ディザスター映画の最新系『TOKYO MER 南海ミッション』 人間ドラマとの絶妙なバランス

『TOKYO MER』新作はディザスター映画最新系

和製ディザスターパニックとしての到達点

 今作のもうひとつの大きな見所は、和製ディザスタームービーとしてのクオリティの高さである。

 どうしても医療ドラマの劇場版となると、ディザスター色が強くなるのは、もはや定番。テレビドラマの延長線上だと言われないため、“映画”感を出すにはそうするしかないのだろう。  

 その点に関しては、今作の場合も例外ではなし、『TOKYO MER』の場合は、もともとディザスター色の強い作品であるが、ドラマシリーズにおいては、演出に限界があった。例えば爆発シーンは描かず、煙と崩壊した建物の一部で誤魔化している部分も多かった。ただ、それ補うかのように、人間ドラマの部分で強化していったことでシリーズのスタイルが固まっていったともいえるだけに結果的な利点はあった。

 しかし今作には、ディザスタームービーとしても圧倒的に高いクオリティがあった。それに加えて、人間ドラマもしっかりしているのだから、これは『TOKYO MER』が目指してきたクオリティそのものではないだろうか。

 日本のディザスタームービーといえば『252 生存者あり』(2008年)や『日本沈没』(1973年)といった作品があり、直近でいうと『フロントライン』(2025年)のように、新型コロナウイルスによるパンデミックを描いた作品は、大小限らずあるものの、今作は医療ドラマとエンタメ性を見事な配合で組み合わせており、日本におけるディザスタームービーの到達点ともいえる作品だ。

 劇場版前作の場合も『タワーリング・インフェルノ』(1974年)を彷彿とさせるものとなっていたが、今作では不規則な火山噴火に、流れ出るマグマから『ボルケーノ』(1997年)や『ダンテズ・ピーク』(1997年)といった作品を思い出させ、映画だからこそできる演出も盛り盛りになっている。

 つまりドラマの映画版、医療ものという枠を飛び越えて、ディザスターパニックとしての日本の底力を見せつけられた、衝撃的一作と言っても過言ではない。

 劇場版前作に続き、『キングダム』シリーズの黒岩勉が脚本で支えているとはいえ、監督を務めた松木彩にはディザスタームービーの才能があると実感した。

■公開情報
劇場版『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜南海ミッション』
全国公開中
出演:鈴木亮平、賀来賢人、高杉真宙、生見愛瑠、宮澤エマ、菜々緒、中条あやみ、小手伸也、佐野勇斗、ジェシー(SixTONES)、 フォンチー、江口洋介、玉山鉄二、橋本さとし、渡辺真起子、鶴見辰吾、石田ゆり子
監督:松木彩
脚本:黒岩勉
配給:東宝
©2025 劇場版『TOKYO MER』製作委員会
公式サイト:https://tokyomer-movie.jp/
公式X(旧Twitter):tokyo_mer_tbs
公式Instagram:tokyo_mer_tbs
公式TikTok:tokyomer

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