『星つなぎのエリオ』にはオマージュも満載 監督陣&プロデューサーが明かす制作の裏側

ディズニー&ピクサーの新作映画『星つなぎのエリオ』は、大好きな宇宙にひたむきに思いを馳せる、ひとりぼっちの少年エリオが主人公のファンタジーアドベンチャー。エリオが、心優しい孤独なエイリアンの少年グロードンや、親代わりの叔母オルガと共に繰り広げる冒険の中で、大切な“つながり”を見つけていく。
当初は『リメンバー・ミー』のエイドリアン・モリーナが単独で監督を務めていた本作だが、制作途中で『夢追いウサギ』のマデリン・シャラフィアンと『私ときどきレッサーパンダ』のドミー・シーに監督が交代したことも話題となった。監督を引き継ぎ本作を完成されたシャラフィアンとシー、そしてプロデューサーのメアリー・アリス・ドラムにインタビューを行い、制作の裏側について話を聞いた。
共同監督だからこそ原点に立ち返ることができた
ーー『星つなぎのエリオ』はもともとエイドリアン・モリーナさんが単独で監督を務めていました。制作途中でマデリン・シャラフィアンさんとドミー・シーさんに引き継がれることになったんですよね。
マデリン・シャラフィアン(以下、シャラフィアン):監督はもともとエイドリアンが務めていましたが、私とドミーも作品には最初の段階から携わっていたんです。なので、2人とも制作過程をすべて見ていました。どういうキャラクターで、どんなストーリを描くのか、そういったことを完全に把握した状態でエイドリアンからバトンを受け取ったので、監督を引き継ぐのも難しい作業ではありませんでした。みんなでミーティングや試写を行いながら制作を進めていくピクサーのやり方が功を奏したと言えるかもしれません。
ーー監督の交代にあたり、作品の内容自体に何か大きな影響はありましたか?
シャラフィアン:主人公の子どもがエイリアンに“地球のリーダー”と間違われる、というコンセプトは最初からありました。引き継いだタイミングで、実際にコミュニバースや登場するキャラクターも作られていました。ただ、そこから私たちが変えられることもたくさんありました。例えばストーリーで言うと、エイリアンに誘拐されるということが、子どもの願望であることなどです。あと大きなところで言うと、オルガをエリオの叔母の設定にしたのも私たちです。オルガはもともと、エリオの母親の設定だったので。

ーー2人で監督を引き継がれたわけですが、具体的な作業はどのように行っていったんでしょうか?
ドミー・シー(以下、シー):2人で一緒にやることと、分担してやること、両方ありました。私もマデリンも共同監督という形は初めてでしたが、『私ときどきレッサーパンダ』では一緒に仕事をしていました。私たちは好きな映画やユーモアのセンスとかがすごく似ているんです。なので、特に反発することもなく、比較的意見が合致しながら作業を進めることができました。ただ、今回は制作期間がとても短かったので、アニメーターから上がってきたカットのチェック作業などはそれぞれ分担していました。チェックしたものをお互いに見せ合って、それに対してリアクションしていくんです。そこで「こうしたほうがいいんじゃない?」と意見を言い合うことはありましたね。それも含めてとても楽しい作業でした。1人で監督をしていると、「このシーンの意図ってなんだっけ?」と自分を疑ってしまうこともあるんです。でも今回のようにクリエイティブパートナーがいると、すぐに原点に立ち返れる。そういう意味でも、とても貴重な経験でした。
魅力的なキャラクターを生み出す必要性
ーーホラー映画やSF映画の要素が入っているのが印象的だったのですが、これは2人が担った部分だったんですか?
シャラフィアン:そこは私たちが新たに作ったパートで、一番気に入っているシーンでもあります。私たちは2人ともホラー要素のあるSF映画が大好きで、機会があるたびにオマージュを入れていきました。『遊星からの物体X』や『未知との遭遇』、『エイリアン』などです。『星つなぎのエリオ』のメインストーリーはエリオの物語ですが、サイドストーリーとして、エリオのクローンとオルガの話が展開していきます。観客は地球に残ったエリオがクローンであることを知っているけれど、オルガはそれに気づいていない。クローンはとても優しくて自分の仕事を全うしているだけですが、“エリオじゃない”という怖さが漂います。そういう意味で、クローンとオルガのストーリーでは私たちもいろいろと遊ぶことができました(笑)。
シー:影響を受けた作品のオマージュを入れ込む機会はピクサーの作品にはあまりなかったと思うので、私たちもとても楽しかったです。観客の方々もホラーっぽいシーンになるとちょっとテンションが変わるんですよね(笑)。ピクサーの作品は笑えたり泣けたりするのが大きな魅力ではありますが、それとはまた違ったような作品を作りたいという思いが私の中には昔からありました。『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』は子どもの頃に観て衝撃を受けて、今でも記憶に残っているので、そういう映画を作りたかったんです。私たちが影響を受けたもの、2人が好きな感覚を映画に投入できたのはとても楽しい作業できたし、満足感もありました。

ーー最後にメアリー・アリス・ドラムさんにお聞きします。完成まで長い道のりでしたが、この作品を作る過程において、プロデューサーとして最も大事にしたことを教えてください。
メアリー・アリス・ドラム:私たちはピクサーというスタジオに来る前から、すでにピクサーのファンでした。なので、ピクサーの名前に値するような作品を作らなければいけないという思いがありました。それはつまり、観客に響く作品でないといけないということ。言い方を変えれば、魅力的なキャラクターを生み出すことです。今回、まさにエリオがそういうキャラクターになったと思います。特に、エリオが抱えている“孤独”に共感してくださる方がたくさんいて、そういった感想を本当にたくさんいただいているんです。エリオという新たなキャラクターを通して、多くの方に感動を与えることができたのは、プロデューサーとしてすごく嬉しいことですし、私たちの誇りです。
■公開情報
『星つなぎのエリオ』
全国公開中
監督:マデリン・シャラフィアン、ドミー・シー、エイドリアン・モリーナ
制作:メアリー・アリス・ドラム
日本版声優:川原瑛都(エリオ)、清野菜名(オルガ)、佐藤大空(グロードン)、野呂佳代(ウゥゥゥゥ)、渡辺直美(オーヴァ)、マユリカ・中谷(メルマック)ほか
日本版エンドソング:BUMP OF CHICKEN「リボン」
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©2025 Disney/Pixar. All Rights Reserved.






















