“歌う俳優”はますます増えていく? 平成から令和にかけて変化した“歌手デビュー”のあり方

“歌う俳優”はますます増えていく?

 星野源、浜野謙太、阿部サダヲ、野田洋次郎、ピエール瀧、渡辺大知、吉川晃司、及川光博、松岡充、大森元貴……。

 圧倒的にアーティストとして活躍したのちに俳優デビューを飾る人が多いような印象を受ける。<俳優→歌手>の逆パターンの<歌手→俳優>の場合も、それはそれで歌手としての声のよさや表現力がそのまま演技に生かされているということが多々ある。古くはたとえば泉谷しげるや岸部一徳などをはじめ、歌手から名俳優として大活躍したケースももちろんたくさん存在する。

松下洸平 - MUSIC WONDER(Music Video)

 意外かもしれないが、松下洸平は2008年に絵を描きながら歌うという“ペインティグ・シンガーソングライター”「洸平」としての活動を経たのちに俳優として活躍、その後、音楽活動を再開している。

 では、この<俳優→歌手>というパターンは近年誰かいるだろうか。

 菅田将暉や桐谷健太あたりがその代表ではないだろうか。それぞれ俳優活動とともに音楽活動を行い、ヒット曲も生み出していることは多くの人が知るところだ。マルチな活動を行うディーン・フジオカも日本の芸能界とはまた異なる歩みではあるが、俳優活動のほうが先となる。中村獅童もミュージシャンとしての一面を精力的にみせる俳優といっていいだろう。NHK連続テレビ小説『あんぱん』に出演中の北村匠海も、子役時代を経て、ダンスロックバンドDISH//のリーダーとして活躍し「猫」などのヒット曲をもつことも広く知られている。

 ほかにも佐藤健が2006年にドラマの役名でCDをリリースしていたり、田中圭も同じように役柄の名義でのCDデビューを飾っている。斎藤工や玉木宏も、歌手/アーティストとしてデビュー経験をもつ。佐藤健、菅田将暉、山田孝之の歌唱シーンもあるNetflixシリーズ『グラスハート』も配信されたばかりだ。

菅田将暉 『虹』

 とはいえ近年は、俳優→歌手よりも歌手→俳優のほうが前述した通り数としては圧倒的に多いのは、やはり国民的スターとしての歌手という位置付けが薄れたことと、音楽産業の縮小の表れでもあるだろう。先の“役者ロック”ではないが、なんとなくの主観として俳優が表現として特に得意としそうなメッセージ性の高いロックやフォーク、ニューミュージックといったメッセージ性の高い音楽ジャンルが縮小ぎみということもひとつあるかもしれない。それこそ菅田将暉や桐谷健太、中村獅童のように、人気者エンタメビジネスの側面を超える本人が「好き」という気持ちが大きく上回ると、その気持ちは空気をまとい、アーティストとしても支持される。そういう時代の微妙な変化はあるのではないだろうか。

 そして、ドラマや映画ばかりでなく、高畑充希や土屋太鳳、上白石萌音・萌歌姉妹や城田優など、ミュージカルの世界で活躍し、演技と歌の力を存分に発揮するケースも珍しくない。

 CDのセールス自体の縮小傾向はとどまらないが、いっぽうで配信リリースはこの先も増加傾向に向かうだろう。流通面なども含め気軽な一面もあるため、人気俳優たちが、「サブスクで出しちゃう?」といったノリで配信楽曲での歌手デビューが増加する、そんな時代が訪れることだってあったりするかもしれない。

■配信情報
Netflixシリーズ『グラスハート』
Netflixにて世界独占配信中
出演:佐藤健、宮﨑優、町田啓太、志尊淳、菅田将暉、唐田えりか、髙石あかり、竹原ピストル、YOU、藤木直人
原作:若木未生『グラスハート』シリーズ(幻冬舎コミックス刊)
監督・撮影:柿本ケンサク
監督:後藤孝太郎
脚本:岡田麿里、阿久津朋子、小坂志宝、川原杏奈
エグゼクティブプロデューサー:岡野真紀子
共同エグゼクティブプロデューサー:佐藤健
プロデューサー:アベゴウ
ラインプロデューサー:櫻井紘史
制作プロダクション:ROBOT
製作:Netflix 配信

 

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