高橋文哉、『あんぱん』での父親役を経て“大人”の俳優へ 健太郎とメイコの愛の軌跡

NHK連続テレビ小説『あんぱん』第19週「勇気の花」で高橋文哉演じる辛島健太郎が久しぶりに登場した。健太郎といえば、彼にずっと片思いしていたメイコ(原菜乃華)も蘭子(河合優実)の転勤をきっかけに上京。のぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)の部屋の向かいの家に2人が住むことになり、三姉妹が東京で暮らすことになった。
メイコは銀座のカフェで働き始め、のぶが嵩との待ち合わせでカフェに行くと、嵩が健太郎を連れて現れたのだった。
驚くのぶ、いやそれ以上に動揺を全く隠せず、注文も上の空になるメイコ。 高知の闇市で進駐軍から回収した廃品の雑貨などを売っていた健太郎だが、今はNHKのディレクターをしているという。

嵩が「あ、そうだ。健ちゃん、メイコちゃんは『素人のど自慢』に出るのが夢なんだって」と伝えると、「予選会があるけん、受けてみたら?」健太郎は無邪気な笑顔を見せる。
目の前にいるメイコがどんなに目をキラキラさせても、逆に挙動不審でしどろもどろになっても、おおらかな態度で変わらず接してきた健太郎。その澄んだ瞳は乙女心を優しく受け止めているようで……メイコの恋心に気づかないのだった。
恋心はともかく、高知の闇市でメイコがラジオから流れる素人のど自慢を聴いているのを見て、素直な健太郎は心からメイコを応援したいと思ったのだろう。戦友でもあり、東京の芸術学校の同級生だった親友の嵩に「メイコちゃんの応援に行ってあげて」と頼まれたとあれば、いくら仕事が忙しいといっても、知らん顔をするような冷たい男ではない。
戦争中は危なっかしい嵩を炊事班で飄々と仕事をこなしていた健太郎が支えていたと言える場面も多々あった。渋谷のNHKと銀座の三星百貨店なら、会って話す時間も持てるようになるだろう。
そして予選会当日、仕事の合間に健太郎が素人のど自慢の予選会の会場をふらりと覗いた。すると、ちょうど歌っている途中だったメイコは動揺しすぎて調子良く歌うことができず、落選してしまった。
予選会の後は、のぶと嵩、蘭子が準備をして、健太郎を招き、メイコのために打ち上げをする計画だった。招待を受けていた健太郎は、さすがに「次は俺もはじめからちゃんと応援に行くけん」と反省し、大人として非礼を詫びた。
だが、それはメイコにとって根本の問題解決にはなっておらず「健太郎さんが応援してくれる限り、うちは落ち続けます」と落ち込んだまま、いたたまれない様子でその場から逃げ出そうとした。
蘭子が「いつまで思いを秘めちゅうながで」と言葉で自分の気持ちを健太郎に伝えるようにアシストする。この蘭子の言葉でようやく健太郎がメイコの思いに気づき、「……ずっと気がつかんで、ごめん……メイコちゃんの気持ちに気がつかんげな……ほんと俺はふうたんぬるかね」。

「ふうたんぬる?」。2人のやり取りを見守っていた視聴者のほとんどがメイコと同じような反応になったのでは? ふうたんぬるかとは、健太郎曰く博多ことばで「どんくさかってことばい」だそうだ。
健太郎がメイコの気持ちにやっと気づいて、お互いの存在が大切だと確かめ合ってから半年後に博多の健太郎の実家で結婚式を挙げた2人。その5年後には長女の愛が元気に育ち、メイコは第二子も妊娠中で、気がつけば健太郎もメイコも“親”の顔に変化していた。
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ちなみに高橋は、本作でが朝ドラ初出演にして、初のお父さんに挑戦ということになる。健太郎が草吉(阿部サダヲ)に似た人を新橋あたりで見たと話すと、隣でメイコが「どうして教えてくれなかったの」とクールに、リアルに反応していて、結婚して5年経ったという時間の経過と成長を一気に感じた。これも朝ドラならではの醍醐味だろう。
高橋文哉といえば、葛藤を抱える役柄や影のある複雑な内面を持つ人物も丁寧に演じる繊細さ、キャラクターの多面性や深みを表現する演技力が評価され、さらなる飛躍が期待される若手俳優の一人。「ふうたんぬるか」などと言っていられない大人の役、大人の顔を今後見せてくれそうだ。
■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:今田美桜、北村匠海、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、高橋文哉、眞栄田郷敦、大森元貴、戸田菜穂、戸田恵子、浅田美代子、吉田鋼太郎、妻夫木聡、阿部サダヲ、松嶋菜々子ほか
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK





















