『8番出口』の“観方”に間違いも正解もない 積み重ねによって導かれる“恐怖”

「異変を見つけたら、すぐに引き返すこと」
「異変が見つからなかったら、引き返さないこと」

この2択によって成立する原作ゲームは、詰まるところ“間違い探し”である。ゲームを映画化した作品は多々あるが、一般的にはそのストーリーに準えるか、ストーリー性を持たなければ新たなストーリーを付与してそこにゲームの要素を加えるのが常套。『8番出口』の場合は後者なのだが、それでもストーリーは最低限度に留まり、ゲームの要素を主軸にして若干のストーリーを付与するという逆のアプローチが取られている。
そしてあくまでもそのゲームのプレイヤーは観客ではなく二宮演じる主人公に他ならない。その結果何が起きるかといえば、壁に掲げられたポスターに間違いがないか、扉や通気口や看板に違和感はないかをひとつひとつ確認している人をスクリーン越しに眺める98分間。いわゆる“謎解き”のカタルシスに頼らず、“間違い探し”をしている人を真剣に見つめざるを得ないわけだ。こんな体験は、友人とサイゼリヤに行った時でもなかなかしたことがない。

もっとも、容易に“間違い探し”に参加させないことこそがこの映画の本意なのかもしれない。最近はすぐに第三者が介入してきて一元的な正解を押し付けがちだが、そんなことは往々にして当事者にしか知り得ない。しかも一度失敗したら、やり直しもさせてもらえない。けれども8番出口へとつながる通路は、非常に寛大に何度もやり直しをさせてくれて(出られないけれど)、その過程で当事者に自分の行ないを省みる機会を与えてくれる。だから我々観客は、当事者である主人公の選択をただ見守っていれば良いだけだし、そこから何を見出すのかも観客個人という当事者の自由。そこに間違いも正解もないのである。
■公開情報
『8番出口』
全国公開中
出演:二宮和也、河内大和、浅沼成、花瀬琴音、小松菜奈
原作:KOTAKE CREATE『8番出口』
監督:川村元気
脚本:平瀬謙太朗、川村元気
音楽:Yasutaka Nakata(CAPSULE)、網守将平
配給:東宝
©2025 映画「8番出口」製作委員会
公式サイト:exit8-movie.toho.co.jp
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