『愛の、がっこう。』が視聴者にとっても“愛”を学ぶ場に 愛実とカヲルの幸せを願って

『愛の、がっこう。』は“愛”を学ぶ場に

 カヲルだって愛されることを求めていたに違いない。でも、それを許さない家庭環境だった。母・奈央(りょう)からはなにかと搾取され、父の顔も知らない。文字の読み書きができないまま大人にならざるを得なかったカヲルが行き着いたのが、ホストクラブ。はじめて自分を気にかけてくれ、「生きていていいんだ」と思わせてくれた松浦(沢村一樹)の店だった。

 だが、ホストクラブほど現代において「愛するとは何か」を問う場所もない。疑似恋愛を演出し、夢を与えるのがホストの役割だが、客の側は本気で心を奪われてしまうことも少なくない。あえて相手を不安定にして、それを癒やすがごとく金を巻き上げる。そんなインモラルな営業が繰り広げられている。

 作中でも、夢中になるあまり凶行に及んだ明菜(吉瀬美智子)が登場する。彼女が口にした「誰かの一番になりたかった。心から感謝されたかった。私がいないと生きていけない存在が欲しかった」という言葉は、「愛」を求める多くの人の心を代弁しているようだった。

 そんなふうに恋愛感情をビジネスとして扱っている側面のあるホストクラブ。カヲルに松浦が「甘い人間はナンバー1にはなれない」と言い放ったのも、きっと彼の「愛」とホストクラブという場所との相性の悪さを見抜いたからだろう。

 家族との関係性からも、痛みを引き受けることには慣れていたカヲル。だからこそ、愛実に対しても誰よりも愛しているからこそホストである自分を遠ざけてきた。本心ではない言葉を放ってまでも。

 しかし、愛実の愛は「諦めない」ことから始まる。そんな彼女が苦しんできた部分が、カヲルとの縁をつなぎ続けているのだから人生とはわからないものだ。潔く別れて、いい思い出にするつもりだったカヲルは、「だから嫌なんだよな……誰かを大事に思うと、カッコ悪くなる」と苦笑いせずにはいられない。

 本当にその通りである。誰かを本気で愛したとき、人は冷静さを保つことができないし、自分でも驚くような言動に出ることもある。思い描いたようにカッコつかない。いつだって体当たりで、傷つきながらでしか学ぶことしかできないもの。それが「愛」なのだ。

 愛実とカヲルとともに心を揺さぶられ、傷つきながら見守ってきた『愛の、がっこう。』もあと数回となった。「正解」も「間違い」もわからないまま突き進んだ先に、どんな「愛」の答えが待っているのか。そして、2人を取り巻くいくつもの「愛」がどう着地するのか。彼らの選択を見守りながら、じっくりと「愛」について学んでいきたい。

『愛の、がっこう。』の画像

木曜劇場『愛の、がっこう。』

井上由美子が完全オリジナルストーリーで描く、すれ違うことすらないはずの2人が出会い、惹かれ合うラブストーリー。高校教師・小川愛実が、文字の読み書きが苦手なホスト・カヲルに秘密の“個人授業”を続ける中で次第に距離を縮めていく。

■放送情報
木曜劇場『愛の、がっこう。』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:木村文乃、ラウール(Snow Man)、田中みな実、中島歩、坂口涼太郎、味方良介、野波麻帆、早坂美海、荒井啓志、別府由来、りょう、筒井真理子、酒向芳、沢村一樹
脚本:井上由美子
演出:西谷弘
プロデュース:栗原彩乃
音楽:菅野祐悟
制作著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/aino_gakkou/
公式X(旧Twitter):https://x.com/aino_gakkou
公式Instagram:https://www.instagram.com/aino_gakkou/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@aino_gakkou

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