村川絵梨×岸本鮎佳が生み出す極上の舞台 怖さと面白さを知った2人に演劇の“強さ”を聞く

「“見えてる景色”があるので、前回ほどは怖くない」

――今回は脚本のベースが出来上がっている状態からのスタートですが、稽古してみていかがですか?
岸本:違う苦しみがあります。やっぱり、観ている人が「次はこうなるでしょ」とわかった状態で笑いを取るって、怖いんですよね。それに、同じことをしていると自分も飽きちゃうので、結局ちょっと変えています。前回はセリフを言いながら、村川さんに演出をつけて、さらには自分も動いて……ということをしていたので、本当にわけがわからなくて。「面白い」とは言ってもらえたけど、自分の中では自信がなかったので、今回は「自信があります」と言えるところまで持っていけるかどうか。その戦いな気がしています。
――村川さんからアイデアを出されたりも?
村川:そうですね。まずは自分から出てきたものを演じて、その上で鮎佳ちゃんにブラッシュアップしてもらう、というのが基本です。でも、今回は本読みをする前から「(舞台に)入ってくるところなんだけどさ~」と言われて、「変えてやるぞ」という勢いがすごかったんですよ。1ページにつき1つは変わっているほどなので、再演とはいえすごく新鮮な気持ちです。
――再演だけど、ただの再演ではないぞと。
村川:実は、私も同じことをやるのが苦手なタイプなんです。過去に「再演だから」とあえて違うアプローチをしたら、とある演出家さんから「最近どういう仕事してんの? 何があったの?」とすごく怒られたことがあって。でも、岸本さんは絶対にそういうことをする人じゃないので、むしろどれだけ変わるのか心配でした。今回は、横でセリフが生まれる瞬間が見られるのが面白いんです。「ちょっと今、変えるから」と言ってパパッと書いてくれるので、私はそれを待っている。で、印刷してもらったものを見て「うわぁ、おもろー」って。リアルタイムで脚本をもらう、という贅沢なことをさせてもらっています。
岸本:ニヤニヤしながら書いてたよね(笑)。私、そういうことがあまりないんですよ。ドラマの脚本も「早く終われ」と思いながら書いているくらいなので。でも、今回は書いているときに「これは勝ちが見えた。ヤバいヤバい面白い面白い」ということがあって、初めて恥ずかしい姿を見られてしまいました。

――岸本さんからは再演に向けて「怖い」というお話もありましたが、村川さんはいかがですか?
村川:あっという間すぎて、「もう1週間しかないんだ」という感じです(※取材時)。でも、見えてる景色があるので、前回ほどは怖くないというか。
岸本:カッコいいわー。聞きました? 「見えてる景色がある」ですって。私もそれ言いたい。
村川:なんでよ(笑)。もちろん怖いし、まだまだ全然ダメなところもありますけど、今回は知り合いや関係者ではなく、一般の方がたくさん予約してくれていて、うれしいなぁと思いますね。友達のリピーター率もすごく高いんですよ。
岸本:だから、私は全部確認しています。「前回と同じですよ?」って。それでも「もう一回観たい」と言ってくれるので、ありがたいですよね。
村川:それは自信になるよね。
岸本:備考欄に「演劇初心者ですけど、よろしくお願いします」と書いてある方もいて、それがすごくうれしかったんですよね。関係者ばかりが観に来るような舞台なんて、つまらないじゃないですか。
――まさに「演劇の入口になる」というコンセプトが実現されていますもんね。先ほどドラマの脚本についてのお話もありましたが、舞台脚本となると心持ちが違うものですか?
岸本:全然違います。ドラマの脚本って、大枠がだいたい決まっているんですよね。その中でどれだけ遊ばせるかを考えるので、“ゼロから作る”という感じはないんです。だけど舞台は何でもあり。「ここは宇宙です」と言ったら、たとえ素舞台でもそういう芝居をすればそう見えるんです。その分、脚本を書くときには立体で考えなければいけないので、想像力も必要だし、衣装替えの時間も含めてすべてを逆算する必要がある。何度も行ったり来たりしながら書かなきゃいけないので、やっぱり思い入れがありますね。
――村川さんは、舞台ならではの魅力をどう感じていますか?
村川:そこでしか観てもらえないものが絶対にある、“生モノ”の強さですよね。私は「ドラマを観たよ」と言われるよりも、実は「舞台観たよ」と言われるほうがうれしかったりするんです。だからといって、何かを分けて演じているわけではないですけど、ここからの役者人生も舞台を資本にしたいな、という思いはありますね。舞台は一回では終わらないので、公演中にそれこそブラッシュアップしていける。とことん突き詰めて稽古もするので、自分の底力を試せる場所だなとも思っています。

――まもなく公演ですが、今の率直なお気持ちは?
岸本:まぁ、見えてる景色があるので、怖さはないかもしれないです。
村川:ちょっと(笑)。
岸本:でも本当に大変なことをやっているので、たとえミスしたとしても、お客さんにはピリピリしないでほしいなと(笑)。お酒を飲んで、温まっておいてほしいです。
村川:前回の千秋楽では、私たちが出てきたときにうわーっと拍手があがって、吉本新喜劇みたいだったんですよ。
岸本:ちょっと笑いそうになったよね(笑)。
村川:でも、そうやって「楽しみに来たぞー!」という感じで観てもらえたらいいなと思います。シュンとされると、不安になっちゃうから。
岸本:私は逆で、静かに観られているほうが燃えます。
村川:なるほどね、「笑かしたるでぇ」って(笑)。
岸本:もうスベることなんて怖くなくて、逆に面白いって思っちゃうから。でも、うちのお父さんが来ると大変なんですよ。客席から「あれ鮎佳、家でも言ってたわぁ」とかデカい声で言うんです。で、終わった後に「いやぁ面白かったよ。お前、三谷幸喜の再来だな」とか言われて、すごく恥ずかしいからやめて、お願いって(笑)。
村川:(笑)。前回は来られなかったんだよね。今回は来てくれる?
岸本:もう予約が入りました。客席をぶん回しますよ。誰よりも笑いますから。
――(笑)。ちなみに、今後第3弾のご予定は?
岸本:ないないない、絶対にない(笑)。
村川:私もそう思います(笑)。
――それを聞いても、「またまたぁ」と再々演を期待してしまいます。きっと観たくても入れない方もいるでしょうし。
岸本:でも、入れないと観たくなるじゃないですか。大きな会場でやるよりも、「ちょっと小さいかも」というところでやるのがコツなの。「チケットを勝ち取ったぞ」という熱量でSNSにも書いてくれる。それが私の理想です。
村川:今は配信とかもありますけど、それがないほうが美しいな、とも思ったりして。当日券も本当に限られた数しか出さないので、観られる方は大いに目に焼きつけて……いや、そんなに焼き付けなくてもいいんですけど(笑)。
岸本:全然、焼き付けるほどの話じゃない(笑)。
村川:だから、ケツメイシくらいの気持ちで来てほしいですね。「夏の思い出~♪」という感じで、ふわ~っと来てもらえたらうれしいです。
岸本:そうだね。特に内容がないから、きっと去年来た人たちも忘れてるだろうし……ちょうどいいかもしれないね(笑)。
■公演情報
村川絵梨企画 艶∞ポリス番外公演『またしても登場して頂きましょう』
日程: 8月19日(火)~8月24日(日)
会場:ニュー・サンナイ(東京都中野区弥生町5-26-9富士見町ビルB1)
企画:村川絵梨
作・演出:岸本鮎佳
出演:村川絵梨、岸本鮎佳
照明:針谷あゆみ
音響:鈴木暁
演出助手:石川未楽
制作:渋井千佳子
宣伝美術:三ツ橋勇二
企画・制作:艶∞ポリス/株式会社アミューズ
主催:艶∞ポリス
協力:NONBEE/碗プロダクション
チケット:4,800円+1drink(別途)(全席自由・税込)
Corichチケット:https://ticket.corich.jp/apply/385376/





















