松本梨香「また会えると信じていたのに」 “レジェンド声優”櫻井智さん逝去に偲ぶ声相次ぐ

 2025年8月16日、声優であり歌手、そしてかつてはアイドルとしても活動した櫻井智さんの訃報が、所属事務所・フェザードを通じて発表された。享年53。死因は多臓器がんで、8月4日に緊急入院し、8月13日に永眠した(※)。

 詳細な病状や入院経緯まで含めて公式発表がなされたことは、憶測を避け、最期まで闘病に臨んだ彼女の姿を誠実に伝えたいという事務所の配慮だったのだろう。また、8月17日に予定されていた「TOMO夏2025ライブ!」の中止とチケット払い戻しの告知が同時に出されたことからも、櫻井さんが亡くなる直前までステージに立とうとしていたことがわかる。所属事務所は「お別れ会」の開催を検討しているとも伝えており、ファンとの絆を何よりも大切にしていた彼女の思いを未来へとつなごうとしている。

 櫻井さんの芸能人生は、1987年にアイドルグループ「レモンエンジェル」でデビューしたことで本格的にに始まる。当時「アイドル冬の時代」と呼ばれた厳しい環境の中で、メインボーカルを務めた彼女は、歌とパフォーマンスでファンを惹きつけた。その経験は後の声優活動において声・歌・ビジュアルを兼ね備えた存在、つまり今日で言う「アイドル声優」の源流となったことは記しておきたい。

緒方恵美公式Xより

 声優・緒方恵美は訃報に触れ「90年代に始まりつい最近まで続いたブームの、彼女は、確実に起点の1人でした」とコメントを寄せた。現在の声優シーンに当たり前のように存在する歌やライブ活動を伴う声優像は、櫻井さんの存在なくして語ることはできない。

 1994年放送の『マクロス7』で演じたミレーヌ・ジーナスは、櫻井さんの代表的役柄だ。アイドルとして培った表現力で、等身大の少女から成長するヒロイン像を体現した。続く『怪盗セイント・テール』では、明るい中学生・芽美と、凛とした怪盗セイント・テールの二面性を演じ分け、その声の幅を証明した。さらに『るろうに剣心』の巻町操ではコミカルさと芯の強さを両立、『ポケットモンスター』のシロナ役では知的で気品ある女性像を築いた。いずれもキャラクターに華を与える声として、時代を超えて愛され続けている。2016年に一時休業した櫻井さんは、2019年に活動を再開。その後も精力的に活動を続け、2022年には『ポケットモンスター』でシロナ役を約9年ぶりに再演した。

日髙のり子公式Xより

 櫻井さんの訃報は、多くの声優仲間たちを深い悲しみに包んだ。『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』や『赤ずきんチャチャ』で共演した日髙のり子は、「初めて会ったのは『赤ずきんチャチャ』のスタジオでした。可愛くて明るく、はつらつとした智ちゃんが眩しくて、新しい時代の訪れを感じました」と振り返る。

森川智之公式X

 『怪盗セイント・テール』で共演した森川智之は、「セイントテールからの長い付き合いで、芸能に対する真摯な姿勢をとても尊敬していました。一時期お休みしていたときは、よく連絡を取り合っていたのを思い出します。復帰したときは本当に嬉しかった。次に会うときは、智ちゃんのステージを必ず観に行きます」と語った。

松本梨香公式Xより

 さらに『ポケットモンスター』で共演した松本梨香は、「また会えると信じていたのに」と無念をにじませている。

 こうした言葉の数々は、櫻井さんが気品と華を持ち合わせた声優であったことを改めて証明する。共演者やスタッフ、そして世代を超えたファンとの人間関係は、彼女が生涯をかけて築いてきた最大の財産だったのだろう。

 突然の別れとなった櫻井さんの人生は、53年という短さを超えて多くの人々に深い影響を与えた。アイドル声優の先駆者としての足跡、数々の名作に刻まれた声、そして病を抱えながらも最後まで舞台に立ち続けようとした姿。そのすべてが、彼女の名を特別なものにしている。

 彼女が演じたキャラクターたちの声はこれからもアニメやゲームの中で生き続ける。ファンの心の中で、そして仲間の記憶の中で、櫻井さんの声は永遠に響き続けるだろう。

参照
※http://www.feathered.com/index.html

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