンパンマンだが、当初は大人向けの童話として描かれていた。
だが、常日頃から多くの子供たちと接している八木は「アンパンマンに興味を示すのは就学前の幼い子供たちだ」と真のターゲットを見抜く。一方で、子供の興味は移り変わりが激しい。現に、幼い頃に親しんだキャラクターを大人になってからも熱心に追い続けている人はごく少数なのではないだろうか。だからこそ、息の長いキャラクターにするためにもターゲット層を広げておく必要がある。さすがはキャラクタービジネスの先駆者たる八木の経営戦略だった。

アンパンマンの連載が決まり、誰よりも喜んだのはのぶ(今田美桜)だ。のぶは絵本『あんぱんまん』が世間的には不評でも、諦めずに読み聞かせを続けていた。嵩が新たに描いた『怪傑アンパンマン』は、そんなのぶをモデルにした物語。売れない漫画家のヤルセ・ナカスはアンパンマンを生み出すも、人気が出ずに落ち込んでいた。だが、女性記者のミルカだけは気に入り、あんぱんを買ってきてはヤルセ・ナカスを応援するというストーリーだ。
嵩にアンパンマンを諦めてほしくないという八木の願いも虚しく、『怪傑アンパンマン』はあまり話題にならないまま最終回を迎えてしまうが、思わぬチャンスを引き連れてくる。盟友の一人・たくや(大森元貴)が『怪傑アンパンマン』をミュージカルにしたいと申し出たのだ。昔から嵩の才能を高く買い、ミュージカルの舞台美術や童謡の作詞を依頼してきたたくや。その理由について、彼は「子供だからって馬鹿にせず、真剣に作品を作れる人だから」と語る。

この頃、嵩はキューリオ社から発行される“子供”と“子供の心を持った大人”のための雑誌『いちごえほん』の編集長も務めていた。『いちごえほん』は『詩とメルヘン』のジュニア版として1975年に創刊され、1982年まで8年間発行されていた。「大人は昔、子供だったし、子供はすぐ大人になる。心の中は同じ」という嵩の台詞は、その創刊号のまえがきに編集長・やなせたかしの言葉として記されている。大人も子供も心の中は同じ。それを作者であるやなせが理解していたからこそ、アンパンマンは子供から大人まで幅広い世代に愛されるキャラクターとなったのだろう。そして、その過程には、サンリオの創業者・辻信太郎や作曲家・いずみたくをはじめとするアンパンマンの持つ力を信じる人たちの強力な後押しがあったのだ。
■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:今田美桜、北村匠海、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、高橋文哉、眞栄田郷敦、大森元貴、戸田菜穂、戸田恵子、浅田美代子、吉田鋼太郎、妻夫木聡、阿部サダヲ、松嶋菜々子ほか
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK






















